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第5話 ドクターの娘 3/5

 ユリの両親が、事故でふたりともいなくなったしまったのは、ユリが6歳のときだった。

 

 良い思い出しかない。

 パパとママ。


 悲しいか悲しくないかといえば、もちろん悲しかったのだが、6歳のユリは、まだ、二人がいないということがどういうことなのか、どのように悲しみを受け止め、どのように悲しみを表現したらいいのか、よくわからなかった。

 

 引き取られた王宮診療所の医師は、気難しくて、怒りっぽい人だった。

 酒も毎晩大量に飲んでいた。


 それがすごく嫌だった。


「まただ」


 というのが新しい父の口癖だった。


「またうまくいかん」

「せっかく大切にしてやったのに」


 当たり散らしてばかり。

 何か、とてつもなく、嫌なことがあったようだ。


 ユリは、もう自分に残されたものなどなにもないと感じていたが、それでも、もし、少しでも何かをやれる可能性が残っているなら、この荒れた大人の心を、おちつかせてみよう、と考えた。

 それすら、かなわないなら、もうどうなってもいい。


 そして言い渡された、祈り師という崇高な目標。


 孤児だったユリは、新しい父の協力の下、初歩的な試練の後、9歳のときに正式に祈り師候補として認められた。


 王宮から発行された書類を、父は額に入れて壁に飾った。


「よくやったな」


 ユリは父の腕に飛び込んで、大泣きした。 

 それは “自分の場所”ができたことが、わかった瞬間だった。

 

 泣き叫ぶユリを支えてくれた手の大きさを、ユリは今でもありありと覚えている。

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