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第5話 ドクターの娘 5/5

「リーアンさんについて、やっぱユリにも語っておくわ。いいだろタクヤ」


 ゼンが毛布をかぶって横になったままボソッと言った。

 タクヤはすでに多くの力を使い果たしてしまったかのように脱力して応えた。


「すきにしろよ」


 ユリにはこころあたりがあった。


「リーアンさんって、もしかして国民共和党の議員のかたですか?」

「そう、国民共和党。なんでユリが知っている?」

「王の元で祈り師になって以来、何度か王宮で」

「タカコ妃との謁見えっけんだろ」

「たしかに、それもあったかと……」

「オレはあのあと……ほら、爆撃直後におまえたちに診療所で会ったあと、すぐに港に行ったんだ。あの人が飛龍をかくしている倉庫を知っていたからな」


「知っていた?」とタクヤはつっかかった。「そういうことって普通、知っていることなのかな。ゼン自身、この爆撃の首謀者の一人なのか?」


「あほ。流れでわかるだろ。オレは事後に知っただけだ」

「そうか……」

「王宮には、いろいろ隠しごとがあるものなのさ。オレ自身、その一部だ」

「たしかに、ゼンがゲームオタクじゃないなんて知らなかったし。ゲームではなく武術稽古だったなんて、あほか」

「いろいろ裏があるんだよ」

「裏と言えば、ゼン、僕の右足の裏側がすごいことになっているの気がついてる?」

「いや、とくに」

「見せるよ」


 すぐにタクヤは毛布をはいで立ち上がり、ズボンを脱ごうとした。

 ゼンは苦笑して言った。


「おまえ、それ、女子の前でする?」

「いいんだ。ユリにはこれの治療のために祈りをしてもらったんだから。ほら、うす暗いけど見えるだろ」


 タクヤの足の裏をのぞき込んだゼンは、驚きを隠さなかった。


「ああ、たしかに、こいつは不気味だ。痛みはないのか?」

「今のところ痛みはない。ただ、ドクターの話だと、これが浮き出た人は死ぬらしい。でもこれを乗り越えないと、本当の王子にはなれない、とも」

「祈り師に治せるのか?」


 ゼンの問いに、ユリは一人の専門家として答えた。


「わかりません。しかし進行を遅らることはできるはず」


 タクヤはズボンをはき直して、ササッと毛布にもぐり込んだ。


「まあ、僕はべつに真の王子なんてなりたくないけど、ならないと死ぬんじゃあしかたないよね。迷惑な話さ。で、なんだっけ?」


 ゼンは、目を閉じた。


「リーアンさん。国民共和党の議員。なんだかんだで、よくしてくれた人だった。音楽学校のこととかな。でも、たぶん、もう生きちゃいないだろうな」

「どうせ、浅い考えで、先走っただけだろ?」

「タクヤ……おまえ、殴っていいか?」

「べつにいいけど、それよりも話を聞かせてくれ」

「だな」


 ゼンは感情を棚上げして、小声でてきぱきと説明を始めた。

 妻と共に僻地医療にはげんでいた医師リーアンが、龍人族とつながりを持ち、国会議員になってテロを計画した経緯まで、ゼンが知るかぎりのことを。


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