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3話.モブだからこそ

「おおーい、お前ら席につきやがれ。これから明日の事を説明すっからな。ってなんで他クラスの奴らが来てんだ。お前ら今日は初日だぞ? まずは自分のクラスで交友関係を作らんのか?」

「「「「!!」」」」

「あ、貴方は! 去年の湾岸ミッドウェー作戦では一人で仲間達を救助し、三か月前の荒野の決戦の後退戦では殿を務め、一人で全ての魔族を追い払ったヴァルハラの英雄! 藤堂(とうどう) 誠也(せいや)大佐じゃないですか!?」

「お、おう。よく知ってるな。6番、榊 玲央か。ミッドウェーはともかく、後退戦の事は非公式だったはずだが……」


 しまった。あまりにもユーザーの間では有名すぎて、この世界では知られていないのを忘れていた。

 軍の最高司令官でもあった藤堂 誠也。魔族を狩った数で言えば、この世界堂々の一位。

 数多の戦場を駆け、魔族側からは死神と恐れられ、人間側からは英雄と称される大将軍。


 しかし、荒野の後退戦である女性を助ける際、負傷してしまう。

 その負傷が呪いの類であった為、利き腕を使えなくなってしまったのだ。

 助けた側は気にしなくて良いと言うが、助けられた女性は自身を責めた。


 その女性がこのヴァルハラに今年入学している。

 それに合わせて、前線に立てなくなった彼は、教師になる道を選んだのだ。

 14歳という若さで戦場に出ていたのも凄いんだが……その女性というのが、何を隠そう若くして剣聖と呼ばれているリーシャ・エーデルハイトである。

 本編では語られなかったが、サブキャラのルートに進むと知る事の出来るストーリーだった。


「え、えっと、その。俺は情報を知るのが……し、趣味でして!」

「「「「「……」」」」」


 これはちょっと言い訳が苦しかっただろうか。

 だが、シーンとなったクラスに、笑い声が響いた。


「ククッ……ハハハハハッ! いや、見事だ榊。知りえぬ情報を知る、どんな武器よりも強い力よ。戦いは情報からすでに始まっていると言っても過言ではないからな。お前のその力、必ず必要とされる時が来るだろう。励めよ」


 驚いた。まさか、褒められるなんて思っていなかったからだ。

 周りの皆も俺を見る目が少し変わった気がする。


「それはそれとして、だ。お前らは戻れ戻れ。西園寺の嬢ちゃんと言えど、この学校では特別扱いはしねぇからな?」

「ふふ、はい。それは心得ております誠也おじさま。いえ、先生とお呼びすべきですね。それでは、私もこれで教室に戻ります。行きましょう烈火君。玲央さん、また来ますね」

「おう! 玲央、また後でな!」

「あ、ちょっと待ってよ烈火! 隣のクラスなんだから途中まで一緒でしょ! 置いてくな! また後でね玲央!」

「姦しい奴らだ。ではな玲央」


 そう言って四人は教室に戻って行った。

 静かになったけれど、藤堂先生の目は俺をしっかりと見ていた。


「ゴホン。えー、さっきまでの時間はこの学校の基本的な事を講師から聞かされたと思うが、このクラスの担任は俺、藤堂 誠也が担当する事になった。ま、俺の事に詳しい奴がいるようだから、説明は省くとしよう!」


 そこでドッと笑いが起こる。

 いやすいませんってば。貴方のような英雄にネタにされるのは恐れ多いというか、恥ずかしいというか。


「良いか、この時間にも魔族はこの大陸を制覇しようと攻め込んで来ている。国防軍が対抗してくれているが、年々押されてるのが事実だ。そこで、対抗策の為に作られたのがこのヴァルハラだ」


 そう、年々減っていく戦士達の数。

 それは死亡によるものが一番多いが、戦えなくなった者も多い。


「魔族達は基本的に人間より強い。肉体は強く、魔力も高い。その為基本的な戦術は二対一、数の有利を生かして戦う形に軍隊ではなる。だが! この学校では一対多で勝てる者を輩出する事が目的だ。また、その支援をする者だな」


 この世界の軍隊は、重火器を使わない。

 魔道具やアーティファクトと呼ばれるアイテムを使って戦う。

 科学の力は、魔族に何の効果も与えられないのだ。

 例えば鉄砲。

 これを撃ってダメージを与えられるのは人間だけなのだ。

 つまり、魔族側に有利になってしまうわけだ。


 対して魔道具は魔族は扱えない。

 自身の魔力と合わず、使う事が基本的にできないのだ。

 奪われても敵の力にならない為、魔道具やアーティファクトの開発は盛んに行われている。

 錬金術とも呼ばれるが、直接戦えない人はこちらで力になる人が多い。


「魔族は人類全ての敵だ。甘い顔をすれば喉元を食われ、殺されるぞ。仲間を、人類を守るために、お前達はこのヴァルハラに入学したと思っている。……と、前提はこのくらいにしておこう。明日の話だが、能力測定を行う」


