第19話 里の泉 6/9
「タクヤさんは、私をにくんでいますか?」
歩きながら、女王の素直な質問。
「そうですね。もしあなたが王宮の破壊に手を貸した人なら」
「優しい王子ですね」
「それ、バカにしてます?」
「いいえ、もちろん逆です。大切なことです」
「それがわかっているなら、普通、やらないよね」
女王は笑みを浮かべた。
「そうですね。あなたのその若々しい言いかた、不思議なほど、なつかしい気がします。私も、同じでした」
「はあ?」
「『普通、やらないよね』と、つっかかった記憶……あるいは私にとって、それこそが始まりだったのかもしれません」
「どういうことだよ」
「私は、祈り師になって、いろいろと知る立場になったのです。スーサリアが古来より密かに利用してきた無重力装置が、どのような犠牲にもとに作られているか。それに対処するために産みだされてきた、祈り師という役割」
「犠牲?」
「あなた自身、それを体現しているはずですが」
タクヤは、悪化する下半身を自覚した。
「なぜ知っている?」
「世継ぎの課程では、それは乗り越えなければならないことのはず。だから祈り師が同行しているのでしょ?」
「そ、それはそうだけど、あんたとユリの関係って何なの」
「それについては、個人的なこと。のちほど彼女から説明を聞いてください。私はまず、この里の意味について、知ってもらいたいのです。それが重要なことです。龍人族とは、何か特別な種族を意味しているのではありません。治らぬ病を共有する者たち、そして……」
すると、空から一頭の飛龍が降りてきた。
小ぶりの家くらいのサイズ。
羽ばたきで風がうずまく。
タクヤたちは顔を腕でガードして身構える。
飛龍は着地すると、女王ユリに頭を垂れた。
女王はその頭に手をやる。
「トゥーリ、この方々は、私の故郷の王子の一行。あいさつなさい」
トゥーリと呼ばれた飛龍は、数歩進んで、タクヤの顔に顔を寄せた。
タクヤは恐怖を感じつつも、手をのばして、その濃い色の顔に触れた。
飛龍の大きな目と見つめ合う。
すると、タクヤに、不思議な感情がわき上がってきた。
なぜか涙があふれてくる。
「タクヤさん……」
「え、なんだ、これ、意味わからない」
「あなたは、わかるのですね?」
「……女王、これ、どういうこと? つまり、祈りによって生かされているのは、人だけではないってこと?」
女王はうなずき苦笑を浮かべた。
「タクヤさんは、本当に、私と同じね。私も、飛龍に初めて触れたとき、なぜか涙がとまらなくなりました」
「だって、なんだろう……こいつ……つたわってくるよ……めっちゃ優しい心のやつじゃないですか」
「そうです。すでに人によって、多くの飛龍は殺されてしまいましたが」
「え……」
「人間たち、私たちによって、です」




