アウェイ感
社会では、多数派がたいてい勝つようになっている。
何か決め事をする時は決まって多数決。少数派の人間はきっぱりと切り捨てられる。
社会だけではない、学校生活の中でもそれは行われていた。
ほら、今だってそう。
「ねぇねぇ。今日放課後開いてる? カラオケ行こーよ」
「いいね。それ乗った」
「私も行きたーい。ストレス超溜まってんだよね」
「あっ、そう言えばドリームって今日割引じゃない?」
「じゃあ放課後カラオケ“ドリーム”で決まりっ!」
昼休み、つまりお弁当の時間に私の隣で聞こえてきた会話である。
会話をしていた人達は、楽しそうに四人で円を作って弁当を食べていた。
そんな会話を横でジッと聞いている私は、一人で弁当を食すのが毎日のお決まり。
別に虐められているわけではない。このクラスはそういう陰険な雰囲気はない。
でも、クラスに馴染めていない事は事実だ。
親の仕事の都合で、私の高校入学と共にこっちの都会の方に越してきた。
人見知りの私にとっては、転校なんて地獄そのものだ。
全く知らない場所に、全く知らない人達と三年間も過ごせるはずがない。
そもそも一番問題なのが喋り方だった。
実は私―いや、うちは関西弁しか喋れへんねん。
関西で生まれて15年。ずーっと関西にしか住んでないねんから当たり前。
むしろ、標準語は嫌味ったらしくてなんか気に食わんのに、今では周りは皆標準語。
このアウェイ感をどうしろと? と考えているうちに、入学して一週間の月日が経ってしまった。