32話.第二回・クラス内順位争奪戦
今日はクラス内順位争奪戦の日。
クラスに入ると、どことなくピリついた、緊張感とでもいうのだろうか。
そんな雰囲気をクラス全体から感じる。
なんか先週も同じ事思った気がする。
アインに剛毅も集まり、先週と同じように場所を移動する。
「全員揃ったみてぇだな。そんじゃま、第二回、クラス内順位争奪戦を始めるとするか!」
「「「「「おおおおおっ!!」」」」」
相変わらず、皆凄い気迫だ。
クラス内順位の一位は相変わらず俺達『榊チーム』だったけれど、二位以下は大分入れ替わっている。
皆ダンジョン攻略を頑張ってきたんだろう。
前回二位だった『流星チーム』は、今回四位に落ちているし、前回三位だった『ロスファルトチーム』は二位に上がっている。
今回も油断しない方が良さそうだ。
そう、思っていたのだけど。
「俺達『流星チーム』はクラス順位二位の『ロスファルトチーム』に勝負を挑みます!」
「おう、挑戦された側に否はねぇ、舞台に上がれ」
「「「「はいっ!」」」」
おお、前回の二位と三位のバトルだ。
おさらいしておくと、
挑戦者第四位『流星チーム』
チームリーダーの流星君が前衛剣士。
サブキャラクターの一人であるカリスさんが前衛タンク兼槍。
後衛にサブキャラクターの一人であるマーロンさんが後衛魔導士。
最後の一人は後衛回復職、クレリックである鈴木さんのパーティ。
第二位『ロスファルトチーム』
チームリーダーのロスファルトさんは、クラスパラディンの前衛タンク兼アタッカー。
そしてもう一人の前衛であるリーズさんはクラスアサシン。異例ではあるけど、前衛アタッカーである。
ミリリアさんはビショップ。プリーストの上位職であり、回復だけでなく防護結界にも優れる後衛支援職。
アズールさんはアークプリースト。これまたプリーストの上位職であり、こちらは回復とバフ支援に優れる後衛支援職だ。
どちらのチームも攻守共に優れているし、良い戦いになりそうだ。
「おし、始めろっ!」
藤堂先生の開始の合図と同時に、両チーム同時に動く。
「フフ、『満開の薔薇』のように!」
「「ぐっ……!?」」
あのスキルは短時間の挑発と、自身にシールドを張る複合スキルだ。
パラディンの女性しか覚えられないスキルでその効果はかなり優遇されている。
近距離内に居て挑発された二人は、嫌でもロスファルトさんの方に向いてしまう。
「今ですわリーズ」
「承知ですお嬢様!」
「私はリーズに支援を! ミリリアはロス姉に! 『パワーエンハンス』!」
「了解アズール! 『プロテクション』!」
うん、上手い!
後衛を直接潰す為に攻撃力を底上げし、挑発で二人の攻撃を受けるロスファルトさんの防御を結界で底上げした。
これによってリーズさんは早く後衛を撃破し、ロスファルトさんと共に挟撃が成る。
リーズさんが来るまでにロスファルトさんを倒そうにも、『満開の薔薇』の効果でシールドがある上に、その上から結界が張られている為、並みの攻撃力ではビクともしないだろう。
烈火とか超パワーファイターならまだしも、流星君とカリスさんにそこまでの攻撃力はない。
結果……
「「きゅぅ」」
「マーロン!?」
「鈴木ッ! くっ……流星、ロスファルトの相手を一人で出来るか!?」
「!! やってみる!」
「オホホホホッ! このワタクシを一人で抑えられるとでも!?」
「やってみなければわからないさっ!」
流星君も中々の前衛だと思うけど……バフを受けてかなりの硬さを誇るロスファルトさんを倒すのは、一人では無理だ。
カリスさんも、単純な一対一ならリーズさんより上かもしれないが、リーズさんはバフを受けている。
「くっ……馬鹿な、私の防御を……」
「普段の私では貫けなかったかもしれません。大した防御力ですカリスさん」
サブキャラクターの一人であるカリスさんは、剛毅と同じタイプの戦士だ。
それをバフがあったからとはいえ、モブのリーズさんが倒してしまうとは……これだから戦いは面白い。
カリスさんを倒したリーズさんがロスファルトさんと合流し、流星君はあえなく倒れた。
「そこまでだ! 勝者『ロスファルトチーム』!」
「やりましたわね!」
「ふふ、お嬢様の作戦通りですね」
「流石ロス姉!」
「リーズも!」
「皆の力ですわ!」
どうやらこの一週間でかなり腕を上げたみたいだ。
「次は私達が『ロスファルトチーム』に勝負を挑みます!」
「お、連戦だが行けるか?」
「オホホホホ! 挑まれたからには逃げませんことよ!」
なんと、次も『ロスファルトチーム』が対戦となった。
そして簡単に相手チームを蹴散らす。
その後も挑戦するチームは後を絶たなかったが……
「暇ね、玲央君」
「見るのも楽しいけど、せっかく訓練したから戦いたいよね」
「だ、な」
そう、誰も俺達に挑戦してこないのだ。
二位の『ロスファルトチーム』はかなりの数を挑まれているけど。
そして三位と四位は割と入れ替わっているのだけど、入れ替わっても挑むのが『ロスファルトチーム』なのだ。
「ロスファルトさん」
「榊様!? ど、どうされまして!?」
何故にそんなに驚いているんだろう?
「えっと、今日は挑んでこないのかなって」
「あははは、ご冗談を。榊様のチームに挑むなんて、アリが象に挑むようなものですわ」
「え」
「もっと強くなったら、榊様達の胸を借りようとは思っておりますわ! ですが、今のアタクシ達では、挑むことすら無礼ですわ!」
「「「「「うんうん」」」」」
何故か周りのクラスメイト達が全員頷いている。
な、何故に!?
