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転生したらモブだったので、主人公グループをヨイショしてたらいつの間にか主人公グループに入ってた件  作者: ソラ・ルナ
第一章・仲間編

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44話.モブの初任務前夜

本日二話目です。

 藤堂先生と明日の任務についての話を終え、今日は明日に備えて各自早めに帰るように言われた。

 少し早いけれど、俺はリーシャさんと共にアーベルン先輩の元へと向かう事にした。


 二年生は一年生と授業形態が違う為、すでにアーベルン先輩は部室、というか自分専用の部屋を確保しているので自室と言えるか。

 自室で錬金術を行っているようだった。

 邪魔にならないようにそっと扉を閉め、錬金術を観察する。


 様々な色の魔力の糸が、繋ぎ形を成していく。

 とても綺麗だ。


「ふぅ、完成だ。……おや、榊君にリーシャさん。来ていたのかい」

「アーベルン先輩、こんにちはです。少し早く来てしまいましたけど、『魔法のカバン』は出来てたりしますか?」

「うん、大丈夫だよ。言っちゃなんだけど、自信作だね。最高傑作レベルの出来だよ。さ、受け取って欲しい」

「!!」


 か、軽い。

 なんだこれ、羽みたいに重さを感じない。


「ふふ、軽いだろう? そのカバンの重量はほぼゼロに出来たんだよね。疲労軽減、スタミナ自動回復のおまけつきさ」

「「なっ!?」」


 その二つの効果は、戦闘職が喉から手が出るほどに欲しくなる特殊効果である。

 間違っても『魔法のカバン』につくような効果ではない。

 錬金術にはランダムでつく付与効果という物が存在し、それが付く個数は術者の腕次第。

 熟練の錬金術師ですら2個付くのは稀であり、その中でも付与効果はランクの低い、つきやすい傾向にある効果が優先される。

 その中で、疲労軽減とスタミナ自動回復は希少中の希少な効果であり、まず付与効果2個目についたりしない。

 言ってしまえば、国宝級である。


「あ、あの。良いんですか、俺が貰っても」

「何を言っているんだい? 榊君が素材を持ってきてくれたんじゃないか」

「いやでも、これ国宝級の効果ですよ……」

「はは。ヴァルハラの生徒達は、全員国の宝だよ。榊君、君がこれを有効活用してくれたら嬉しい」

「!! ありがとうございます、アーベルン先輩!」


 まさかここまで凄いものが出来て、しかもそのまま受け取れるなんて思っていなかった。

 アーベルン先輩には感謝してもし足りない。


「榊君にはいろんな素材を分けてもらっているし、こちらも感謝しているんだよ。これからもよろしくね?」

「はいっ!」


 片目をウインクしてそう言ってくれるアーベルン先輩に頭を下げる。

 この『魔法のカバン』なら、許容量も大きそうだし、早速売店で色々買って、amuronでも必要なものを買い揃えておかなければ。


「これからどうするの榊君?」

「そうだね……売店によってアイテム類をまずは沢山買っておいて、『魔法のカバン』の中に入れておくよ」

「そう、了解。行きましょうか」


 リーシャさんは何も言わず、俺のやる事についてきてくれる。

 自分のやりたい事だってあるだろうに、俺の事を守る為に、優先してくれる。

 これについて俺は大丈夫だから、リーシャさんのしたい事をしてきて良いよと言った所で、優しく責任感のあるリーシャさんが承諾するはずがない。

 だからこそ、俺は自分の用事を手早く済ませて、家に早く帰るのが一番リーシャさんに時間を返してあげられるんだ。


 そうして売店での買い物を終え、帰る事を伝える。

 リーシャさんはそれにも素直に従ってくれた。

 その帰り道。


「榊君」

「うん?」

「明日は、気を付けて。轟君達を信じていないわけじゃない。だけど、私が近くで守れない事が、こんなに不安になるだなんて、思わなかった」

「リーシャさん……」

「藤堂先生と、一気に片づけて合流するから。決して無茶はしないで、良いわね?」

「リーシャさん、うん。ありがとう、心配してくれて。大丈夫、俺は皆より劣るけど、このミスリルの剣もあるし、簡単にはやられないから」

「ええ。それじゃまた明日。必ず任務成功させましょう」

「うん、リーシャさん。また明日」


 リーシャさんの後ろ姿を見送りながら、俺は先ほどの言葉を嚙みしめる。


『明日は、気を付けて。轟君達を信じていないわけじゃない。だけど、私が近くで守れない事が、こんなに不安になるだなんて、思わなかった』


 最初はきっと、藤堂先生の呪いを解く為の手段の一つだったはずだ。

 それが今は、こんなにも俺の身を心配してくれている。

 友達になってくれた。

