7話.第一回・クラス内順位争奪戦①
今日はクラス内順位争奪戦の日。
クラスに入ると、どことなくピリついた、緊張感とでもいうのだろうか。
そんな雰囲気をクラス全体から感じる。
黒板には、時間が来たら第五競技場へ来るようにと書かれていた。
なら準備をしておこう。
準備と言ってもアイテム類は禁止なので、俺が持つのはこのミスリルの剣のみだけれど。
『魔法のカバン』も今回は使わないけれど、一応身に着けておくけどね。
パッシブ効果が優秀なので。
「榊君、リーシャさんおはよう」
「おは、よう」
「アイン、剛毅! おはよう!」
「おはよう二人とも。これで揃ったし、私達は行きましょうか」
「そうだね。二人も準備は良い?」
「大丈夫」
「あ、あ」
二人とも、昨日にバッチリと訓練してきたんだろう。
自信に満ち溢れている。
「それじゃ行こう皆」
今日は全クラスがクラス内順位争奪戦を行うので、烈火達ももうそれぞれの競技場へ向かっている事だろう。
時間が余れば、他のクラスも見に行きたいところではあるんだけど。
「おう、お前らが一番最初か。他の奴らはまだみてぇだな」
競技場に着くと、藤堂先生が腕を組んで待っていた。
威風堂々。凄くカッコイイ姿である。
「おい玲央、そんな目で見んな。流石に慣れてはきたが、背中がかゆくなんだよ」
「俺そんな目で見てました!?」
「「「(自覚は無いんだ)))」
「まぁ感覚なんだがよ。ったく、お前は凄い奴なのかそうでないのか、たまに分からなくなるぜ」
凄い奴ではないですね、ええ。
凄い奴っていうのは、烈火達のような人達の事を言いますので。
勿論藤堂先生は言うに及ばないけど。
「この顔は絶対変な事考えてますよ藤堂先生」
「おう、俺もなんとなくだが分かるようになってきたぜリーシャ」
「「……(苦笑)」」
なんでぇ。
と、気付けばクラスメイト達が集まってきていた。
そろそろ時間かな?
「全員揃ったみてぇだな。そんじゃま、第一回、クラス内順位争奪戦を始めるとするか!」
「「「「「おおおおおっ!!」」」」」
お、おお。
皆凄い気迫だ。
やる気に満ちているのが分かる。
これは油断出来ないな。
「俺達『流星チーム』は学年、クラス順位一位の『榊チーム』に勝負を挑みます!」
「ほう、早速一位と二位の勝負か。挑戦された側に否はねぇ、舞台に上がれ」
「「「「はいっ!」」」」
俺達は先に舞台へと上がる。
舞台中央付近に剛毅とアインが並んで配置し、その後ろにリーシャさん、更にその後ろに俺の配置だ。
対する『流星チーム』は、チームリーダーの流星君が前衛剣士、そしてサブキャラクターの一人であるカリスさんが前衛タンク兼槍を務め、後衛にまたまたサブキャラクターの一人であるマーロンさんが魔導士だ。
最後の一人は後衛のクレリックである鈴木さん。
流星君と鈴木さんは恐らく俺と同じモブだけど、実力はかなり高い。
このチームは俺に攻略情報を聞きに来なかった数少ないチームでもある。
あと、流星君が主人公達並みにイケメンである。
烈火や美樹也には劣るとはいえ……サブキャラクターにも負けてはいないビジュアルだ。
「榊君、俺は君を目標に努力してきた。そして、君に勝って……リーシャさんを手に入れる!」
「「「「「「!?」」」」」」
何を言っているんだこの人は。
というか仲間の視線が凄い痛いのに気付いていないのだろうか。
男子一人に女子三人のハーレムパーティなのに、他チームの女子を手に入れるなんて言ってれば、当然だとは思うけど。
「ええと……。……よし! リーシャさんは俺の(推し)だっ! 好きになるのは分かるけど、そこは譲れないっ!」
「れ、玲央君……?」
「ならば勝負と行こう!」
「ブハハハハハッ! クックッ……! おし、始めろっ!」
藤堂先生の開始の合図で、両チームすぐに行動を開始する。
しかし……
「ふ、ん!」
「なっ!?」
「甘いよっ!」
「ぐぅっ!?」
剛毅が流星君の剣を難なく弾き、カリスさんの槍まで弾き飛ばした。
その隙だらけの二人を、アインは容赦無く斬り捨てた。
「か、回復をっ……」
「させるわけないじゃない。『エア・ブレイド』」
「きゃぁぁっ!?」
「くっ! 『マジック……』」
「遅いよっ! 『瞬迅斬』!」
「きゃぁっ!!」
「……おいおい、もう終わりか。勝者『榊チーム』」
「「「「「……」」」」」
うん、この三人の強さの格が、違いすぎる。
リーシャさんは言うに及ばずなんだけど、アインと剛毅も一緒に居るから忘れがちだけど……あの桁違いに強い主人公達と見劣りせずに戦ってきたんだよね。
「う、嘘だ……水無瀬君にアイン君が、ここまで強いなんて……」
「っ……水無瀬の大盾で、視線が読めなかった。死角からの、突き……熟練の技を感じた。今の私では、及ばないな」
「回復すら、させて貰えませんでした……リーシャさん、凄すぎる……」
「アインさんは、リーシャさんが鈴木さんを阻止するって分かってたみたいね……私にまっすぐに向かってきてた」
「「「「そしてそれを指揮する榊君か……」」」」
え? いや、途中まではうんうんって聞いてたけど、今回俺なんにもしてませんよ?
「俺は、思い上がっていた。こんな俺が榊君に並ぼうなどと……リーシャさんは、悔しいけれど君のものだっ!」
「いやいや、リーシャさんは誰のものでもないよ。(推しを)好きになるのは当然だからね!」
「榊君……!」
「ねぇアイン君、水無瀬君。私はこの感情をどうすれば良いと思う?」
「……笑えば良いんじゃないかな……」
「ごふ、ふっ……!」
「……」
さて、一回戦は特に何事も無く終わったけれど……
「次、第三位『ロスファルトチーム』が『榊チーム』に挑みますわ! ダンジョンポイントこそ『流星チーム』に僅差で負けていますが、こと戦闘力で言えばワタクシ達の方が上、侮らないでくださいましね!」
「ククッ……やる気があって結構! 連戦だが、問題ねぇな?」
「皆、行ける?」
「ええ、問題ないわ。この振り上げた拳の降ろしどころが欲しかったの」
「「「「ヒッ!?」」」」
リーシャさんの殺気が相手チームを委縮させた気がする。
何故リーシャさんは怒っている? んだろうか?
「これは、全然分かってなさそうだね剛毅……」
「榊殿、だから、な……」
「二人も大丈夫かな?」
「あ、うん! いけるよ榊君!」
「あ、あ。問題、ない」
「了解。『榊チーム』いけます」
「おう! そんじゃあ、お前達も配置につけ!」
「「「「はいっ!」」」」
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続きは明日投稿予定です。




