第19話 里の泉 1/9
長い砂漠の疾走が終わった。
さぼてんや糸杉がまばらに立つ、丘のふもとの集落に着いた。
タクヤたちは、身体ガクガク、おしりヒリヒリ、という状態だった。
わずかな休憩ののち、タクヤたちは坑道の入り口にむかわされた。
銃をつけつけてくるようなことはなかったが、無口な戦士たちの冷徹な態度は変わっていない。
坑道らしき暗い通路に入る。
灯りは先頭の龍人が持つランプのみ。
目がなれず、なかなか周囲が確認できなかったが、通路の一番奥まできて、下りの木製階段を降りるころには、いくらかなれてきていた。
木がきしむ階段を降りていく。
身体にむち打つように5人が長い下りの階段を降りきると、そこには水音が響いていた。
「ここからは水路で行く。乗れ」
地下の静かな水面に浮かんだトロッコのような乗り物。
四角い小船が、四つつながっている。
前後に龍人が乗り、中の二つにタクヤたちが乗った。
龍人たちがオールでこいで進んでいく。
はじめは狭い水路だったが、いきなり広い空間に出た。
たった一つの灯りでは、空間の全体は見えなかったが、水音の響きでその広さは十分に察せられた。
「地下に、こんなところがあるなんて」
感心したタクヤに、ポル爺が説明した。
「暗いが、ときどき鍾乳石が見える。石灰質の岩石が水によって溶かされたんじゃ。鍾乳洞というのは、世界中に存在する」
「じゃあ、ここは石灰の採石場だったのか」
ゼンの言葉に、ポル爺は首を傾げた。
「だろうな、あるいは、石灰質の中に、何か別の宝石でも探していたのかもしれんが」
「なあ、ツーコア」
とタクヤは先頭にいる龍人に声をかけた。
「ここは石灰以外に何かとれるところだったの?」
タクヤの遠慮のない声が、地底湖にこだまして響きわたった。
「わからない。採石されていたのは、何百年も前の話だ」
「そうか、そういう……」
タクヤは、積みかさなった時間の重みを感じた。
王宮にも歴史はあるが、ここにあるのは、それとは異なる時の蓄積だ。
ユリは、船縁から手をのばし、透明な水に触れた。
「良い水です。里は近いようですね」




