第14話 ルクフェール財団 2/4
タクヤたちをとらえに来た男達だったが、今は周囲への警戒のみ。とりあえず、情報が一般人に漏れることはさけなければならない。
ユリはタクヤに言った。
「ホテルから、毛布をたくさんもってきて。身体を冷やさない方がいいの」
「わかった」
タクヤが走り去る。
ポルプーレは苦笑しつつ、ミルシードに言った。
「おまえ、砂漠の女は威勢がいいの」
「失礼なこと言ってないで名乗りなさい」
「ポルプーレ・メドリック、あの王子は、ワシの弟子じゃ」
「そんなことあるか!」
ミルシードが、老人の頭を叩いた。
「いた。なにすんじゃいきなり」
「ただでさえ王子にはよけいな虫がついているというのに、ジジイ臭くなったら最悪よ」
「言いたい放題だなおまえ」
「命がけで助けに来たんだから、このくらい言わせなさい」
「そうなのか?」
「そうよ。いっときますけどね、この砂漠の服は仮装。本当は、タクヤ様の高貴な婚約者なんです、ワタクシは」
「それはない」
「なんでよ」
「あいつは婚約のことなんて一言も言っていない」
「王宮にはいろんな秘密があるんですーっ、ジジイにはわかんないでしょうけどーぅ」
「タクヤには、そんなに秘密はなさそうだったぞ。あるとしたら、祈り師の……」
ミルシードは片手を伸ばして、老人の言葉をさえぎった。
「みなまで言うな。それを変えてみせるのがワタクシの使命」
「それ、おまえ、本気で言っているのか?」
ポルプーレが真顔で聞いた。
ミルシードは一歩下がった。
「なななななによ、ダメとかいわないでよ」
「あいつと結ばれたいという気持ち、それは、おまえの本心なのか?」
「あたりまえじゃない、バカにしないで。悪いけど、遊びじゃないし、嘘でもない」
老人は手を組んで「そうか……」とうなった。
「『そうか……』ってなによ。なんなのよ」
すると非常階段を降りてきた男が、ミルシードを手で制した。
「ミル様、祈りが始まります、お静かに」
「もーう、なんなんなん、なんなのよ」
彼女は、ガンガンと地面を足で蹴り、腕を組んで、黙した。
ミルシードは、あの王宮の惨事の中で重症者を運び祈りを求めたが、ユリの祈りそのものは見ていなかった。
今、それが、目の前で始まった。
タクヤが走って持ってきた毛布にくるまれた意識のない黒髪の女。
ルクフェール財団のベルタ。
王宮に出入りする人物の中では、ミルシードともっとも仲が悪い。
実際に、ルクフェール財団はベルベスの国際化を推し進める中心グループであり、その運動を続けていたベルタの父は、先日の爆撃で死亡していた。
我を忘れたベルタの行動も、それが原因だった。
女の傍らにひざまづくユリ。
両手を頭にかざし、呪文を素早く唱えていく。
ユリの胸元の装身具から、緑の光が広がり始める。
神秘的で、気高い祈り師の姿。




