女王のダンス
今宵、暗い地下だけで生きてきた私と兄弟姉妹達は母の城を出て一生に一度の舞踏会に旅立つ。
夜の帳が降りる頃、私達は初めて地上に出て、翅を広げ空に飛び立つ。どこまでも高く自由に私は空を舞う。そして、私は運命に出会う。
貴方は私の王子様。私の一夜の恋の相手。一緒に素敵な夢を見ましょう?
私は貴方と一つになり、情熱的に夜空を踊る。空には星が煌めき、貴方の複眼を美しく彩る。貴方の触角が私のお腹にそっと触れて擽ったくて、私はくすくすと笑う。
けれど貴方の命は儚くて。夜が明けたら貴方の命は尽きてしまう。ああ、ただこの一時を焼き付けたくて、私はいつまでも踊っていたい。
私は貴方を何年だって覚えているでしょう。夜が明けて地面に降り、自分の国を作り上げても、娘たちに囲まれても。決して忘れはしない。
貴方が体を離し、「愛してる」と囁いて地面に降りていく。お休みなさい、貴方。素敵な夢をありがとう。私の一生の宝物を。どうか、貴方に訪れる眠りが安らかでありますように。
夜が明けた。地面に降りた私は、一人孤独な女王として小さな一つの部屋を掘って国を始める。貴方との子達は、まだつやつやとした白い卵。
愛しい貴方の記憶を胸に、私はこれから何年も生き、血を繋いでいくのだろう。途方もない歳月を前に、私は触角を震わせた。
愛しい貴方。思い出の中に、どうかいつまでも一緒にいて。




