49話.vs『烈火チーム』①
学食で昼食を取る午後。
流石に今日は皆で食べる事は無いだろう、なんて思っていた時期がありました。
「へへっ、俺の勝ちだな美樹也!」
「フン、次は俺が勝ってみせる。今だけは勝利の美酒に酔いしれておくが良い」
「烈火ぁぁぁっ! いつのまにあんな力身に着けてたのよぉ!?」
「いてえ!? 耳を引っ張るなよ美鈴! あん時言ったじゃねぇか!?」
「凄まじい力でしたね。何故最初から使わなかったのですか?」
「あー。あの力は……」
「ストップだよ烈火。少なくとも、午後の戦いが終わるまでは言っちゃいけない」
「「「「「!!」」」」」
皆、仲間だと思ってるから素直に話しちゃうんだろうけどね。
気持ちは分かる。
俺も知ってる事ではあるんだけど……。
「っと、そうだな。すまねぇ玲央」
「すみません玲央さん、私が迂闊でした」
「なんで対戦相手に止められてるのよアンタ達は……」
「フ……それが玲央の良い所だ」
「そんで玲央を褒めるのね氷河は……」
美鈴さんの呆れ顔に笑ってしまう。
「ふふ、玲央君ならすでに弱点も知ってたりしてね」
「え? まぁ、なんとなくはね」
「「「「「!!」」」」」
ゲームで知ってるとは言えない。
「ほら、烈火があんまり長い間、維持できないって言ってたでしょ? だから、何らかの制限……例えば、魔力を消費し続けてなくなったら維持できないとか」
「!?」
「玲央、アンタ止めた意味あった?」
「ごめんなさい」
「ははっ! 玲央には少しの情報から丸裸にされちまうな! ま、それが頼もしくもあり、恐ろしくもあるけどよ。そんなお前だから……勝ちてぇんだ! 午後、俺達は本気で挑むぜ、玲央!」
「うん! 俺達だって本気だよ!」
「フ……明日は俺達だしな。早めに決着をつけて、見に行くとしよう」
「あ、私達もそういえばあったわね。このまま烈火と玲央のチームの勝負見に行くところだったわ」
向こうで竜と旋風さんがずっこけているのが見えた。
気持ちは分かる。
「私達B組の午後は、C組だったわね。さっさと勝って、大注目のカードを見に行かないと」
「ああ。油断は禁物ではあるが、俺達が敗れる可能性があるのは、残りは玲央のチームのみ。その両チームの戦いだ、見ないわけにはいかない」
「その心は?」
「友の戦いは見たいだろう……フ、言わせるな恥ずかしい」
「氷河にも恥ずかしいなんて感情あったんだ」
「俺をなんだと思っている百目鬼」
「かっこつけ」
「それは合っている」
「自分で理解してるからタチが悪いのよアンタは!?」
「ははははっ!」
美樹也と美鈴さんの応酬に、烈火が耐えきれずに笑いだす。
うん、好きだなぁこういうの。
「玲央君、頬が緩みっぱなしよ?」
「!!」
おっといけない、推し達の会話が心地良くてつい。
アインと剛毅は今日は席を外している。
少し調整をしたいのだとか。
勝つ為に最善を尽くす二人に頭が下がる。
俺も全力で挑もう、主人公達に。
「烈火、紅葉さん」
「「!!」」
「胸を借りるつもりで、なんて言わないよ。全力で行くからね」
「へへっ……玲央、それにリーシャさん。俺はこの時を心待ちにしてた。楽しみにしてるぜ!」
「玲央さん、リーシャ。私が憧れ、尊敬している二人に……今日は全力で挑ませて頂きます」
烈火と紅葉さんは先に席を外した。
俺もリーシャさんと視線を合わせ、席を立つ。
「そうだ美樹也、美鈴さん」
「どうした玲央?」
「うん?」
「良い勝負だった。負けはしたけど、次も負けるとは限らないと思うよ。二人ともしっかり鍛えてた。今回の負けは、真の意味での負けじゃない。それじゃ、また後でね。行こうリーシャさん」
「ええ。それじゃ、また後で」
そう伝え、俺達は学食を後にする。
「フ……見透かされたか。玲央、お前は本当に……。百目鬼、俺達も行くぞ」
「……ええ。玲央は私達の努力を、見てくれてた。負けたけど……なんか、見てくれている人がいるって嬉しいわね氷河」
「そうだな。努力が結果に繋がるとは限らん。目に見えるものでもない。だと言うのに、玲央はちゃんと見ている。これだから、怠ける事も出来ん」
「あはは。怠ける気なんて全然起こらないもんね。努力を認められるのって、なんて嬉しいんだろう」
「フ……その玲央達の戦いを見ないわけにはいくまい。最速で勝つぞ百目鬼」
「合点!」
そんな会話があった事など知らない俺は、アインに剛毅と合流して第一闘技場へと足を運ぶ。
すでに烈火達は集まっており、開始の時間を待つだけとなった。
「あの榊殿のチームと戦う……武者震いしますね烈火殿」
「ああ。今までも強いチームとは戦ってきた。けど、玲央のチームはそのどのチームより格上だと思えよゼウス」
「分かっています。油断など致しません。我が身の全力を以て挑む所存です」
「ティナさん、玲央さんにはこちらの弱点はすぐに読まれて、そこを突かれます。リーシャという万能型の駒を、玲央さんは最善の一手で動かすでしょう。ですから開始と同時に……」
「ええ、分かりました。初速全力、ですね」
「ふふ、ティナさんも玲央さんの実力はご存じですよね」
「はい。恐らく私では榊様の足元にも及ばないでしょう……ですが、成長した私をご覧になって頂きたいですから……!」
「そ、そうですか」
うん、敵の目の前で俺を褒めるのやめてもらっても良いかな。
俺なんかより、リーシャさんやアイン、剛毅の凄さを確認しておいた方が良いと思うのだけど。
「相手は玲央君の強さを理解しているわ。これまでのように穴と思うような雑魚とはわけが違う。分かっているわねアイン君、水無瀬君」
「勿論。油断しない相手な以上、こちらも全力で当たらないとね」
「あ、あ。前線は、任せて、くれ」
「ええ、二人の実力は認めてる。頼むわよ」
「「おう!」」
三人もやる気が漲っている。
前衛アタッカー兼タンクも務められる烈火。
前衛アタッカーのゼウスさんに、中衛のリーシャさんと同じ役目が出来る紅葉さん。
そして鉄壁の守りと癒しを施せるティナさんという最強の布陣。
更に、烈火には切り札の『ブレイブモード』がある。
こちらも相応の手を尽くさないと、あっという間に負ける可能性だってある。
そうして待つ間……ドキドキするけど、楽しみだ……!
「それでは両チーム、舞台へ!」
「「「「「ワァァァァァッ!!」」」」」
いよいよだ。
『烈火チーム』と、戦う……!
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