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第6話 リーアン 5/5

「リーアンさん、まだここでしたか」


 黒服の痩せた若い男が倉庫に入ってきた。

 リーアンは、立ったまま火を見つめて応えた。


「ああ。いろいろ、燃やしておかないとな」

「やはり、”ここから”だったんですね」

「王宮は?」

「破壊されました」

「そうか」

 

 ゼンは、無反応なリーアンに、強いいらつきを憶えた。


「あんた、自分がやったこと、わかってるんですか?」

「ああもちろんだ。責任追及とかヤボなことはやめてくれ。自責の念なんて、とっくに捨てた」

「それでも、あんたは、みんなに支持された国会議員なんでしょ?」

「だますと割り切れば、こんな私でも議員になれたよ」

「最低の自虐、っすね」

「ほかになにがある? 今、火を見ながら、回想していたんだ。そう、これは葬式だ。参加してくれて、礼を言うよ。正直、一人では少し寂しかった」

「誰の葬式ですか?」

「妻と、タカコ妃。そして……そう、東の塔に残ったメリル」


 ゼンの身体の内側から、いきなり強い想いが突き上げてきた。

 なんで世の中ってこんなことになっちまうんだ、ふざけんなよ、みんな普通に幸せに生きたいだけなのに、全員ダメダメだろ。

 あふれてきた涙を腕でぬぐい、鼻をすすり、そして黙し、手を堅く握りしめたまま、頭を垂れた。


「なあ、ゼン、私はこのあと、車で国境を越えようと思う。しばらく旅をするつもりだ。うまくすれば、龍人たちの元にたどり着けるかもしれない」

「国境なんて、いまさら出られるんですか」

「さあな。春にはそれでなんとかなった」

「あのときは、オレが探しても、もういなかったでしょ」

「だな。でも、さすがに今回は、やることはやった。いつ死んでもいい」

 

 ゼンは、いきなり彼の胸ぐらをつかみ、顔をなぐった。

 抵抗しないリーアンの頭を後ろから左手で支えて、右手のヒジを顔に打ちつけた。


「お、おい、ゼン……や、やりすぎだろ……」


 リーアンがうめくと、ゼンは手を離し、吐き捨てるように言った。


「その顔なら、言い訳も通るだろ。じきに、もっと腫れてくる。あ、そうだ、音楽学校のこと、タクヤは楽しそうに話してるよ。あいつ、音楽のことを話すと幸せそうにするんだ。それだけは、あんたのおかげさ」

「礼なんていい。私は、国家反逆のテロリストだ」

「たしかに、その顔ならテロリストっぽい」

「むしろ目立つな。よけいなことをしてくれた」

「うるさい。オレは、あんたの選択が間違っているのかどうかなんて、わかりゃしない。ただな、このくらいで殴りたりたとは思うなよ」

「心配するな。おまえたちの罪は、私が引き受けてやる」

「くそ。かっこつけてんじゃねえよ。後始末をするのはこっちだ。王宮に戻る。罪のない怪我人が山ほどいる」


 立ち去ろうとした若者に、座り込んだリーアンが言った。


「ゼン」

「なんだ、まだなんかあるのか?」

「こまったら、ベルヘルムの衛生局第13課に行け」

「はあ?」

「ラスカート共和国だ。東自治区ベルヘルムの衛生局第13課。この爆弾は、そこから手配した」

「くそ。そんなこと知りたくねぇつうの」

「私たちは、道化だ。道化なりに、誠意をつくす」


 力のぬけたリーアンに、ゼンは、関係を断ち切るように吐き捨てた。


「リーアンさん、わるいが、こっちはなにも終わってねえんだよ」


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