「いやー、正直アインと水無瀬の訓練見てたらなぁ」
「あの二人を突破出来る気がしねぇよ」
「だって言うのに、その先にはリーシャ様が居るんだぜ?」
「それを指揮する榊が居る鉄壁の布陣だろ? どうやって勝てば良いのかイメージが浮かばねぇよ」
「「「「「うんうん」」」」
「「「「……」」」」
どうやら、二人の修練を見ていたクラスメイト達は、実力差を痛感してしまったみたいだね。
リーシャさんが元から強いのは周知の事実だし。
アインと剛毅も凄く強いからなぁ。
なんならメインキャラクターやサブキャラクターと遜色ない実力だと思っているし。
「ククッ……まぁ、そうだな。お前達のチームは少し突出してやがるのは俺も認めている。教師の俺が言うのはアレだが、恐らくE組の代表はお前らになるだろうな」
「「「「!!」」」」
「クラス対抗戦は、各クラス上位一組がそれぞれ選抜されて戦うが、クラスの戦いはそれだけじゃねぇ。各クラス全員の順位戦もあるからなお前ら」
「「「「「!?」」」」」」
「A組からF組で、順位争いをするんだ。仮にE組がクラス対抗戦で一位なのに、その後のクラス戦で順位が落ちてみろ……恥ずかしいとは思わんか?」
「「「「「!!」」」」」」
「ま、要するに勝てないからと挑戦を諦めるなってこった。榊達の胸を借りろ、上を目指せ。ここは戦場じゃねぇからな、死ぬ事のない最高の学び場だ。環境を利用しろ、強くなれお前ら!」
藤堂先生に発破をかけられ、皆の目の色が変わる。
「アタクシも目が覚めましたわ。『ロスファルトチーム』は学年、クラス順位共に圧倒的一位の榊様のチームに、勝負を挑みますわ!」
「ククッ! よく言った!」
「藤堂先生、めっちゃ楽しんでますね……」
「ふふ、良いじゃない。私達の訓練を始めましょ」
「良いね、やっと班で戦えるね!」
「あ、あ。やろ、う!」
皆やる気満々である。
かくいう俺も、皆と戦うのは楽しみだ。
「よし、やろうか!」
「「「おおっ!」」」」
それから午前中、やる気に満ちた皆と戦いまくる事になった。
というのも、藤堂先生が俺達に挑むのは順位関係なしとか言い放った為だ。
リーシャさんが抗議しようとするも、皆のやる気に何も言えなかった。
なので、全力で全員叩き伏せる事にしたようで、午前が終わる頃には死屍累々で、皆地面に倒れこんでいた。
「クハハハ!! いやぁ、お前らはやっぱ強いな! ガハハハハッ!」
滅茶苦茶楽しそうな藤堂先生とは対照的に、皆は疲労困憊である。
あ、うちのメンバーを除いて。
「ふぅ、楽しかったね! やっぱり榊君の指揮があると、芯が一本通った気がするよ!」
「あ、あ。戦い、やすい、な」
「ふふ、そうね。というか、二人も本当に腕を上げたわね。協力技も連携も凄いじゃない」
「訓練頑張ったからね!」
「あ、あ」
本当にアインと剛毅の腕前が凄かった。
リーシャさんの元にすら誰一人近寄れない程に。
この二人、滅茶苦茶に強いよ。
主人公勢と変わらない、むしろ現状だと少し上くらいまでありそうだ。
あ、そうだ。陽葵先輩達との事を言っておかないとね。
「皆、午後大丈夫かな?」
「!! 勿論だよ!」
「あ、あ。問題、ない」
「ええ。私も大丈夫、ですよね藤堂先生?」
「ん? おお、構わねぇよ。やりたい時はお前から言ってこいリーシャ。前回見せた技は習得しとけよ?」
「……」
また無茶ぶりを言ってる。
あんな剣聖の奥義の数々を習得しとけって言われて、習得出来ましたとか言えるのはリーシャさんくらいなものだろう。
「えっとね、二年の先輩……結月 陽葵先輩と、本郷 千鶴先輩から、模擬戦やろうって誘われてて。陽葵先輩は二年生筆頭だし、千鶴先輩は陽葵先輩に勝るとも劣らない実力者だし、良い腕試しになると思う、よ?」
「「「「「……」」」」」
あれ、リーシャさん達だけでなく、周りの皆もなんか引いてるのは気のせいだろうか?
「はぁ……玲央君、どうして貴方はいつもいつも……」
「え?」
「榊君、どうして二年生の、それも一番強い人と模擬戦なんて流れになるの!?」
「えっと、最初は勿論断ったんだよ? でも陽葵先輩がやろやろって五月蠅くて仕方なく……」
「相手二年生だよね榊君!? そんな対応で良いの!?」
「え? あ、うん。陽葵先輩だし」
むしろ向こうがこうした対応を望んできてるので。
「やっぱ榊はすげぇな……」
「本当に、榊君の人脈どうなってるの……?」
「結月先輩って、あのギャル先輩だよな。ファンクラブ出来てたから、俺入ったんだけど……可愛いだけじゃなくて、マジ強いんだぜ」
「貴方も会員なってたの? 私も入ったんだけど……刀の振る速さが見えないくらい速くて、斬られた側が気付かないんですって。二年生筆頭なのよ結月先輩」
「そんなお方が、榊君に……!」
なんか色々聞こえてくるけど、それ言う側に回りたかったなぁ……!
俺もモブなのになぁ……!
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