 出た。入学式の次のイベント、能力測定。

 力、速度、魔力の3つを測る。


 これらも数値ではなく、大体のランク分けで示されるのだが、主人公達は大体こうなっている。



主人公 轟 烈火


力 S

速 A

魔 A



ヒロイン 西園寺 紅葉


力 C

速 A

魔 EX(測定不能)



ライバル 氷河 美樹也


力 A

速 S

魔 A



幼馴染 百目鬼 美鈴


力 C

速 B

魔 S



 といった具合だ。

 俺?

 測った事ないけど多分


榊 玲央


力 F

速 F

魔 Unknown(悪い意味で測定不能)



 じゃないかな? なんて低いステータス。だってモブだもん。

 これ、成長率でもある。

 つまりレベルが上がればこの通りに上がるので、滅茶苦茶ステータスが開いていくのを実感できるよ。

 ちなみにサブキャラクターの剣聖のあの子は、


剣聖 リーシャ・エーデルハイト


力 S

速 S

魔 A



 という、お前主人公勢より強いのなんなんってレベルである。

 でもそれもしょうがなくて、この子はルートによっては敵ボスになる。

 この強さのまま。味方になったら弱くなるなんて事もなく、敵になっても強いのである。

 何を隠そう、西園寺ルート行った時だよ。

 滅茶苦茶強くて、ラスボスの魔王より強かった気がする。

 ドラクエのゾーマをひかりのたまを使わずに倒さないといけないレベル。


 毎ターンバイキルト使ってくるような敵で強すぎて運営にクレームいったけど、修正されなかった悪魔の所業である。

 一週目は大体ヒロイン行くよね? そしたらいきなりこんなボス出てくるの罠すぎない?


 まぁそれは置いておいて。



「この測定結果を元に、班分けを行うからな。勿論能力値だけでなく、技能も見るから安心しろ。それじゃ、続いて……」


 藤堂先生の話を聞きながら、明日に思いをはせる。

 きっと明日の結果で、皆の俺を見る目が元に戻るだろうから。

 そうしたら、またモブとして皆を草葉の陰から推していこう。

 今日という宝物の日を一生の記念に忘れない。


 入学式の今日は午前で終わりなので、先生の別れの挨拶で今日は終わり。

 そそくさと今日受け取った教科書等をカバンにしまい、席を立つ。

 教師によって終わる時間が違うのだろう、この教室は一番早かったようで、他の教室はまだ静かだ。


 静かに、音を立てないように下駄箱へと歩く。

 そこでB組を通りすぎ、A組を通り過ぎようとして……


「お! 玲央! もうちっとで終わるから、下駄箱で待っててくれよな! 一緒に帰ろうぜ!」

「!?」

「おい轟、終わりを決めるのは私なんだが?」

「おっと、ごめん先生! というわけで、ダチ待たせてるから早めに頼んますっ!」

「お前な……ったく、分かった分かった、手早く話すからもう少し待て」


 ゴフッ(吐血)

 主人公からの声かけ、もう死んでもいい。

 いやそうじゃないだろ!

 どうしてそんな事ができるの、さす主人公とでも言えば良いの?

 窓際に居た西園寺さんが、苦笑しながら手を振ってくれた。


 もう逃げられない。


 心臓がバクバク言うのが聞こえる。

 今日だけで俺心臓を働かせすぎた気がするな。

 下駄箱で靴に履き替えてから、出入り口付近で立って待っておく。

 先に帰るクラスメイトが、榊君また明日ね~って声を掛けてくれた。

 なんという事でしょう、クラスメイトが俺の事を覚えてくれている。


「ねぇ、ちょっと良い?」

「え?」


 振り向いた先、俺の目に映ったのは剣聖・リーシャエーデルハイトだった。

いいね、ブックマーク、評価、感想どれも創作の力になりますので、応援お願いしますー。


2025年8月4日追記

※名前の変更

リーシャ・バレンタイン→リーシャ・エーデルハイト

詳しくは活動報告へ書かせて頂きましたので、気になる方はそちらでお願い致します。

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なろうあるあるの入学してから能力測定 兵士を育成する専門の学校なのに何で入試の時点で能力を測らないの?
主人公からしたらゲームの世界だからそういうモブもいるって認識だろうけど、他の人からしたらやたら説明口調なリアクション、しかし話しかけると顔真っ赤にしてテンパる可愛いところもある変なやつだからな。そら覚…
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