第19話 里の泉 5/9
ユリがふらふらと歩いて戻ってきた。
タクヤは駆け寄って声をかけた。
「どうしたの、大丈夫? なんかへんなことされた? ちょっと普通じゃないように見えるけど?」
「いえ、大丈夫」
ユリは作り笑いを浮かべた。
「ただ、あの人とは、少し個人的関係があったみたいで……」
「知っている人だったわけ?」
「うんん、会うのは、やっぱり、初めて」
タクヤに導かれて、ユリは横の丸椅子に腰掛けた。
「意味深じゃのう。これはぜひ、詳しく説明を聞かなくては」
「あのさぁ、爺さんは黙ってなよ」
タクヤはポル爺をにらんだ。
「ほら、ユリがすごいショックを受けていることぐらい、見ればわかるだろ? 悪の組織の女王と、直接話をしてきたんだ。こういうときは、何も聞かずに守ってあげるのが、僕たちの役目なんじゃないの?」
「はいはい」
ポル爺はぞんざいに手を振った。
「タクヤって……優しいんだね」
ユリはうるんだ瞳で彼を見つめた。
タクヤは急に激しく照れてにやけた。
「いやー、そんなことないって。当然のことだって。とにかくこの旅のあいだは、僕たち、きちんと信頼して助けあおう。ね? 今さ、待たされているあいだに考えたんだよ。僕はユリのこと、誰よりも信じるって。それが一番大切なことだ、って」
「ありがとう」
素直に礼を言うユリの横で、あきれ顔のミルシードが耳に小指を入れて掻いた。
「やれやれよ。タクヤって、ほんと、甘いんだから。まあ、いいわ。ほら、ご本人がいらっしゃった」
女王ユリがしなやかな足どりでテーブルにやってきた。
「お待たせしてすみません。そろそろ夕方が近くなってきました。これからみなさんを泉の方に案内したいと思います。今日は、そのあとは食事をなさって、宿舎でゆっくりとお休みください」
「お休みって、えっと……僕たちって、襲われて、捕虜みたいな立場じゃないの?」
「もしそういうお泊まりがお望みでしたら、遺跡の方に古い牢獄もあります。うんがよければ兵士の幽霊なども見られるかも」
タクヤは調子が狂って、言葉が続けらない。
女王ユリは微笑んで、みなをいざなった。
「では、泉の方へ、どうぞ」
タクヤたちは、導かれるままに丘へと続く緩やかな坂道を登っていった。




