表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらモブだったので、主人公グループをヨイショしてたらいつの間にか主人公グループに入ってた件  作者: ソラ・ルナ
第一章・仲間編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/100

34話.モブの班行動③

「さて、まだまだ時間はあるけど……どうする?」

「僕としては、まだ色んなダンジョンを周ってみたい、かな? 榊君のおかげで勘違いしそうになるけど、普通はこんなに簡単に攻略できるものじゃないし……今のうちに多くクリアしておいて、ポイントを稼いでおくのも手だと思うんだ。他の皆はまだ、午前の『嘆きの洞窟』に挑んでいる時間だし」

「俺も、異存、ない、です」

「……リーシャさんはどう思う?」

「そうね……どの道今日の午後は班行動と決めたのだし、やれるだけやるのも良いかもしれないわね」

「そっか。なら、そうしよう。アインさんと水無……」

「榊君。僕の事は普段も呼び捨てで良いよ」

「あ、俺、も、剛毅、で。苗字、俺、似合ってなくて、あんまり、好きじゃ、なくて……」

「そ、そう? 分かったよアイン。それに剛毅も。……俺は、水無瀬って苗字良いと思うけどね。なんか綺麗な苗字じゃない? 剛毅は装備を綺麗に扱ってるよね? 新品みたいに見えるけど、ところどころ痛んでるのは長く愛用してるんでしょ? その丁寧な所、苗字がとても似合ってると思う」

「!!」

「「……」」


 あれ、なんか皆黙ってしまった。

 おかしな事を言ってしまっただろうか……。


「そんな、事を、言って……くれた、の、榊殿、だけ、です。ありが、とう……」

「いやいや、お礼を言われるような事じゃないよ!? 装備を丁寧に扱うのは、戦士として大事だよね。命を預ける相棒だもんね!」

「そうよ榊君。だから私もこの剣、すごく大事にしてるんだから。藤堂先生から借りてる剣じゃなくて、私の愛剣、大通連(ダイトウレン)よ」

「うん。見ただけで分かる。凄く研ぎ澄まされた剣だよね。手入れも毎日してるんでしょ? 刃毀(はこぼ)れ一つない。それに美しい刀身だよね。大切にしてるのが伝わってくるよ……!」

「そ、そう……?」

「あははっ……! 榊君さぁ……」

「はは……!」


 あれ、何故か二人に笑われてしまった。


「そ、それじゃ次のダンジョンへ行きましょうか……! ここから近いのはどこかしら!?」

「あっと、そうだね……ここからだと……」


 そんなわけで、今日は様々な低ランク人工ダンジョンを制覇して回った。

 全部一位を独占状態で、翌日騒ぎになる事をこの時の俺達は知らない。




 夕方になり、班は解散。

 リーシャさんは俺の護衛という事で、家まで送ってくれる事に。

 帰り道に今日の出来事を話し合い、和気あいあいとした雰囲気だったのだが……


「……」

「「!!」」


 普段の変わり映えのない通り道。

 そこが、別空間になった。

 魔族が扱う特別な力の一つ、『虚数空間』に入り込んだ。

 いや、領域を展開して強制的に入れたが正しいか。


「下がって、榊君」

「うん、気を付けてリーシャさん」


 二人で目の前に居る男、いや女か?

 どちらか判別がつかない、中性的な魔族を見る。

 その手には大きな鎌を持っている。まるで死神が持っているかのように、歪な魔力が視える。


「テメェが榊、玲央で。テメェがリーシャ、エーデルハイトだナァ? お初にお目にかかるぜぇ。オレの名はツヴァイ……ツヴァイ・クトゥルフっつーんだ、お見知りおきをってナァ……クハハッ!」

「「!!」」


 クトゥルフ、だって!?

 それはアインと同じ……!


