第22話 交渉 2/4
公開討論が中止されたあと、非公開で二人の対話は続いた。
「ユリは、相変わらずだな」
「すみません。でも、わかっていたのでしょ?」
「だから説明の機会を作ってやったのに」
「それは察しましたし、精一杯、利用させていただいたつもりです」
「彼の名前は?」
女王の横にいた龍人が「メックです」と答えた。
「メック、私は、今日、君と会えたことを、誇りに思う」
「オレには、誇りに思うって意味とか、よくわからないです。でも、女王の古い知り合いが、王だったことは、すごくうれしいです」
「うむ、ユリとはずいぶんケンカもしたが、忘れられない祈り師だよ。なあ、ユリ自身は身体は大丈夫なのか? 余命とか考えていないよな?」
「それは考えていませんが、大切な里は失ってしまいました。死に近い現実といっても、過言ではありません」
「王宮に戻る、ということは考えられないか?」
「今さら、王にそのような言葉をかけていただけるとはうれしいことですが、でも、むりですわ。今の王宮は、ベルベスの利権をめぐる闇の中。そこに飛び込めば、焼け石を水に落とすようなもの。はじけまくります」
「そうかもしれない」
皮肉そうに笑みを浮かべる王に、女王は率直に言った。
「王子が来てくれました。迎えをよこしてください。彼らもそろそろ、王宮の闇に飛び込む準備はできたころかと」
「イヤなことを言う」
「覚悟の問題です」
「爆撃を体験したんだな」
「地下に響く轟音はすごかった。攻撃が止んで外に出ると、彼は身体を震わせて叫んでいましたよ。破壊しつくされた里の残骸を前に。きっとりっぱな王子になられるかと」
「わかった。砂漠の中にいるんだろ? 連邦の護衛付きでヘリをむかわせるから、あとで座標を知らせてくれ」
「はい」
「ユリ」
「なんですか?」
「もしも、私と立場が逆だったら、おまえは何を言う?」
女王はしばし黙し、そして応えた。
「いっそ、私も砂漠に逃げ出したい……かしら」
「ははは、おまえらしい。では」




