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転生したらモブだったので、主人公グループをヨイショしてたらいつの間にか主人公グループに入ってた件  作者: ソラ・ルナ
第一章・仲間編

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47話.モブの研究施設攻略戦②

 眼が熱い、視界が歪む。

 何か暖かい物が手に落ちてきた。

 これは、血か。


「玲央っ……」


 烈火の声が近くで聞こえる。

 そうだ、俺が倒れても、烈火が居てくれる。

 モブの俺は、やる事をやって倒れたって問題ないんだ。

 全力で、俺のやれる事をやれば良いっ……!


「オオオオアアアアアアアッ!!」

「チィッ……! こいつ、やりやがるっ……!」

「強い、ですね……! 全身を覆う魔力が、分厚い壁となっています……!」


 ……視えてきた。

 奴の、魔力の鎧の、薄い所。

 そして、奴が奴として存在できるコアの場所まで。

 奴の全てが、視える。


「ゴフッ……」

「「玲央ッ……!」」

「ちょっと玲央!?」

「玲央さんっ……」

「だい、じょうぶ……もう少し、なんだ。もう少しで、奴の全てが分かる……!」

「「「「っ……!」」」」


 俺には、後を任せられる仲間がいる。

 俺が倒れても、俺が負けなければ負けじゃない。

 藤堂先生もそう言っていたじゃないか。

 今は全力で、この"魔眼"の力を開放するんだ……!


「シャラクサイワァァァァッ!!」

「うぉっ!?」

「くっ!?」


 藤堂先生とリーシャさんが後方へ吹き飛ばされる。

 その隙をついて、奴は俺の方へと走ってきた。

 多分奴には、"魔眼"を使う俺がご馳走に見えているんだろう。

 だけど、悪いね。

 大人しく食べてやられるわけにはいかない。

 俺はまだまだ、皆の活躍をこの目で見たいからね。


「美鈴さん、皆にバフを」

「!! 了解! マルチダブルキャスト! 『パワーエンハンス』『スピードエンハンス』『マジックエンハンス』『フィジカルエンハンス』!」

「西園寺さん、奴の額に向かって、一点集中の魔法を」

「分かりましたっ! 貫け、一条の槍!『スピア・オブ・グングニル』!」

「ソンナモノ、キク……ガァァァァ!?」


 効くさ。そこは、お前も意識できていない、魔力の薄い場所。

 一番脆い、急所だ。


「美樹也、西園寺さんが貫いた場所を、広げて」

「フ……心得た! 『残影陣』からの、咲き乱れろ、『コキュートス・アラウンド』」

「ギィァァァアアアアァァッ!?」


 流石だ、美樹也。これで奴を守護する、覆っていた魔力の膜は壊れた。

 後は……


「玲央、お前眼がっ……」

「大丈夫。さぁ、とどめだよ烈火。最後は、烈火が決めるんだ」

「!! おう、任せろ。どこを狙えばいい」

「心臓。人間と同じ位置の心臓の位置。あそこに形態を維持するコアが埋め込まれてる。アレを破壊すれば、奴は崩壊する」

「分かった。玲央、後は任せなぁ!」

「うん! やってしまえ、烈火ァ!」

「おおおぉぉぉっ!!」


 駆けて行く烈火の姿が、朧げな蜃気楼のように見える。

 眼が、痛い。


「消えろやぁぁぁぁっ!『オメガ・ブレイカー』ァァァァッ!!」

「ガアアアァァアァァァアッ!? オデ、オデハ、タダ……イキタカッタ、ダケ、ナノニ……! ァァァァァッ!!」

「……わりぃな。ただ、運が悪かった。そう思いな。……そうだ、玲央!!」


 "魔眼"を酷使しすぎたみたいだ。

 もう何も視えない。

 でも、良いんだ。


「榊君っ!」

「玲央ッ! おい『魔法のカバン』を開けろっ! 中に何かあンだろ!」

「藤堂先生、これっ!」

「『エリクサー』か! なんでこんな希少なモンが!? ってそれは良い、飲ませろリーシャ!」

「はいっ! 榊君、飲んで……!」


 冷たい何かが、口に触れる。

 けれど、駄目だ。力が入らない。

 体から急速に力が抜けて行く。

 "魔眼"の使用に耐えられないと言っていたのが、今なら分かる。

 酷使すれば、それは命の危険があるのだと。

 本来視えない物を視る力。


 それは凄まじい代償の元に使える力なのだという事。

 俺はその理解が足りていなかったんだろう。


 咲、拓、父さん、母さん、ごめ……うぶぶぶぶっ!?


「ぶはっ……な、何事!?」

「榊君っ! 良かった、死んじゃうかと思ったでしょう!?」

「えっ、と……」


 リーシャさんに抱きしめられ、俺は周りを見渡す。

 皆が安堵した表情で、俺を囲んでいた。

 そうか、俺は倒れたのか。


「心配かけて、ごめん皆。身代わりの木偶人形も、これは身代わりになってくれなかったみたいだね……」

「何言ってんだ。お前の木偶人形、壊れてるぞ」

「え?」

「つまり、お前は一度死ぬダメージ受けてるってこった。良かったな、命拾いしてんぞ玲央」


 え、いつ? 俺が死ぬようなダメージ受けてたの!?


