表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/226

第10話 メッチャウマイ 1/6

 キャンベル号は、軍の高速輸送船という地味な用途に反して、白く塗装されていた。いかにもスーサリアらしい。


 タクヤたちは、スチール製の階段を上がり、艦橋に案内された。

 ガラス窓の向こうに雄大な海が広がる艦橋で、かっぷくのいいベテランの女性船長とあいさつを交わした。

 船長は、軍人らしく規律正しい態度を前面に出しつつ、祈り師の船酔いについては丁寧に気を使ったくれた。


「あいにくこの先の航海では嵐になることも予想されています。ユリさんには、薬で眠ってしまうことをおすすめしたいですが、いかがですか?」

「ご迷惑をかけないようにしていただくのはありがたいです。でも、だとしたら、その前にやることがあります」

「なんですか?」

「タクヤ様に、祈りの治療を」

「なるほど」

「一日一回はやっておかなくてはなりません」

「では、高速巡航に移る前に医務室でどうぞ」

「ありがとうございます」


「私はどうしたらいいのかしら?」

 不満をかくしきれないミルシードだった。

 ユリが船酔いに弱いのはかわいそうだと思うし、タクヤに祈りの治療が必要なのも理解するけど、ここでの主役は、あくまでタクヤ様と私のはず……


 ゼンが横から船長に質問した。

「オレたちは、船を見物させてもらっていいですか。不測の事態のために、一通り、見ておきたい」

 ゼンの目配せ。つまり『オレたち』とは、ミルシードと二人という意味だった。

「ご自由に」

 とラインが応えると、船長も快くうなずいた。


「ところで、見ておくといえば」とたて続けにミルシードが言った。「船長さん、こんなこと質問してあれですけど、お食事はいい感じですの? もちろん、これがたんなる観光旅行でないことは承知しております。しかし、いちおう旅の醍醐味と言いますか、いろいろ体験してみたい年頃ですの」

「食事の希望も、あればスタッフにどうぞ。贅沢は無理ですが、可能な限りの配慮はできると思います」

「美味しいカレーがいただけるというのは本当ですの?」

「カレーでよければ、今すぐでも食堂に行けば食べられるかと」

「あら、そう、それはいいわね。それはそれとして、この船は北海ルートよね」

「はい」

「では、幻の海ナマズ、メッチャウマイの漁場も、近いのでは?」

「近かったとして、どうなさるおつもりですか?」

「たとえば、近くの漁船に知らせて、直接、買い付ける、という発想はできませんこと?」

 

 当然のことのように言いきるミルシードに、船長は思わず苦笑した。


「これはまた、無茶をおっしゃる」

「もちろん、大きな時間ロスになるならあきらめます。が、メッチャウマイは、たぶん、ここ一、二週間がチャンスだったはず。わたくし、まだ一度しか食べたことがございませんの。いえ、大切なのは王子のお食事ですわ。質素なカレーばかりでは心が痛みます」


 船長はため息をついてうなずいた。


「わかりました、いちおう試してみましよう」

「で、もしメッチャウマイが本当に手に入るなら、相応の礼を用意しましてよ。もちろんお金の心配いりません。買えるならスタッフみなさん全員の分も買ってしまっていいわ。メッチャウマイパーティしましょう」

「は、はあ……」


 ミルシードは、居あわせたスタッフたちの目を見て、貴族らしい高貴な笑みを送った。

 貧乏貴族であることを悟られないように。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