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転生したらモブだったので、主人公グループをヨイショしてたらいつの間にか主人公グループに入ってた件  作者: ソラ・ルナ
第一章・仲間編

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25話.モブのスマホ契約

 今日も快晴。良いお天気である。

 寝不足の俺には朝日が眩しい。

 だって、休日に家族だけならともかく、あのリーシャさんと一緒に行くんだよ。

 これってデートなのでは?

 いやいや、ただスマホを契約しに行くだけだ。

 何も知らない俺達の為に、保護者のようについてきてくれるんだ、勘違いするな俺。


 保護者と言えば、昨日の夜に父さん母さんに言ったら、必要な書類(本人確認、親権者の同意書、関係を証明する書類等々)をすぐに渡してくれた。


「こんな事もあろうかとぉ!」

「アナタ、落ち着いて」

「いや一度で良いから言ってみたくて」


 我が親ながら、お茶目な人達である。

 その時が来た時に、自分達が一緒に行けないかもしれないと思って準備だけはしておいてくれたのだとか。

 本当に、感謝しかない。


「くぅ~……せっかく玲央達と買い物に行ける機会がぁ……」

「仕方ないわよ。新入社員が入ってきて、今仕事倍増してるんだから……」


 俺達が学校に入学したように、企業に入社した人達だって沢山いるんだもんね。

 そして、まだ右も左も分からないであろう新入社員達をサポートするのが、すでに入社している先輩達だ。

 社会では学生と違って、出来て当たり前で褒められる事は少ない。

 折れずに頑張ってくださいと心に思いながら、両親を労った。


 というわけで、今日は制服ではなく私服に着替える。

 白いワイシャツにはアイロンをかけて、シャキッとしているように見えるように。

 なんせあのリーシャさんと一緒に並んで歩くんだ。

 だらしない格好で横を歩くわけにはいかない。

 顔は、まぁどうしようもないので諦めてもらおう……。

 でも清潔感くらいなら努力でなんとかなるからね!

 香水を軽く振りかけて、準備完了である。


 足取り軽く下に降りると、


「おやようおにい」

「はよっ兄貴!」

「おはよう榊君」


 うん。うん?

 なにこれデジャブ。

 昨日も同じ事なかった?

 違いはリーシャさんが私服な事。

 すっごい可愛い、似合ってる、直視できない。


「おはよう愛する妹に弟よ」

「うん、普通に返事しよおにい」

「ごめんなさい。おはよう咲、拓。リーシャさんもおはようございます」

「なんで私だけ敬語なの榊君」

「「それです」」

「え?」

「私も榊です」

「俺も榊っスよリーシャの姉御」

「あ……」

「下で呼びましょうリーシャさん! 私も咲で良いですし!」

「そうそう! 俺も拓で良いっスよ!」

「お、おいお前達……」


 なにやら妹と弟の様子がいつもと違うような。


「そ、そうね。それじゃ、今はれ、玲央君って呼ばせてもらうわね……?」

「ど、どうぞ。リーシャさんが良ければ、玲央でもなんでも……」

「(よっし拓! 一歩前進よ!)」

「(おう姉貴! 一歩前進だな!)」


 何故かドヤァしてる二人は放っておいて、テーブルの上に並べられた朝食を食べる事にする。


「うん、美味い。今日は咲が当番だったよね、上手になったね咲」

「あ、ありがとおにい。拓が教えてくれるからだけどね……」

「んなこたぁねぇよ姉貴。俺はちょっと口出ししただけだし、全部姉貴が作ったんだぜ? 自信持てよ姉貴!」

「う、うん。もう良いから! おにいはその目で見るな恥ずかしい! 黙って食えー!」

「あはは、うん。美味しいよ咲」

「~!」

「ふふっ……本当に仲が良いのね。羨ましいわ」

「リーシャの姉御はキョウダイいないんスよね?」

「ええ。一人っ子だし、両親ももういないから……」

「「あ……」」


 リーシャさんの両親は、幼い頃に魔族に殺されている。

 それからある人に拾われ、剣術の指南を受け、免許皆伝になってから藤堂先生にその人の伝手で紹介され、出会うんだよね。

 俺は知っていたけれど、咲と拓が知るはずもないもんね……。


「気にしないで。幼い頃の事だから、もう気持ちに折り合いはついてるの」


 そう笑うリーシャさんだったけれど、その笑みには少し陰りというか、寂しさを感じられた。


「あ、あの! リーシャさんさえ良ければ、私、妹として扱って貰っても良いですよ! むしろそうして欲しいっていうか!」

「俺も俺も! リーシャの姉御さえ良ければ!」

「え、ええ!? その、榊く……じゃなかった、玲央君がいるでしょう?」

「おにいはおにいなんで。おねえが欲しいのー!」

「そうそう! 兄貴は兄貴だし、まぁ俺には姉貴がすでにいるけど……もう一人くらいいても良いかなって!」


 おい拓、それは無理がある。

 というか二人ともどうしたんだ?

