第13話 薬の記憶 5/5
タクヤが薬の影響でうとうとしていると、いきなり爆発音が響いてきた。
王宮の記憶がよみがえり、身体が震える。
爆破音は一回だけだった。
彼はベッドから飛び降り、窓の外を観察した。
ここはホテルの部屋、おそらく5〜6階。
窓の下の駐車スペースで、自動車が一台、火と黒煙を上げていた。
なんだ、自動車か……
タクヤは軽く考えたが、すぐに銃を持った人々がホテルから周囲に散っていった。
王子を守っていた男たちだろう。
不審者を捕獲しようと、身をかがめて、素早く移動していく。
もしかして、自分って、本当に『ねらわれる立場』なのかな……
半信半疑で考えていると、部屋に音が響いた。
トントン
ドアがノックされていた。
「タクヤ様、ご無事ですか」
扉の向こうから聞こえてきたのは、女性の声だった。
タクヤは自分の身なりを確認し、とらえられたときのままで問題ない、とわかると、ドアを開けた。
すると、いきなり女は言った。
「タクヤ、来い」
「はあ?」
「逃げるぞ」
「あんた、だれ?」
ジーンズをはいて、ポンチョをはおり、グレーのサングラスをかけた女。
いかにも砂漠の住人という感じ。
その女が、サングラスを指先でずらして、笑みを見せた。
「泣く子も黙るミルシード様、参上。ゼンもいる。あなたのつれはすでに非常階段のそばよ。急いで」
「え゛」
「行かない?」
「う゛」
「いいわよ、じゃ、私を連れ込んでベッドでぱふぱふする?」
「なななななんだよ、ぱふぱふって」
「昔ながらの王宮冗談。教会冗談もあるのよ。なんじ、死んでしまうとはなさけない、冒険の書に記録しますか?」
「いやだからなんなんだよ!」
「わかるでしょ?」
ミルシードの目は、確かに、輝き、燃えていた。
「ここからはじまるの。私たちの愛の逃避行が」
それについては慎んで辞退申し上げたいタクヤだった。
でも、とりあえず、ここからは逃げるけど。




