40話.藤堂誠也の為に④
「お待たせ、玲央君」
「お待たせして申し訳ありません、玲央さん」
「っ……!!」
振り返ると女神が二人居た。
もはや言葉で語れない。
美しすぎて拝んでしまいそうになる心をなんとか制した自分を褒めたい。
「なんで手を合わせてるの?」
制して無かった。
体が勝手に拝んでた。
「それにしても、玲央さんは鍛えた体をしていますね」
「本当ね。いつもは制服に隠れていたから分からなかったけれど……引き締まってるし、良い筋肉のつき方をしてるわ」
「あ、ありがとう」
なんで俺は水着を着た美女二人に褒められているんだろうか。
ここはモブとか関係なく、男として水着を褒めるところだろう……!
「ふ、二人も、その、よく似合ってるよ。まるで浜辺に舞い降りた天使か女神かって思った」
「「!?」」
おわぁー! 俺は何を口走ってるんだ!?
だ、大丈夫、かな、引かれてないよね?
二人にキモッて感じで見られたら戦いの前に精神が死んでしまう!
「そ、そう。ありがとう」
「あ、ありがとうございます」
あれ、二人ともお礼を言ってくれた。
ってそうか、二人クラスならそんなの言われ慣れてるか。
「そ、それじゃ行きましょ! 途中までは船で行くのよね?」
「え、ええ、そうです。借りておきましたので、大丈夫ですよ。私が運転出来ますから」
おお、凄いな紅葉さん。
俺はレンタルするつもりでいたのだけど、何もしなくて良くなってしまった。
うん、俺は本当に居る意味がないな。
せめて二人の邪魔にならないようにはしないとな。
「潮風が気持ち良いわね」
「ですね。少し遊びたくなります」
「クス、紅葉も子供らしいところがあるのね」
「なんでですか。誰だって海に来たら遊びたくなるじゃないですか。ねぇ玲央さん」
「え、あ、う、うん、そう、だね?」
「……どうしてこちらを見ないんです?」
「玲央君?」
いやその、二人の水着姿は刺激が強すぎてですね。
二人とも出るところは出ていて、きゅっと締まってて、スタイル抜群なんだよ。
それが薄皮一枚で肌を惜しげもなく曝け出しているのである。
普段制服の中に隠れている球の肌が、全開なのである。
思春期真っただ中の男子高校生には辛いものがあるんです。
「あ、いや、ね。その、もしかしたら外にも魔物が居るかもしれないし、周りを監視してるんだ」
く、苦しすぎるだろ俺……!
「成程」
「流石玲央さんですね。私達は少し油断しすぎでしたね」
ピュアかっ! 俺への信頼度高すぎませんか!?
嬉しいけども!
そして船は進み、海底神殿の入口の上付近についた。
「ここら辺だね。二人とも準備は良い?」
「ええ、大丈夫よ」
「はい、大丈夫です」
「よし。それじゃ飛び込むよ!」
そうして海の中へと飛び込む。
最初は明るい海の中も、下へと進んでいくうちに暗くなっていく。
海中を10m潜ると約1気圧上昇するというのは聞いた事がある人も多いだろう。
そういった気圧からも守ってくれるのが、この魔道具である。
海の中でも新鮮な空気が送られてくるし、水の中でも地上にいるのと変わらない動きができる優れもの。
効果時間は24時間で、効果が切れても魔力を補充すれば再度使える。
こんな素晴らしい魔道具が、お値段なんと10万円ポッキリ!(この時の俺は知らなかった。実際のお値段は数千万円はくだらないという事を)
いやー、この性能で驚きの値段だね。
皆の分も買っておきたい所だったけど、まだ学生の俺に10万円とはいえ、ポンポン買うような余裕は無いので諦めた。
今回だって、俺の分の10万円分しか払っていないわけで。
リーシャさんは自腹だし、紅葉さんに至っては自分の会社の製品だし。
そんな事を考えながら海の底へと着く。
魔道具のおかげで地上にいるのと変わらずに歩けるけれど、体感温度は凄く低く感じる。
海底神殿と言っても、最初は地上にあった神殿が沈没しただけなので、そこまで深い位置にあるわけでもなく、多少暗いとはいえ普通に外の光が届いているのが救いだね。
「あれかしら?」
「「!!」」
リーシャさんの言う方に視線を向けると、大きな神殿が見えた。
「よし、行こう。海と違って、ダンジョンに入ればモンスターが沢山いるはずだから、気を付けて」
「了解」
「はい」
こうして俺達は、海底ダンジョンへと足を踏み入れる。
お読み頂きありがとうございます。
今回短いので夕方にもう一話投稿するかも、です。