「ケケッ……! なンかよぉ、アインがテメェらに絆されそうだからサァ……さっさとその"魔眼"、くり抜いて魔界に持ち帰らせてもらうゼェ!?」

「!!」

「させるわけないでしょう」


 リーシャさんが前に出て、剣を構える。

 しかしツヴァイと名乗った魔族は、動かない。


「グァ……テメェ、邪魔すンじゃねぇ、アイン……!」

「「!?」」

「(駄目だツヴァイ! 僕は榊君を傷つけたくないっ! 体を返すんだっ!)」

「(指令を忘れたかアインッ! やらなキャ、やられンだゼ!? またあの人体実験の日々に戻っても、良いってのかヨォ!?)」

「(そうじゃないツヴァイ。……榊君なら、僕達の事情を話せば、手を貸してくれると思わないかい?)」

「(あぁン!? 何を寝ぼけたコトを! 人間なんざ魔族以上に信じられねぇダロウがヨ! オレ達が受けてきた痛み、ドライを失った悲しみを、忘れたとは言わせねぇゾ!?)」


 何故かかたまり、動かなくなったツヴァイ。

 アインと、そう言った。

 これは俺の予測でしかないけど……アイン・クトゥルフの中には別の人格が居て、体の所有権を争っている、のだろうか。


「どうする、榊君。藤堂先生からの第一指令は榊君を守る事。私は、このまま殺しても良いと思ってるけれど」


 油断なく剣を構えたリーシャさんの眼は、本気だ。

 魔族に対する憎しみ、それが伝わってくる。

 だけど……


「ううん、待って欲しいリーシャさん。藤堂先生は、懐柔しても良いって言ってくれた。だから……俺に、話をさせて欲しい」

「……。……分かったわ、榊君がそう言うなら。でも、少しでも危なくなったら、私は容赦しないわ」

「うん、ありがとうリーシャさん」


 俺を守る事を第一に考えてくれているリーシャさんの、精一杯の譲歩だと思う。

 さて……ここからはゲームに無かった展開だ。

 俺は主人公じゃないし、うまく説得できる確率は低いかもしれない。

 だけど……今日一日、一緒に過ごしたアインは、信じられる。

 その直感を、俺は信じる。


「アイン、聞いて欲しい。俺は、魔族だからって全てが敵だとは思ってない」

「「!?」」

「人間だって、悪い奴はいる。それと同じ、いや割合が違うとは思うけど。そして……今日一日だけど、一緒に過ごして。アインは、悪い奴じゃないって感じたんだ。何か理由があるんでしょ? だったら、俺に話してほしい。もしかしたら力になれるかもしれない。俺には無理だとしても、俺より凄い人達が、俺の周りには沢山いるんだ。俺は遠慮なくその人達を頼る!」

「……ぅ……榊、君……」

「「!!」」


 中性的な魔族の姿が、元のアインの姿に戻っていく。


「ありが、とう。こんな僕を、信じてくれて。話すよ、僕の目的と……どうしてヴァルハラに潜入したのかを」


 『虚数空間』が解除されたのか、元の道に戻った。

 夕暮れの風を感じ、晩ご飯の匂いが漂ってくる、いつもの雰囲気だ。


「とりあえず、俺の家に行こう。リーシャさん、それで良いかな?」

「ちょっと待って。アイン君は大丈夫かもしれないけれど、他の危険がないとは言い切れない。一度ヴァルハラに戻りましょ。藤堂先生をはじめ、強力な力を持つ先生達がいてくれるし、安心だわ」

「そうだね。ヴァルハラには対魔大結界もあるし、僕が言うのもなんだけど、それが良いと思うよ榊君」

「そっか……了解。それじゃ、ヴァルハラに戻ろう」


 そうして俺達は、もう一度ヴァルハラへと足を運ぶ。

 そこで俺は、思いもよらぬ真実を知る事となる。

お読み頂きありがとうございます。

転生したらモブ(以下略)のお話を書き始めて、今日で一か月が経ちました。

前話の後書きでも書かせて頂きましたが、皆さんの応援のお陰でモチベーションが続いて書き続ける事が出来ました。

すでに10万文字も超えていて、自分でも驚いています。


これからも応援して頂けたら嬉しいです。ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
アイン・ツヴァイで思考共有してるのかと思ったら、肉体ごと共有してたのか 最終的にアインとツヴァイのいいとこ取りした形態が出てきそう
おはようございます。 人間だろうが魔族だろうが、良いやつも居ればクソの極みみたいなやつもいる……玲央の言う通りですよね。アイン(とツヴァイ)にも、救いが舞い降りてくれれば良いんですが…。
荒い口調だけど絆されそう(バレたら裏切者扱いされる)ってとこからリーシャさん(ヴァルハラ実力最上位)がいるのお構いなしで襲撃しかけてくる辺り嫌いじゃないわむしろ好きだわツヴァイw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