1話.E組の先駆者として
想像以上に続きを望むメッセージをSNS等含めて頂けたので、第一章が完、という形にさせて頂いて、第二章を始める事に致しました。
ただ、毎日投稿は難しいと思いますので、そこだけご理解頂ければと思います。
ランキングは載れたら嬉しいですが、そこはもう意識しないように、見ないようにするつもりです。新規で見つけて貰えなくても、ブックマークを外さずに読んでくれた皆さんの為に、書いていきたいと思いました。あ、勿論初めてや、外したけどまた続きを見つけて読み出してくれる方も大歓迎なのですが!
ではでは、またよろしくお願い致しますー。
「行ってきます」
「「いってらっしゃーい」」
「にゃー(頑張ってこい玲央)」
いつも通り、咲と拓に行ってきますの挨拶をしてから、外へと出る。
魔王(猫)も頭に直接話しかけてくるけどもう慣れた。
「おはよう玲央君」
「おはようリーシャさん」
「それじゃ行きましょうか」
「うん」
朝から美女と登校である。
魔王の手先から命を狙われるかもしれない。
その危険性から、ローガン師匠や藤堂先生から、俺を護衛するように依頼され、リーシャさんは毎日登下校を一緒にしてくれている。
正直、魔王には狙われる事は無いのだけど……"邪眼"研究所の魔族達のように、勝手に行動している魔族達の行動までは魔王も全部は把握できないらしいし。
ちなみに、リーシャさんは榊君から、普段から玲央君呼びにランクアップした。(俺的に)
というのも、平日に休みをもらった金曜日に、散々皆にからかわれた為である。
『分かったわよ! 普段からそう呼べば良いんでしょう!?』
「「「「「おー!!」」」」」
もはややけっぱちだったと思う。
けど、俺はリーシャさんに名前で呼ばれるのは、こう、凄く嬉しいので。
いつも通り、1年E組のクラス内へと足を踏み入れる。
すると、俺の席の周りで何か言い争いが起こっているようだった。
「だからよ、榊ってののチームがどんな不正してやがるのか、教えろって言ってるだけだろ?」
「だから、榊達は不正なんかしてねぇって! あいつらの実力だよ!」
「あぁ? んなわけねぇだろ! 人工ダンジョンが開かれたばっかりで、学年1位を独走、2位との差がダンチなんだぞ!? ありえるかよ!」
どうやら、学園順位が張り出されている結果に不満を持った人が、クラスにまで乗り込んできているようだ。
「……」
「剣の柄に手を掛けているリーシャさん、落ち着いて」
「玲央君、女には引けない時があるの」
うん、それ有り体に言って男が言わないかな?
「まぁまぁ。……おはよう皆」
「「「「「榊(君)!!」」」」」
「!! てめぇが榊か。よう、不正で1位で有名になって嬉しいかよ?」
「不正?」
「そうだよ。ありえねぇだろ? 人工ダンジョンはまだ開かれて1週間だぞ。なのに、なんでもう下位ダンジョンを制覇してんだよ!?」
実を言うと、金曜日の午後。
皆での攻略が楽しすぎて、D級以下の人工ダンジョンを全て攻略してしまったのだ。
勿論パーティメンバーは色々なんだけど、どのチームも榊チームだった為、こんな事になっているのだろう。
「なら、ヴァルハラがそういう不正を許すシステムだと、君は言いたいんだね?」
「!?」
「生徒達の力を測り、タイムもきちんと測定するシステムに欠陥があると、そう言いたいんだよね?」
「そ、それはっ……」
こういう最初から不正を疑って掛かる輩は、正論に弱いのが常だ。
ただ怪しい。そう思っただけで行動に移す。
そういう人は必ず居るものだからね。
ただ、彼だって真面目にやっていたからこそ、不正を許せないという自分の中の正義があるはず。
その部分は認めてあげないといけない。
だから……
「それじゃ、今日の午後は、君のチームも一緒にダンジョンを攻略しない?」
「え?」
「俺達が不正していないって、証明するよ。それじゃ駄目かな?」
「……。……分かった。今日の午後だな。お手並み拝見させてもらうぞ」
そう言って、彼はクラスへと戻って行った。
「榊! よく言った!」
「榊君、あんな言い掛かり気にしちゃ駄目だからねっ! 私達は榊君の実力、身に染みて知ってるから!」
「そうだぜ! 榊のおかげで俺達も人工ダンジョンクリア出来てるしな!」
