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第11話 カテナ村 3/6
「なあ、王子様よぅ、王子様ってのは、いったいどんな気分だぁ?」
薄暗い中、ユリや乗員たちの寝息の向こうから、オミヤマ師のかすれた声が、小さく聞こえた。
「どうもこうもないよ。見ればわかるだろ。さんざんな気分」
普通に言い返したタクヤに、オミヤマ師は鋭く注意した。
「ばか、小声で言え」
「す、すみません」
「まったく。しかしおまえら、そうやって仲よくつながれていると、かわいい夫婦みたいだな。結婚するなら海賊式で祝ってやるぞ」
そのとき、不思議な音が船体に響いた。
「なにこれ?」
「クジラの歌だ」
まるで宇宙の歌のよう。
あるいは死後の世界のよう。
タクヤは、ふと気がついた。
この海の底の雰囲気と、ユリがしてくれる祈りは、なにか共通している。
恐ろしくて、身を焼くような後悔をまといながら、しかし、生を受けた我々が、もがきつつ生きることの原点。
クジラの歌が、この星の海に、響き続ける。




