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6話.モブでも力になりたくて

 問題はこれからだ。

 リーシャ・エーデルハイトと友達になった。

 これは本来、モブでは有り得ない事。

 更に俺の失言から、藤堂 誠也の呪いに関する手がかりを得るという、本来であれば主人公である轟 烈火と友好を築くパートを大幅に削ってしまう事になる。

 いや轟 烈火が誰のルートを選ぶかは学園祭まで分からないのだが、それでも共通パートである程度は友好関係を高める事が出来る。

 リーシャ・エーデルハイトのルートを選ばなかった場合、藤堂 誠也は呪いを解呪される事はない。


 どのルートであっても、いや最後の大団円ルートのみ別で、皆それぞれのルートでの記憶を持った状態で始まるから違うんだけど。

 あれはあれで主人公の取り合いが面白すぎて……今考える事じゃないな、ステイ。


 とにかく、だ。リーシャさんと友達になった以上、俺も彼女に信頼される人間になりたい。

 そこにモブとか役割は関係ない。

 ただ友達として、力になりたいんだ。

 俺が最初からリーシャさんへの信頼度がマックスである事は言うまでもないが、リーシャさんからの俺への信頼度は決して高くないはずだ。


 そこへ、俺が突拍子のない荒唐無稽(こうとうむけい)な事を言ったらどう思うだろうか。


 (アンサー)1「酷い……。私は真剣に相談しているのに、そうやって無下に扱うのね! 貴方を信じた私が馬鹿だった!」


 A2「そうなのね! 貴方を信じてその通りにするわ!」


 いやこれ、A2が有り得ないとすぐに想像できるから。

 信じたら詐欺師とかに騙されそうで心配になるレベル。

 どうしよう……どう答えても最悪になる未来しか見えない。


「……(榊君、真剣に悩んでる。きっとどう私に伝えるか、情報を吟味してるのね。彼はトップシークレットである国家機密すら知っていた。そんな情報を知れる彼だもの、話して良い内容かどうか、真剣に悩んでくれているのね、私の為に)」

「……リーシャさん」

「は、はいっ!」

「? え……っと、まず前置きをさせてほしいんだ」

「前置き?」

「うん。これから話す事は、多分信じられないような内容も含んでる。それを口外しない事が一点。そしてもう一つは……」

「分かったわ。情報の大事さはこれでも理解しているつもり。誰にも話すつもりはないわ。もう一つは?」

「……」


 これは、本当に悩んだ。

 どうしても、どうしても俺では無理だから。

 俺では強さが足りない。

 もし彼女だけでそこへ向かえば、彼女は最悪の場合死んでしまう。

 それだけは……それだけは、避けたい。いや、避けなければならない。

 これから話す一言で、例え彼女に嫌われたとしても。


「……轟 烈火に、協力を頼んでほしい。烈火なら、必ず力になってくれる。烈火が居なければ、不可能なんだ」

「轟……? ああ、あの赤髪の。分かったわ」

「!?」


 驚いた。なんでそんなに素直に聞いてくれるんだろう?

 彼女は自分の手で藤堂誠也を治す事に拘っていた。

 それはリーシャ・エーデルハイトのルートでも語られていた事だ。


『私はね烈火。最初は、貴方とも組む気は無かった。誠也先生が呪いを受けたのは、あの悪魔から私を庇ったせい。だから、私が誠也先生を救う事に意味があると思ってた』


 そう悲しそうに告白するのだ。

 そんな彼女が、何故こんなに素直に聞いてくれるのだろうか?


「ふふ、疑いもなく私が頷くのが意外?」

「!!」

「……私自身も意外ではあるんだけどね。でも、友人となってくれた榊君が、本気で悩んで今の言葉を発してくれたのが、分かるの。だから、信じて良いと思えた。この答えじゃ、不満?」

「ううん。ありがとう、俺みたいなモ……奴を信じてくれて。俺は絶対に、リーシャさんに嘘はつかないって誓うよ」

「こちらこそありがとう。なら、聞かせてくれる? 誠也先生の呪いを解く方法を」

「……分かった。ただ、一度に全部は話せない。協力は錬金術クラスの副リーダーの力も必要だしね」

「錬金術クラスって、確か2年生のクラスよね。まだ入学式を終えて2日目よ? ……ホント、榊君の情報網はどうなってるのよ」


 なんてリーシャさんに呆れられながらも、剣聖リーシャ・エーデルハイトのルートで必要だった事をゆっくりと説明していく。

 錬金術クラスの副リーダーから信頼を得るには、彼の依頼する任務をかなりの数こなさなければならない為、これも結構大変なんだけど。

 少し後ろで、主人公勢が聞き耳を立てている事なんて気付くはずもなく、学校に到着するのだった。








「流石にここからじゃ何を話してんのか聞こえねぇな……美鈴、もうちょい近づいてみるか?」

「ダメダメ、これ以上近づいたらバレる。玲央の魔力感知は私達以上なはずだから」

「ですね。玲央さんの力は私でも底が見えませんから」

「おわっ!? 西園寺、居たのかよ!?」

「お前も気になるから、こうしてつけているんだろう?」

「美樹也、お前まで!?」

「もう烈火煩い! いーい皆、玲央やあの女に気付かれないように、少しづつ距離を詰めるわよ!」


 頷く三人は、少し声が聞こえる距離にまで近づく。


『……轟 烈火に、協力を頼んでほしい。烈火なら、必ず力になってくれる。烈火が居なければ、不可能なんだ』

「「「「!!」」」」


 わずかに聞こえた言葉。

 それは轟 烈火の心を揺さぶるのには十分な言葉だった。


「玲央……あんの野郎。嬉しい事を言ってくれるじゃねぇか。任せとけよ、お前が信頼してくれた以上、俺はそれに応えてやるからよ……!」

「くっ……玲央、そこは俺じゃないのか?」

「……。至急、玲央さんとの関係改善が急務のようですね」

「むぅ玲央! そこは完全無欠で無敵の私を頼むように言いなさいよ! どうして馬鹿烈火なのよ!」

「誰が馬鹿だ誰が!?」


 電柱の陰に隠れ切れていない彼らは、異様に目立っているのだった。

いいね、ブックマーク、評価、感想どれも創作の力になりますので、応援お願いしますー。



2025年8月4日追記

※名前の変更

リーシャ・バレンタイン→リーシャ・エーデルハイト

詳しくは活動報告へ書かせて頂きましたので、気になる方はそちらでお願い致します。

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― 新着の感想 ―
原作をどこまでなぞった方が良いのか悩ましい所ですわな まぁ原作に(ここまでの存在は)いないであろう情報通なギャルゲーの友人ポジがポップしていますがね!
能力検査が来ると思ったらまさかのヒロイン(級)襲来w
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