第12話 ポルプーレ 3/6
昼になり、タクヤたちは食堂にもどった。
中に入ると、昨夜のおばちゃんと、おばちゃん仲間たちが、野菜の下処理をしながらコーヒーを飲んでいた。
タクヤとユリがあいさつすると、おばちゃんたちが振り返った。
「よー、あんたらか。村を見てきたんだね」
「美しい村でした。ラプシーが案内してくれました」
タクヤが明るく答える。
男の子は、暗い表情のユリの手を強くにぎっていた。
ラプシーがなにを期待し、なにをやってきたのか、おばちゃんたちはすぐに察したが、それを言葉にすることはなかった。
「ほら、むこうのテーブルにスープやコーヒーがあるから、かってに自分でとって食べな。男たちはもう漁に出ちまったから、今日は私らが監視役だよ。って言っても、もうじき終わりだろうけどね」
「もうじき終わり?」
タクヤが質問した。
おばちゃんはうなずいた。
「ほら、あんたたち、急いでいるって言ってたろ。だから身代金をまけてあげたんだって。まもなく交渉が成立するよ。そしたら駅まで送ってあげるからね」
「駅ですか? 本当ですか?」
と、ユリがあわてて確認した。
「ああ。金鉱の町が南にあってね。そこから砂漠を横断する高速列車が出てる。それに乗れば丸一日であんたらの目指す国に入れるはずさ。紛争地帯と言ったって、鉄道とパイプラインはみんなが大切にしているものだからね。で、連邦に入っちまえば、空港だってあるはずだ」
そこまで説明して、おばちゃんは立ち上がった。
「さて、スープがあるんだが、カラス貝を入れるかい? 採れたてで美味いよ」
ユリはタクヤの顔を見て「駅だって、つまり列車ね」と確認してから、大きく頷いた。
「ぜひ、お願いします! 私、強くならないと。もっと祈り師として成長しないと」
「ははは、そうこなくっちゃ」
おばちゃんは大鍋のスープを小鍋に取り分けて、ストーブの上にのせた。そしてザル一杯のカラス貝をほうり込んだ。
じきにおばちゃんが小鍋とスープ皿を運んできた。
「カラス貝の特性スープ。熱々をめしあがれってなもんだ」
鍋の蓋を開けると、香草やオイルの香りとあわさった、カラス貝独特の香りがふんわりと広がった。さっそく取り分け、タクヤはフォークで身を取り出して食べてみた。
見た目に反して、苦みも、砂っぽさも、生臭さもない。海らしい幸福な味わいが口に広がる。
「うまい! おばちゃん、これ、マジでうまいよ!」
仲間との席に戻ったおばちゃんは「あんた、やっぱ、なかなかいい王子さんだね」と言った。
おばちゃんの仲間の一人が付け加えた。
「でも、アンタたち、捕虜なんだから、残したらただじゃおかないよ。全部食べないと拷問部屋行きだよ」
みんながドッと大笑いした。
幸福な自然の恵みに、ユリも笑顔で目尻を下げた。