 それが、こんなにも胸を温かくしてくれる。

 俺も、自分の出来る事を最大限に発揮して、仲間を……リーシャさんを守ってみせる。

 そう改めて心に誓い、玄関の扉を開けようとして……


「おっと、鍵が掛かってるな。そりゃそうか、俺が一番だよね」


 なんて、締まらない事をしてしまう俺だった。

 しかし、鍵を開けて玄関に入ると、


「帰ったか玲央」


 なんですでに居るんですかね魔王様。


「あの、せめて猫型でいましょう、ここ玄関ですよ魔王様」

「む、マカロンと呼ばぬかご主人様。ちゃんと探知はしておる。付近には玲央しかおらぬ」

「はいはい……マカロン、とりあえず俺の部屋に行こうか」

「うむ!」


 そうして自分の部屋に入り、制服から着替えてパソコンを立ち上げる。


「何をしておる?」

「明日魔界へ行く事になったから、amuronで色々必要なの買っておこうと思って」

「人間の世界の空間転移システムを利用した販売システムだったか? 許容量が小さい物しか移動させられぬ、不便な物ではなかったか?」


 まぁ、おっしゃる通りなんですけど。

 けれど、逆に言えばお菓子や軽いものなら、買ってすぐに届く優れものなんだよね。


「ふむ、色々な物が売っておるのだな」


 画面の後ろから、覗き込むように顔が近づいてくる。

 あの、柔らかいものが当たってるんですけど。


「ククッ……当てておるのだ」

「!?」


 こんの魔王めぇぇぇっ!!

 思春期の男子高校生の情緒で遊ぶんじゃないっ!!


 なんて言えないので、俺は黙って商品を買い物カゴに入れて行く。


「色々買うのだな。金は足りるのか?」

「大丈夫。必要経費だし、これくらいの貯蓄はしてるよ。まぁ少しきつくはあるけど……」


 結構痛い出費ではあるけど、背に腹は代えられないというか、命掛かってるので。


「ふむ、ならばこれを使え」


 どさどさどさっ


「!?」


 見た事のない札束の数が、ベッドの上に積まれる。


「あ、あの……?」

「なに、宿代代わりだ。どうせ人間の世界の金など使わん。献上されて余っておるのだ」


 流石魔王様、献上とかされるのね。

 というかこれ、人から奪った金というやつでは……?


「その、これは受け取れないよ」

「何故だ?」

「献上って事は、その……他の人間から、魔族が奪ったお金って、事だよね?」

「……」

「それを使ったら、駄目だと思うんだ。気持ちは嬉しいけど……」

「……そうか、そうだな。お前の気持ちを考慮してやれなかった。すまんな」

「あ、いや! これは俺の考えってだけで! お金はお金だと思うし、どう使おうが自由だとは思うよ!?」


 ただ、信条というか、気持ちの問題というか。

 子供みたいな感情論かもしれない。

 だけど、お金はきちんとした行いで得て、使いたいと思ってしまう。


「分かった。ならばこれを受け取れ」

「これは……?」

「『エリクサー』と呼ばれる、万能傷薬だ。宝物庫にいくつかあってな。これをやろう。欠損くらいならすぐに生えてくるぞ」

「!?」


 それ、三年生のあの先輩が妹を治す為にずっと必要として探してるアイテムー!!

 それが今目の前に、十個もあるぅ!?


「良いか玲央、死ぬ事は許さない。本来であれば、私が手を貸してやりたいくらいだ。だが、それは出来ぬ。故に、これくらいの支援は許せ」

「マカロン……」


 本当にその気持ちが嬉しい。

 これは、受け取らないなんて選択肢は取れないな。


「ありがとう。大丈夫、俺の仲間達は本当に強いから。それこそ、『ブレイブファンタジー』を知るマカロンなら、知ってるでしょ?」

「フ……そうだな」


 やわらかい笑みを零すマカロン。

 ゲームの時とは、もう違う。

 魔王は、敵ではなくなっている。

 けれど依然として、魔王の配下達は人類に牙を向けている。

 今回の研究所のように、魔王に隠れて悪さをする者達は後を絶たないだろう。


 それを根絶する為の第一歩だ。

 明日は、確実に任務を成功させてみせる。


お読み頂きありがとうございます。


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身代わりの木偶人形ワンセット2千円×9セットこの時点で一万八千円 命には代えられないとはいえこれだけでも結構痛いこれ以外も買ってたらさらにダメージは加速した。 お金はお金だとしても子供みたいな感情論…
重量ほぼゼロで疲労軽減スタミナ回復って、実質重量マイナスみたいなもんよね 玲央が魔界での任務を終えて帰ってくると、そこには玲央のアカウントでいつの間にか購入されたお菓子とジュースで宴をしているマカ…
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