第19話 里の泉 2/9
水路が狭まると、先頭の男たちがオールで壁を押してすすんだ。
入り組んだ岩の水路と、音の響く地底湖、そのくり返しを数回経た後、ようやく出口の光が見えてきた。
滑るように外に出ると、タクヤはまぶしさで目がくらんだ。
キラキラとした新世界。
やがて目が慣れてくると、周囲の神秘的な情景に目を見張った。
豊かな木々に囲まれた集落。
ところどころにある白布のテントが、幻想の世界のように木々と調和している。
木は高く茂り、天蓋のように枝葉がおおっている。
砂漠からとどくドライな空気には、ここちよい夏草の芳香がとけこんでいる。
遠くには下草を食す鹿たちの姿が見えた。
頭上からは小鳥たちの澄んだ声が、まるで手荒な招待をわびるかのようにサラサラと響いた。
船は、木製の簡素な桟橋に横付けされ、タクヤたちは降ろされた。
荒々しかった戦士たちの声までもが、ここでは礼儀正しく気品あるものに変化していた。
到着を待っていた龍人の女たちは、ゆったりとした古風な服の装いで、タクヤ一行に頭を下げた。
タクヤは、想像していなかった出迎えに、完全に言葉を失った。鞭を打たれて「とっとと歩け」みたいなことになると予想していたから。
まずは導かれるままに、桟橋から小道をたどり、頭上の茂みが開けている明るいところまで来た。
そこにはテーブルがあり、深紅の衣装をまとった金色の髪の女性が座っていた。その女性だけは、他の龍人族とは明らかに違う白い肌をしていた。
「ずっとお待ちしていたのですよ」
彼女は立ち上がり、凛とした態度で言った。
「ようこそ、みなさん。私は龍人族の女王、ユリです」




