第16話 鉄道 4/6
「ミル、僕たち、クジラの歌を聴いたんだ」
とタクヤはミルシードに言った。
「すごく不思議な歌だった。地球全体の、心臓の音みたい。ユリと二人でとらえられたときに。あの船、潜水艦だったんだ。追っ手から逃げるために、音を消して、漂流して。襲撃に来たときは、マシンガンをバババとか撃たれて、なんだなんだと思ったけど、いざ、とらえられてみると、みんな、いい人たちだった」
「いい人たちということは、私もだいたい察してたわ。ゼンがあわててなかったし。王子の護衛が任務の人が、王子がとらえられたら、普通命がけで戦うじゃない。でも、なんか、あせってなくて。ねえ、気がついてた?」
「なにが?」
「あのマシンガンの弾、ゴム弾だったのよ。当たると痛いだろうし、アザぐらいできたかもしれないけど、人を殺すやつじゃなかったの」
「そっか。らしいや。……ね、ユリ」
タクヤに振られて、ユリもうなずいた。
「そうね。行ってみたら、みんな優しいいい人」
「そこで、僕たちは、あれさ。ユリと初めて、コテージで、二人だけの夜を過ごしたんだ」
タクヤが幸せそうに言う。
ミルシードが、タクヤの足を強く蹴った。
「ちょっと、それ、どういうことよ」
「いやいやいや、ちゃんと二段ベッドで、上下に分かれて寝たよ。祈り師の祈りという国の公式な行為をやってもらって、すぐに寝たよ、うん、すぐに寝た」
「タクヤ、あなたの顔には『ウソ』って書いてある」
「ウソじゃないよ。ウソじゃないけど、そのコテージを案内してくれた人が、いろいろ話してくれたんだ。この世界の汚染のこととか。僕なんかずっと知らなかったけど、現実の世界には、ずいぶんひどい汚染地域もあるらしい」
「そのへんのこと、ワシから話しておこうかの」
ステーキ弁当を食べ終えたポル爺が、満足そうに茶をすすりながら語り始めた。