 普段、こんな事を言うような子達じゃないんだけどな。


「そ、そう? でも、そんなの厚かましくないかしら……?」

「「全然!」」

「……ねぇ玲央君、この二人はいつもこんなに押しが強いの?」

「いえ、本当にすみません。いつもはこんな事本当にないんですけど……ご迷惑でしょうし、断って頂いて構いませんからね……」

「迷惑じゃ、ないわ」

「え?」

「私ね、いつも一人だった。軍部でも腫物を扱うようにされていたし、それでも近づいてくる人は大体下種な人だったし」

「「「……」」」


 リーシャさんは強いだけでなく、この美貌だ。

 戦う姿だって目を引く。

 そんなリーシャさんに、邪な思いを抱いて近寄る人はやはりいるんだろう。


「藤堂先生だけが、私を大切にしてくれたの。だから、藤堂先生が行く戦場には、無理を言って一緒についていった。それが、あんな事になるなんて思っていなかった……」

「「「……」」」


 咲と拓には、何の事か分からないだろう。

 それでも、黙って聞いていてくれている。

 質問をしたいのをグッとこらえて。

 踏み込み過ぎないように……本当に、心遣いの出来る二人だ。

 心の中で花丸をあげよう。


「だからね、そう言ってもらえて、嬉しいの。こんな姉だけど、良いかしら?」

「「勿論!!」」

「そう、ありがとう」


 二人が笑顔でそう言うと、今度は陰りのない、自然な笑顔でリーシャさんも言った。

 これでリーシャさんの心が少しでも救われるなら……良かった。

 でも羨ましいな……リーシャさんが姉とか、どんな生き方したらそんな幸福を得られるの?

 あ、良い子達だからか、納得。


「というわけで、正式な家族となったおねえにはこれを渡しておきます」

「あの、どう見てもこれ、鍵なのだけど?」

「鍵だな。姉御には必要だろ?」

「……あの、玲央君?」

「あー……他の人なら絶対阻止しますけど。リーシャさんなら別に」

「ええ!?」


 烈火達でも阻止しないけどね俺は。

 主人公達が俺の家で何か盗むなんて思わないし。

 そんな信用も無くて推してられるかっ!


「あの、私が言うのもなんだけど、おかしいと思うわよ?」

「「「?」」」

「うん、分かってないわねこの顔は。私がなんとかしないと……」


 何故かリーシャさんの目が決意を秘めたように見える。

 そうして朝食を済ませて、出かける事に。

 

「それで、どこのスマホショップに行くの?」

「あ、アイオンモールにあるスマホショップに行こうかなと。ついでに食材とかも買いたいんです」

「成程、それならアイオンモールが便利ね。大型ショッピングセンターだものね」

「ちなみにおねえはどんなスマホなのー?」

「私はこれ」

「わー! 最新のGALAXIAN(ギャラクシアン)7だ! 良いなー! すっごいたっかいやつ!」

「ふふ。性能を重視したかったから、奮発しちゃった。お金は軍部からいっぱい支給されてるから、余ってるの」


 一度は言ってみたい台詞がポンポンと出てくる。

 スマホの機種なんてさっぱりなので、会話に入って行けずに聞いてるだけである。


「なぁ兄貴、スマホってそんな機種あんの?」


 どうやら拓も知らないようで、俺に聞いてきた。

 すまない拓、このゲームの情報はWikipediaを自称するほどに詳しいのだけど、スマホについてはさっぱりなんだ。

 でも見栄を張っちゃう、お兄ちゃんだもん。


「あ、ああ。GALAXIAN7だけじゃなくて、他にも沢山あるぞ。GALAXIANだけでも過去の6以下があるわけだし」

「ふふ、流石玲央君は知ってるわよね」

「へぇ、おにい興味なさそうだったのにいがーい」

「流石兄貴だなっ!」


 うう、このしったかぶりが心に刺さる。

 本当は全然知りませんごめんなさい。

 7があったら、普通6以下あるもんね。

 なんとなく正しそうな事言っただけなんだ、見栄を張ると碌なことないね、気を付けよう。


 それからアイオンモールに到着し、人でごった返している中スマホショップへとたどり着いた。


「おわー、目がチカチカするぜ兄貴」

「はは。明るいよな。それに予想以上にいっぱい並んでるな……」


 何種類あるんだこれは。

 一つづつ機能の紹介文があるけど、読んでもさっぱり分からない。

 電池持ちが良いとあったのを、手に取ってみる。


「おにいはそれにするの?」

「あー、いや電池持ちが良いってあったから。特にこだわりなんてないからさ、なら電池が長く続くのが良いかなって思ってさ」

「なるほどー。私はゲームしたいから、動作が軽いのが良いかなー。電池は最悪充電しっぱで良いし」

「俺はなんでも良いかな。どうせあんま触ることなさそうなんだよなー」

「拓、それは甘いぞ。スマホがあれば、知りたい事を検索ですぐ調べられるんだ。そうするとだな、自然とスマホを触ってる時間が長くなるんだ」

「な、成程。なら兄貴と同じで電池持ちが良いのを選んだ方が良さそうだな」


 うーん、素直。SNSとか始めたら、本当に一日スマホを触りっぱなしで終わる人もいるくらいだからなぁ。


「玲央君、まるでスマホを使った事があるみたいね?」


 ドキーン! 実はそうなんですけども!


