30話.ゲームの世界
ああ―分かる。
これは夢、だ。
いや……ある意味で正しく……本来起こるはずだった、正史……。
「おぉぉぉっ!!」
「烈火!」
「分かってる! 弾けぇっ!」
「グォォォォッ!!」
魔王が放つ強力な魔法の数々を、烈火は全て魔王へと斬り返す。
その剣閃は、広範囲の魔法攻撃ですら単体の物として扱い、全てを弾く。
「フ……! 隙だらけだぞ魔王! 奥義『氷乱月華閃』!!」
「ガァァァッ!?」
「チッ……浅いかっ……!」
「支援するわよ! 重ねがけぇっ! 『オールエンハンス』!」
「回復しますっ! 皆を癒せっ! 『ヒーリングサークル』!」
美鈴さんの最大級の支援魔法と、紅葉さんの回復魔法が全員を包みこむ。
「助かるっ! 行くぜ美樹也っ!」
「ああ、これで決めるぞ烈火!」
「グルゥ……!!」
「「天魔『爆炎・氷結』!!」」
「ガァアァァァァッ!! っ……神、め……これが、貴様達の描いた……シナリオ、か……」
「「はぁっはぁっ……」」
「やったの烈火!? 美樹也!」
「……魔王の体が、消えていきます。私達の、勝ちですっ……!」
「!! うぉぉぉぉっ! 俺達やったんだなっ……!」
「フ……俺達が手を組んだんだ。当たり前だ」
これは、烈火が誰とのエンディングも迎えずに進んだ先の、トゥルーエンドの世界。
そう、この倒し方の時のみ、魔王は言った。
『神の描いた、シナリオ』と。
これについて、原作者は何も触れなかった。
何故、烈火が誰のルートも進めなかった時だけ、このセリフを言ったのか。
完全攻略をしても、全ルートを攻略し、CGやシナリオを埋めても分からなかった。
大団円の、全員が烈火とのエンディングを迎えた記憶を持ったルートでは、まさにハーレムルートで面白かったのだが、これはおまけシナリオだった為、途中までで終わったんだよね。
サイトで皆の出した答えは、単なるミスや、陰謀論で埋めつくされた。
マカロンなら、この答えが分かるのだろうか……。
「っ!!」
夜中に目が覚める。
何か、夢を見た気がするのだが、思い出せない。
まぁ、夢なんてそんなものだけど……何か、大切な事を見た、ような。
「……」
体を起こすと、マカロンが猫の姿で、ジッとこちらを見ていた。
「マカロン……?」
「にゃん」
声が、聞こえない?
いつもなら、頭の中に直接声が聞こえてくるのに。
「にゃん」
「マカロン、どうしたの? 声が聞こえないけど……」
「……」
ベッドから飛び降りたマカロンは、まるでついてこいと言っているようだった。
マカロンが進む後をついていく。
何故か、この場所が……俺が暮らしていた家じゃないような……そんな気がする。
「にゃん」
「マカロン……?」
家の扉を不思議な力で開けたマカロン。
玄関から外に出ると、そこには異様な景色が広がっていた。
「なんだ、これ……」
色々な場所に亀裂が入っている。
その先は闇で、何があるか分からない。
いつものような明るい青空ではなく、淀んだ紫色の世界。
「これが、すでに滅んだ世界だ、玲央」
「!?」
いつのまにか人型の姿をしていたマカロンが、隣に居た。
「数多の世界が滅び、また始まった。ここはその成れの果ての世界」
「!!」
「この世界は、神々によって創られた。最初、魔族は強すぎた。故に、人間側に対して救済措置を施した」
「もしかして……烈火の武器は……」
「そうだ。人間側が魔王を倒せるように、創り出したアーティファクトだ。他にも数々の処置を施し、私に勝てるよう調整をした」
「どうして、そんな事を……?」
「……私を苦しめる為だろう。神に最も愛された天使でありながら堕天した者、Luciferの魂を継ぐ者が、私だからな」
ルシファー……『傲慢』を体現する悪魔。
全天使の長であり、神の存在を否定するという罪を犯した、元熾天使。
「この世界は、ルシファーの魂を苦しめる為に創られた箱庭、という事……?」
「そうとも言えるな。だが、そこに異質な物が紛れ込んだ」
「……それが、俺?」
「ああ。お前は……私を救ってくれる可能性がある唯一の存在だ。故に、私はお前に手を貸す。どうか……神々を……」
ヂヂヂヂ、とノイズが走り、世界が割れる。
「っ!!」
夜中に目が覚める。
何か、夢を見た気がするのだが、思い出せない。
まぁ、夢なんてそんなものだけど……何か、大切な事を知った、ような。
「……」
体を起こすと、マカロンが猫の姿で、ジッとこちらを見ていた。
「マカロン……?」
「にゃん(夢見が悪かったか? 凄い汗をかいているぞ)」
「あ……そう、みたいだね。まいったな、この時間にシャワーを浴びに行くのもあれだし……」
「にゃ(玲央)」
「うん?」
「にゃん(好きにやるがいいさ。お前の自然な行動が、私の助けになると信じている)」
「? よく分からないけど、元よりそのつもりだよ? 大好きな『ブレイブファンタジー』の世界にせっかく来れたんだからね!」
「にゃん(フ……ああ、お前はそれで良い)」
よく分からない事を言うマカロンだったけど、とりあえず二度寝する事にする。
今日はヴァルハラに行けるからね! 早く朝にならないかな!
このお話は、第二章が終わった後のエピローグとして出そうかと思いました。
ですが、マカロンの事を断片的に知る事と、これから情報のピースを散りばめる(実はこれまでにもいくつか出してはいます)為に、この時点で出しておこうと思いました。
第二章時点では、あまり関係のないお話ではあるので、考察勢の方々以外は流し見でお願い致します(駄)
お読み頂きありがとうございました。
次話は少し空くと思います(フラグではありませんよ?)ので、よろしくお願い致します。