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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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過集中の果てに、私は透明なスマホで小説を書き始めた【参考動画あり(リンゴを押してね)】

掲載日:2026/05/29


 「このシーンだけ書こう」


 創作者が発する言葉の中でも、かなり危険な部類である。


 私は発達障害持ちだ。特に過集中が強いタイプで、一度何かにハマると時間感覚が消える。昔からそうだった。


 ゲームにハマれば徹夜。


 調べ物を始めれば朝。


 動画編集を始めれば翌日。


 そして現在、そのターゲットになっているのがweb小説だった。


 問題があるとすれば、私はスマホで小説を書く。


 つまり、どこでも執筆出来る。


 寝転がりながらでも。


 トイレでも。


 飯を食いながらでも。


 人類は便利な文明を手に入れた代わりに、“限界まで作業出来てしまう”という呪いも手に入れたのである。


 しかも私は糖尿病持ちだ。


 現在、「マンジャロ注射」を打っている。


 この薬、簡単に言うと食欲がかなり落ちる。


 普通なら人間は腹が減ると「あ、何か食べなきゃ」となる。しかしマンジャロを打っていると、その空腹感そのものが薄くなる。


 つまり何が起きるか。


 過集中と合体すると、


 “食事を忘れても気付かない”


 のである。


 終わっている。


 普通の人間には「腹減った」「眠い」という強制終了ボタンがある。しかし私の場合、


 睡眠欲 ←過集中が無視

 食欲 ←マンジャロが消去


 という最悪のコンボが完成していた。


 事件が起きたのは昨日だった。


 夜、「ちょっとだけ書こう」と思った。


 気付けば四十時間以上経過していた。


 怖い。


 普通なら途中で寝る。


 しかし過集中状態の脳は、「眠い」という信号を握り潰してくる。


 その代わり、脳内でキャラクター達が異様なテンションで喋り始める。


 主人公が告白する。


 ヒロインが泣く。


 脇役が勝手に伏線を回収する。


 作者の私よりお前らの方が元気である。


 しかも筆が乗っている時というのは厄介だ。


 「今止まったら、この神がかった流れが消えるかもしれない」


 そう思うと休めなくなる。


 結果、水分も睡眠も後回し。


 しかも空腹感が無いので食事すら忘れる。


 人間として終わり始める。


 途中から身体がおかしくなってきた。


 目眩がする。


 立ち上がると視界が揺れる。


 指が震える。


 手足に力が入らない。


 でも脳だけは元気。


 完全にブラック企業である。


 身体が「もう無理です」と土下座しているのに、脳が「あと一話だけ!」と残業を強要してくる。


 そして昨日の昼頃。


 ついに身体がストライキを起こした。


 立った瞬間、足がガクッと崩れる。


 視界がぐわんぐわん揺れる。


 冷や汗。


 吐き気。


 震え。


 手足がまともに動かない。


 その瞬間、私はわりと本気で思った。


 「あ〜……人って死ぬ時こんな感じなんだぁ」


 妙に冷静だった。


 多分、脳が限界を超えると逆に静かになるのだと思う。


 結果、救急搬送。


 人生初救急車。


 だが、その時の私の脳は既に半分壊れていた。


 ストレッチャーに運ばれながら考えていたのは、


 「この救急搬送の描写、小説に使えるな……」


 創作者、終わっている。


 病院に着いてからも終わっていた。


 診察待ち中、私は無意識に指を動かしていた。


 スマホを持っていない。


 なのに。


 空中で。


 フリック入力していた。


 完全に透明なスマホで小説を書いていたのである。


 自分でも意味が分からない。


 後から動画を見せられたが、本当にちゃんと“文字を打つ動き”をしていた。


 人差し指がシュッシュッと動く。


 スクロールまでしている。


 多分脳内では普通に原稿画面が見えていた。


 怖すぎる。


 看護師さんに「大丈夫ですか?」と声を掛けられて初めて気付いた。


 私は病院のベッドの上で、何も無い空間に向かって真顔で小説を書いていたのである。


 もはやホラーだ。


 たぶん看護師さんのカルテには、


 “患者、空中で執筆活動を開始”


 くらい書かれていたと思う。


 しかしもっと怖い事実がある。


 その状態でも私は、


 「うわ、この体験エッセイに出来るな」


 と思っていた。


 脳が創作者をやめてくれない。


 ちなみに診察結果は、ざっくり言うと極度の疲労と睡眠不足だった。


 そりゃそうである。


 四十時間以上寝ず、ろくに食べもせず、小説を書き続ければそうなる。


 むしろ今まで倒れなかった方がおかしい。


 でも今回、本当に危なかったと思う。


 過集中って、外から見ると「すごい集中力」で終わる事が多い。


 実際、自分でも便利だと思う時はある。


 普通なら数日かかる作業を、一気に終わらせられる事もある。


 ただ、その代わりブレーキが壊れている。


 空腹も眠気も疲労も、「あとでいい」に変換される。


 そして気付いた時には身体が限界を超えている。


 特に創作は危ない。


 物語が頭の中で動き始めると、本当に止まれないのだ。


 「あの台詞変えたい」


 「次の展開書きたい」


 「今なら神回書ける気がする」


 そんな事を考えているうちに、気付けば人間をやめ始める。


 だから今これを読んでいる創作者の人に言いたい。


 寝てください。


 水飲んでください。


 あと「ちょっとだけ書こう」は信用しないでください。


 あれは創作者界の「ちょっとだけ横になる」と同じで、一番危険な言葉です。


 特に過集中持ちで、マンジャロまで打ってる人間は危ない。


 空腹という最後の命綱すら消えるから。


 放置すると最悪、病院のベッドの上で透明なスマホに向かって小説を書き始めます。


 私は昨日、そこまで行きました。


 ――そして病院の帰り。


 私はコンビニに寄った。


 カゴの中に放り込まれていく大量のブドウ糖ラムネ。


 もう完全に、


 「人類最後の希望」


 みたいな顔で買っていた。


 店員さんに見られながら、


 「いや違うんです、これはお菓子じゃなくて命綱なんです」


 みたいな顔をしていたと思う。


 多分説得力は無かった。


 帰宅後、とりあえずラムネを口に放り込み、水を飲み、ベッドに倒れ込んだ。


 そして眠りに落ちる直前、私は思った。


 「……この体験、エッセイにしたら絶対おもしろいな」


 反省はしている。


 多分。



【透明なスマホ動画】(ちょっとだけ無意識にやってる"うめき声"が聞こえますので苦手な方は音を消して見てください。)

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
うわ~怖い。創作は生きるためにすることなので生命力は削らないで下さい。 私もノリにのって書いた後大抵体調を悪くしますが、比較にならないレベルでヤバイじゃないですか! 過集中する子には70%をキープし…
おお…凄まじい。 過集中、という状態のこと、見たり聞いたりしたことはありますが。 想像を超えています。 私は疲れやすい(持病のせいでもありますが)上、睡眠が少ないと確実に目眩を起こすので、ストップば…
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