「あー、多分あのバケモンを凝視していた時じゃねぇか? 口からも血が溢れてたからよ」

「嘘!?」

「フ……お前は集中しすぎると、自身の状況が見えなくなるようだな。そこは俺達がサポートする必要があるか」

「だねー。ホントもう心配かけて! この馬鹿玲央っ!」

「イタイイタイ! せっかく回復したのに!?」

「後、ダ。オレも噛みつかれた時に、木偶人形が壊れてンな。またお前に、借りが出来ちまったゼ」

「いやいや、あれはそもそもツヴァイが俺を庇ってくれたから受けたんじゃないか! ありがとう、ツヴァイ」

「フン……偶々、体が動いちまったダケだ」


 そう言ってそっぽを向くツヴァイだったけど、額が赤いのがここからでも見えた。


「さて、立てるか玲央?」

「あ、はい」


 リーシャさんのぬくもりが離れ、少し寂しい気持ちになりながら立ち上がる。


「よし。お前らよくやったな。これで"邪眼"研究所の魔族は壊滅だ。先に外に出てろ。俺とリーシャでこの施設を完全に破壊するからよ」

「そうですね。この鬱憤を晴らす相手を轟君に消されてしまいましたし」

「おい玲央、これ俺がわりぃの?」

「あはは。それじゃ邪魔にならないように、俺達は帰る準備をしておこっか」


 外に出ると、研究施設から凄まじい轟音が鳴り響き……建物が倒壊していく。


「ごっついな、藤堂先生にリーシャさん……。あの二人が押せなかったバケモンを、よく俺が倒せたな」

「たわけ。烈火だけなら無理だったに決まっているだろうが」

「ぐっ……分かってんよ美樹也。はぁー、もっと鍛錬しねぇとなぁ。美樹也、クラス違うけど付き合ってくれよ」

「フ……良いだろう。俺も丁度そう思っていた所だ」


 おお、烈火と美樹也の友情イベントだっ!

 ゲームだとここでイラストありそう!


「はぁー、つっかれた。ねぇ西園寺さん、私達も魔法の訓練一緒にしない? 西園寺さんくらい強い人がいないと、張り合いがなくて」

「ええ、勿論構いませんよ。切磋琢磨していきましょう百目鬼さん」

「その、百目鬼さんっていうの、そろそろやめない? 美鈴で良いよ」

「そうですか? 私はちょっと事情があって……」

「あー、知ってる知ってる。そこは気にしないから。だから、私の事はそう呼んで」

「分かりました、ありがとうございます美鈴さん」

「ん、それでよし」


 おー、こっちはこっちで友情イベントが!

 あっちを見てもこっちを見てもイベントが起こっていて、俺はどっちをヨイショするべきですかね!?


「こら榊君、ジタバタしないで今は休んでおきなさい! 貴方死にかけたんだから!」

「あ、はい」


 リーシャさんに強制待機ルートに入らされました。


「榊殿、素晴らしい、実力、だった」

「剛毅。剛毅も凄かったよ。あの化け物じゃなければ、あの槍の一撃をそもそも防げなかったと思う」

「いや、俺も、まだ、まだだと、思った。いい、経験に、なった」

「そっか。剛毅も強さに貪欲だね」


 皆、今回の戦いで得る物が多かったみたいだ。

 ってあれ? リーシャさんが、ここに居る?

 おかしいな、建物壊しに行っていたはずじゃ?

 そう思ってもう一度リーシャさんを見る。


「? 私の顔に何かついてるかしら?」

「いやあの、さっき建物破壊してませんでした?」

「ああ。後は藤堂先生に任せてきたわ。そもそも、私はパワー型じゃないのよ」


 言われてみれば、そうだった。

 藤堂先生は忘れがちだけど、利き腕じゃないのにこの強さなんだよね……。

 全盛期の強さなら、あの化け物も一人で倒してるんじゃなかろうか……。


「おーいお前ら、帰る準備は出来たかー?」

「藤堂先生!」

「俺も疲れたからよ、帰りは烈火に任せるぞ運転」

「そりゃないっスよ藤堂先生!?」

「「「「「ははははっ!」」」」」


 こうして、"邪眼"研究所の攻略は成功で幕を閉じた。

 家に帰ったら、


「「まだ何も準備出来てないけど!?」」


 咲と拓に驚かれてしまった。

 うん、皆が凄すぎて、すぐに終わってしまったからね。


「にゃん(よくやった、玲央)」

「!!」


 マカロンが脳に直接、話しかけてきて驚いたけれど……その後は俺もパーティの準備を手伝い、夜ご飯はケーキを食べる事になるのだった。

 明日は俺は休みだし、久しぶりに咲と拓を見送る形になりそうだね。

お読み頂きありがとうございます。

次話で完結となります。

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