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第22話 交渉 1/4

 広大な砂漠の広がりの中に、外からはわずかに識別できるだけの風化した遺跡跡があった。

 そこがツーコアの目的地だった。

 馬と飛龍に水と食料を与えて返すと、隠し扉から地下に入った。 


 地中に作られた簡素な基地。

 水量豊富な井戸があり、作成司令室、宿泊施設、武器倉庫などが作られていた。


 さっそく連邦との回線が開かれた。

 交渉の末、龍人族の女王と、スーサリア王との直接対話が約束され、時間が指定された。

 双方の許可のもと、世界中継もされることとなった。


 放送に際して約束として、王子の所在と、女王ユリが祈り師であることは言及しない、とされた。

 その二点を国民は知らない、その前提の上での交渉だった。



  ◆ ◆ ◆



「デルフィーニ王にあらせましては、ごきげんうるわしゅう」


「よせよ、ユリ、久しぶりになるが、元気にしていたか?」


「私たちすべてが元気でしたら、このような不幸は何も起きずにすみましたものを。王のご苦労も、いかばかりなことか」


「きつい皮肉だな」


「それにしても、よろしいのですか。王がテロリストのリーダーと旧知の仲と伝えてしまって」


「昔を知っているというだけだ。おまえたち龍人族が王宮を破壊した行為は許されるものではない。それに対してはきっちり対応させてもらった。すでにミサイル120発で、そっちのアジトは破壊されたはずだ」


「120発も? お高かったでしょうに」


「連邦の意思でもある」


「なるほど」


「しかし、報復だけで済む話ではない」


「と、申しますと?」


「龍人族は、病んだ人や環境問題を利用して、勢力拡大を図ろうとしてきた。勢力拡大の障害となる要人たちを、王宮爆撃でまとめて殺す計画まで立てて実行した。そうだな?」


「王にあらせられましては、真面目にそのようなゲスなお考えしかないのでございますか?」


「私の考えではない。国民の考えだ。世界の受けとりかたでもある。それについて、女王は、どう釈明するのか」


 女王ユリはすぐに王の意図を理解した。

 求められているのは、王に対する反論ではなく、世間に対する反論。


「最初におことわりしておきますが、私たちは勢力拡大に関しましては、全く興味はありません。むしろ、存在しなくていいなら、ない方がいいと思っています。しかし、現実に、この世界には悲惨な被害があります。それについて、マスコミは口にしません。マスコミというものは、スポンサーがあり、スポンサー企業の利益に反することは、知っていても口にできない」


「つまり、多くの国民は、真実を知らない、ということか。ではその真実とはなんだ?」


「来て。ここに一人の龍神の男性がいます。……上の服を脱いで」


 女王に呼ばれた男は、シャツを脱いで、上半身の素肌を画面にさらした。


「このように、顔、首、そして肩が、黒くただれています。この症状は、スーサリアでもながらく禁忌としてあつかわれ、こうなってしまったものは王宮の管理下で隔離されて生涯を過ごしてきました。おそらくこれについては、多くの国民が知らないことですね」


「たしかに、国の闇の部分として、ほとんど公開はされてこなかった」


「しかし、状況がわかりました。この症状は、感染でおきるのではなく、なんらかの生物毒によるものということはわかっています。それがベルベスの生産過程で発生してしまいます」


「それに関しては、医学的な反論もあるが?」


「反重力物質ベルベスは、さまざまな可能性があり、大国が奪いあおうとしているもの。しかもです、その成分を薬として販売することで、一時的に強いアレルギー抑制が得られるのです。企業がビジネスとして、飛びつかないわけがありません。世界に売った金さえあれば、反証論文なんていくらでもでっち上げできます」


「アレルギー抑制薬の問題については、すでに、あらかた過去のものだ。とりあえずはすばらしい効果があるものの、使い続けると効果がなくなり、より深刻化してしまう」


「よくご存じでいらっしゃいますね」


「たしかに、痛ましい症状だし、命をも奪う。だから、そのへんの管理はしっかりしていかなくてはならない。しかしこれに関しては、おまえたちが必死で主張しなくても、すでに世界的に認知され、対策が始まっていることだ」


「いいえ。薬害に関しては一定の認知と収束を得ていますが、反重力ベルベスの製造は続いています。そこには多くの健康被害者が続いていますが、事実はかくされたままです」


「つまり、龍人族は、ベルベスの製造をすべて中止しろ、といいたいのか」


「それは、むりです。すでに多くの利権が絡んでいるはず。私たちはただ、その被害の事実を、みなが知るべきだ、と考えています。そして、そのような公平な知識の共有を、妨害してくるマネーの暴力に対しては、断固とした姿勢をとらなければならない。患者が隠蔽され、人権もないまま、死を待つことになる」


「主旨はわかる。が、断固たる姿勢を貫いてしまったら、国民の理解は得られまい」


「そこは、現実論、ということになります。この男、今、みなさんに身体をさらしてもらった男の、余命は、どのくらいだと思われますか?」


「それは、医者かなにかでないと答えられないことだ」


「約二カ月です。余命が一年ない者たちが、私のもとに集まっています。それが私たちの真実です。彼らにむかって『強引な行動はやめて、ゆっくりと余生をすごしてください』と言えると? 私には、無理です」


「それが『龍人族』ということか。不治の病の者たちの集まり」


「理想は、いろいろあるかとは思います。しかし、彼らの限られた余命の中で、何をなし得るか。彼らが何にいきどおり、何をうらんでいるのか。その思いを、私は尊重しないわけにはまいりません」


「では、今後も過激な環境主義としてテロ活動を辞さないつもりか」


「はい、そうです」


 王が絶句し、数秒後に、通信が遮断された。

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