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第7話 スーサ教 5/5
夢で感じた、雨音と、筆の匂い……
何がつながっているのだろうか?
亡くなったメリルが断じていたとおり「これは戯れごとではない」のだ。
王宮の歴史と神秘、そこに自分は関わろうとしている……いや、すでに、関わっている。
逃げて済む話ではない。
彼は身震いとともに、なぜか強い「悲しみ」も感じた。
悲しみ?
なぜ?
夜明けの空を見上げる。
紅色に染まり始めたういういしい雲。
さわやかな風景であるはずなのに、急に、今までにも増して、胸が苦しくなる。
うずくまりそうになるほどに。
これは病気か?
なんの病気だろうか?
ふと、熟睡しているユリのことを思う。
疲労困憊しているユリは、まだ熟睡を続けるだろう。
しかしできることなら、今、目覚めて、ここに来てほしい。
君の声で「おはよう、なにが苦しいの? 何の夢を見たの?」と質問してほしい。
筆屋の夢を見たよ、と答える。
いきごんで。
僕は、たぶん、なにかを、だれかに伝えたいらしい……
そして気がついた。
このとき初めて、タクヤは、スーサリアの王子であることを、自ら理解した。
ただのときめきではない。
これは『我が国の王子の恋』なのだ、と。




