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第7話 スーサ教 2/5

 スーサ教聖堂にたどり着いた三人が、ドアをたたく。

 すぐに中から紺色の教会服をまとった女性が出てきた。


「どうされましたか、こんな夜中に」

「僕たちをかくまってください。テロの関係者と疑われて、暴徒から逃げているんです」

 

 三人には心配がないわけではなかった。

 突然、王子を教会がかくまうということについて、教会の立場がどうとか、法的な解釈がどうとか、素直に受け入れてくれない可能性もないとは言えない。


 タクヤの真摯な願いを聞くと、ふと、聖職者の女性が小首を傾げた。


「まさか……タクヤ様?」

「はい、そうですが……」


 女性の表情にパッと笑顔が広がった。

 タクヤも、その笑顔には見覚えがあった。


「僕たちって、知り合いだった……?」

「なにいってんのよ。私です。ハ・ワ・イ」


 タクヤが、目覚めてすぐに思い出した三カ月前の春の記憶、船が宙に浮くイベント会場。

 そこで会った女性がいた。

 王の近くに配される美女集団の一人、ハワイ。


「ほへ? なんで、ハワイさんがここに?」

「祈り師候補の修行中でございましてよ。てか、本物の祈り師さまが、後ろにいらっしゃるじゃん、ウソでしょ」

「ユリです、はじめまして」

「にゃにゃにゃにゃにゃんと、ユリ様、お初にこんなところで失礼します。ていうか、タクヤ君、来るなら連絡してよ。私、何も用意してないよ」

「ごめん。あと、この男がゼン。音楽学校の悪友」

「おー、そうか、それで。カンペキに理解した」

「え? なに?」

「いや、つまり、17歳で恋愛解禁になった君たちが、美しい祈り師さまを奪いあっている図」


 タクヤは緊張がすっ飛ぶほどずっこけた。


「ハワイさん、勝手な妄想やめてよ。僕たちだって大変なんだから」

「だよね。うわさには聞いてたよ。まさかあの音楽学校の生徒が王子だったなんて。君自身、自覚なかったのでは?」

「そのとおり。ていうか、いきなりしばられて意識失う注射打たれて、気がついたら今朝、ここにいた」

「電光石火ね」

「はっきり言って、王子なんて自覚ないし。なんかハワイさん見たら、急に元に戻りたくなってきた」

「いいよ。疲れてるんでしょ、顔を見たらわかる。何も遠慮するな。王子だろうと、貧乏学生だろうと、ここはあなた方を受け入れる神の館であ〜る」

「で、いちおう、こちらの責任者のかたに話を通しておきたいんだけど」

「その必要はないわ、タクヤ君。今は、なんてったって、この私が責任者だから、えっへん」

「え?」

「ま、うそだけど」

「はあ?」


 大切なときに何言ってんだこのアホ女、という表情を隠さないタクヤ。


「いやいや、全部がウソってわけでもないのよ。ぶっちゃけ、留守番なの。ほかに誰もいないの。でもね、みてよ、ここはテレビゲームもないし、盗み食いする美味しいものもないし、ニュースを見るテレビすらないし、めっちゃ退屈していたとこなの。だから、歓迎するわ」


 ユリは、ゼンに耳打ちした。


「この人、タクヤ王子のなんなのでしょう?」

「女だな」

「まさか」

「なんにしても、これでたすかった。休ませてもらおう」

「休憩優先ですか?」

「ユリこそ限界だろ」

「まあ、そうですが」

「教会の人が味方なら、今夜これ以上安全な場所はない」

「そうね……」

「どうした?」

「それを聞いたら、急に疲れが……」


 ふらついたユリを、ゼンは両腕で抱え上げた。


「おい、すまないが、ベッドは?」

「どうされました?」

「ユリは疲労が限界らしい」

「では、こちらへ」


 ハワイに導かれて、ユリを運ぼうとしたゼンに、タクヤは冷たい視線を送った。


「へー」

「なんだ、タクヤ?」

「それ、僕のやるやつじゃないの、お姫さまみたいなやつ?」

「おまえが抱かれたいのか」

「そうじゃなくて逆だよ、普通わかるだろ」

「いいぞ、持てるなら持ってみろ。けっこう重いぞ」

「……いや」


 タクヤは一瞬考えたのち、片手をさしだして断った。


「僕は寝起きで筋肉弱ってるって思い出した」

「だろ。しかし、そのわりによく頑張ったよ。おまえも早く休め」

「そうだね。なんだかんだでゼンがいなかったらと思うとおそろしくなるよ。ふぁ〜」


 大きなあくびをかくさないタクヤだった。

 ハワイは、足音の響く廊下を進みながら言った。


「いちばんいい客室、使わせてあげる。でも、明日の片付けは手伝ってよ」

「まかせろ」

 とタクヤとゼンが同時に答えると、夢うつつのユリも「まかちぇろ」と小さくつぶやいた。


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