第8話 ハワイとイルカ 5/6
教会の外は、初夏の日差しが充ちていた。
ライン特佐がいっていたとおり、敷地内に暴徒は残っていなかった。
重機の作業音が響く中庭をぬけて、三人は診療所に戻った。
話を聞いたドクターは、すぐにユリの旅立ちを了承してくれた。
「タクヤ様には必要な処置だ。一日一回は続けてくれ。そして王の元に戻ったら、おまえたちからじきじきにここで起こったことを説明するといい」
「ですね。行ってきます。少し長い不在になるかもだけど」
「私のところはまだ患者の処置が続く。おまえもしっかり役割を果たしてきなさい」
「はい。では、出発の前に、タクヤ様に今日の祈りを……」
話をふられて、タクヤは首を振った。
「まって。ありがたいんだけど、正直、汗まみれでグタグタ。昨日からまだシャワーもあびてないんだ。祈りを受ける気分じゃない」
「たしかに。教会では疲れてぐったりでしたものね」
「でね、ユリ、いいかな?」
「なにがですか? シャワーならご自由に」
「いや、そうじゃなくて」
タクヤが目を輝かせ、窓の外を指さした。
「ほら、君と会ったところ。入江のところは、泳ぐのにもよさそうだよね」
「はい……」
「じゃあ、海に泳ぎに行っちゃおう!」
「え……」
「ごほん、ワタクシは、旅立ちの前に、わが王宮の海を、この身で体験しておきたいのじゃ。だめかの?」
ユリは笑顔でうなずいた。
「だめじゃないよ。全然だめじゃない。すごくいいと思う。ゼン、あなたも、いこ」
「えー、オレはシャワーでいいぜ」
「こいつ、仕事さぼる気だな。王子の身になにかあったら、即おまえのせいな」
「なんなんだよ、その言い方。てか、むしろ気をつかってやってるのに」
「はあ? なにそれ。ゼンちゃん、君が、僕たちに気をつかって遠慮してくれている、と?」
「笑いごとかよ。言っとくけどな……いや、まあ、いいか。ここに水着とかないよな?」
ゼンの問いに、ユリはあっけらかんと答えた。
「ないけど心配なく。水中メガネはあるの。うち、診療所だけど、夏の売店もかねてて。あと、もどって来たときは乾くまで白衣ですごせばいいでしょ? 天気いいからすぐ乾くよ。だから、下着で泳いでOK。私もよくそうしてる」
え……よくそうしているの……下着で?
タクヤは目をぱちくりした。




