第19話 里の泉 3/9
ユリは言葉を失った。
「あなたが……」
「そうです、私がユリです」
女王ユリは静かに頷いた。
タクヤは何が起こったのか理解できず、ポル爺に問いかけるように振り返った。しかしポル爺も混乱しているらしく「ワシもしらんぞ」と首を振った。
周囲の龍人たちは、静かにたたずみ、ことの成りゆきを見守っていた。
「まず、私たちだけで話し合った方がよさそうね。私とあなたで。ね、ユリさん」
女王は、タクヤたちと共にいる女性が『ユリ』であることを知っていた。
「いゃぁ、そうかのう」とポル爺が話に割って入った。「ま、若いもんはともかく、ワシはいっしょに話しといた方がいいと思うぞ。知識も知恵もあるし。こいつらには、ワシからあとで話をするってことどうかな?」
その提案に、こちらのユリは冷静に首を振った。
「ありがとう、ポルさん。でも、ごめんなさい。これは、たぶん、私たちの話だと思うの」
女王ユリも頷いた。
「そうです。みなさんはここでお待ちになっていてください。すぐにお茶が届くと思います。ユリさんは、どうぞ、こちらへ」
「はい……」
「まって」
と、ミルシードが言った。
「二人でしっぽり話をするのもいいけど、この状況がどういうことなのか、ちゃんと説明してからにしていただきたいわね」
女王ユリが小首を傾げた。
「あなたは?」
「ミルシード・エス・ラ・カリシア」
「ああ、カリシア家のお嬢さん」
「知ってるの?」
「それは、よく」
「悪いけど、私はあなたのことは知りません」
「そんなことはないはずよ。何度か王宮でお会いしています」
ミルシードは、ありえない、と言いたげに首を振った。
「はあ? あなた、今、王宮って言った?」
「私は、祈り師です」
それを聞いたタクヤは、女王をまじまじと見た。
「おい、何だよ、それ、どういうことだよ」
うろたえるタクヤをよそに、ミルシードは仲間のユリをにらみつけた。
「あんた、知ってたわね?」
「はい。でも、会うのは、本当に初めてです」
「あとで全部教えなさいよ。隠しごとなんてしたら、私のこの銃が、黙っちゃいないわ」
右手の人差し指と親指を立てたミルシードの子供っぽいしぐさに、ユリは笑みを浮かべてうなずいた。
「はい。ここはよい里のようです。先にくつろいでいてください。私も少し話をしたらすぐにもどります」