「なんて、ね。"魔眼"の事も、咲ちゃんや拓君の事も聞いてるから知ってるわ。流石情報通ね」

「は、はは」


 苦笑いするしかない。

 店内をウロウロしながら、どれが良いか選んでいると、店内が急にざわざわとし出した。

 何事だろうと店の入り口に目をやると、そこには西園寺さんが黒い服を着たボディーガードを数名引き連れて来ていた。


「あら、玲央さんにリーシャさん?」

「「!!」」


 そして、西園寺さんもこちらを見つけたのか、笑顔で挨拶をしてきたではないか。

 そのままこちらへと近づいてきたので、俺達も向かう。


「おはようございます玲央さん、リーシャさん。それと……」

「あ、榊 咲です」

「榊 拓っす」

「成程、玲央さんの妹さんと弟さんですね。私は西園寺 紅葉と申します。お兄さんとはヴァルハラで仲良くさせて頂いています」

「(おわぁ! 拓、おねえに強敵が!?)」

「(待て待て姉貴! まだ敵と決まったわけじゃない! ってか兄貴はどれだけ美人と知り合ってんだよ!)」

「おはようございます西園寺さん。西園寺さんもスマホを買いに……?」

「いえいえ。私が今日来たのは……」

「ようこそいらっしゃいました! 西園寺様っ!」


 西園寺さんが言葉を言い切る前に、店の奥から扉がバンと開き……多分店長かな? が、こちらへとやってきた。


「どうぞこちらへ! 奥で準備をしております!」

「ええ、ありがとうございます。けれど、少しお待ち頂けますか?」

「畏まりました!」


 西園寺さんにそう言われたこの人は、一歩下がって礼をしたまま固まっている。


「ふふ、すみません。この店舗が西園寺グループの物なのです。玲央さん達は、スマートフォンのご契約に?」

「あ、はい。今日は俺と家族の分を買いに来ました」

「そうだったんですね。では……玉木、最新の物をこの方達へ用意なさい」

「畏まりましたっ! 少々お待ちを!」


 そう言って店の奥へと駆けて行く店長っぽい人(玉木さん?)。

 突然の事に固まってしまったけれど、いやいやいや!


「あの、西園寺さん!?」

「玲央さんにリーシャさんは、ヴァルハラの特待生に等しいです。なら、これくらいの支援は当然の事ですよ」


 当然の事ではないですが!?

 しかも最新鋭のスマホって、ン十万しますよね!?


「書類も不要です。こちらで手配させておきます。その代わりと言ってはなんですが……」

「……」


 ゴクリと、唾を飲み込んでしまう。

 無理難題を言われたらどうしよう。


「これからも、仲良くしてください。それでは、私は少し用事がありますのでこれで失礼致しますね。皆さん、後は任せますよ。くれぐれも失礼のないように」

「「「「「はいっ! 西園寺様!」」」」」


 店員さんがいっせいに頭を下げる。

 超巨大企業、西園寺グループの次期当主だもんなぁ……。

 それから、超VIP待遇のような扱いを受けた。

 待ち時間に飲み物は配られるし、なんというか根が庶民の俺はいたたまれない時間が続いた。


 そうして無事スマホの契約が出来た。

 なんと、料金が無料である。

 本体無料、月額使用料無料、どれだけ使っても無料。

 良いの? これ。

 両親が見たら飛んで驚くよ?


「ふふ、良かったわね玲央君」


 リーシャさんもこれを当たり前と考えているあたり、天上人の価値観って凄いと思いました。

 咲と拓は嬉しさの方が勝っているようで、その場で開封して色々と弄っていた。


「おにい! 連絡先登録しよっ! おねえも!」

「あ、ずりぃぞ姉貴! 俺も俺も! ってやり方が分っかんねぇ!?」

「ははっ。よし、それじゃやってこうか」

「最初は戸惑うわよね。少しずつ覚えていきましょうね」


 俺は拓を、リーシャさんは咲を担当する形で、連絡先の登録を行っていくのだった。

お読み頂きありがとうございます!


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家族を失った少女が若くして頭角を現して――となると接し方難しいわな……同年代がいても実力の高さから気後れしちゃいそうだし  援護射撃はするし身内認定しているから無自覚の援護射撃も効果は抜群だ!
弟妹に好かれてる兄なだけで、主人公への好感度高いんですよね。ただのモブで本当に特技とかなくても、普通に周りから好かれるタイプなのでは?という推察ができる。
将来、完結したら弟妹視点で物語できそう 学園入学前の、それこそ幼い頃からの物語ができそうなくらい濃いことが起こってそう
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