等々、クラスメイト達がフォローしてくれる。
「ふぅ、玲央君には敵わないわね。私だと武力で制圧してたわ」
「あはは。俺も結果的には変わらないと思うよ。リーシャさんにアインや剛毅の力、当てにしてるし」
「それは任せなさい。実力の違いを分からせてあげるわ」
「そうだよ! 僕達の力、見せつけてやろう榊君!」
「お、う!」
おわっ!? アインと剛毅もいつの間にか傍に居て驚いた。
話をしっかり聞いていたようで、その目は炎が宿っているように見えた。
「おーっす! なんだなんだ、何かあったのか玲央?」
「おっはよー! 玲央、まーた何かやったの?」
烈火達も来たようだ。
あの、俺がいつも何か騒ぎを起こしているかのような印象操作はやめて頂いて。
「フ……玲央だからな」
「あの、氷河君、それは褒めていませんよ……?」
皆揃ったので、簡単にいきさつを説明する。
「あぁっ!? ふざけやがって! 玲央がそんな事するわけねぇだろっ!」
「……俺がそいつを矯正してきてやろう」
「待って待って落ち着いて美樹也!? リーシャさんと同じ事しようとしないで!?」
「玲央君、そこで私を引き合いに出されると困るわ」
「フ……やはりお前は俺と似ているなリーシャ」
「なんだかとても恥ずかしくなったわ」
「何故だ!?」
「そりゃこのカッコつけと同じなんて言われたら……」
「ほぅ、百目鬼……それだけ俺を注視しているとは……」
「そんなわけあるかー!」
ああ、このやり取りに癒される。
最近忘れがちだけど、主人公グループのこういう絡み、大好きなんだよね。
「まーた榊君が乙女顔に……」
「慣れ、ろ」
乙女顔とは!?
「お前ら席につけー。朝くれぇ自分のクラスにいろやお前らも!」
「「「「無理です!」」」」
「ハモってんじゃねぇ! ったく、そら散った散った!」
皆笑いながら、自分のクラスへと戻っていく。
烈火と西園寺さんはA組、美樹也と美鈴さんはB組で、このE組とは少し離れている。
それでも毎朝、休憩時間に至るまで、こちらの教室まで来てくれるんだよね。
本当に嬉しい。
もはやクラスメイト達は慣れたもので見ているけれど、俺は他のクラスに行っていないんだよね……。
リーシャさん以外のサブキャラクター達と、俺はまだ親睦を深められていないどころか、出会えてすらいないのだ。
勿論烈火が出会えていればそれで問題は無いのだけど……俺はメインキャラクターである主人公達だけでなく、サブキャラクタールートだって全部エンディングを見るほどには好きなんだよね。
直接関わる事が出来なくても、陰で応援くらいはしたい。
このクラスにも数名居るのだけど……女性である事もあってか、中々話す機会がない。
ダンジョン攻略方法の話も、彼女達は聞きに来なかったしなぁ。
まぁ内向的な性格だったし、当たり前か。
ゲーム内でも知り合うのはクラス内ではなく個別イベントでだし。
烈火はよくフラフラとヴァルハラをうろついているみたいなので、もう話をしている可能性もあるけど。
「……以上でホームルームは終わんぞ。あー、もう恒例みたいになってるが、榊チームは先日の件で話がある。午後はいつもんとこに来い」
おっと、考え事をしていたらホームルームが終わってしまった。
しかし、午後の予定が被ってしまう。
「あの、藤堂先生!」
「あン?」
「実は午後から、ちょっと外せない予定があり、まして……」
「そりゃー、俺からの呼び出しより重要な事なんだろうな?」
「うっ……その……」
藤堂先生にジロリと睨まれ、言葉が出なくなる。
まるで蛇に睨まれたカエルである。
「藤堂先生! 榊は俺達の代表として、逃れられない使命があるんですよ!」
「そうなんです! 榊君は証明する必要があるんです!」
「今日は許してやってください藤堂先生!」
「皆……」
まさかのクラスメイト達の援護射撃である。
「ブハッ! 分かった分かった。ならその用事が終わってからで良い。ったく、人心掌握力がすげぇなお前は。そんじゃ、また後でな」
そう言って藤堂先生は教室から出て行った。
皆の想いも背負ってるんだ、午後は頑張らないとね。
お読み頂きありがとうございます。
応援して頂けると頑張れます。




