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2話.モブの役割は忘れない

 入学式は何事もなく終わった。

 主人公グループに混ざったといっても、俺は本来モブであり、ゲームで主要人物にはなりえない存在だ。

 体育館の入り口で割り振られたクラスと席順。

 その答えが教えてくれる。


 主人公である(とどろき)烈火(れっか)はA組。

 そのライバルである氷河(ひょうが) 美樹也(みきや)がその隣のクラスであるB組。

 ヒロインの西園寺(さいえんじ) 紅葉(もみじ)は主人公である轟と同じA組。

 主人公の幼馴染で、主人公に惚れてるけどそれを悟られないように頑張る健気な金髪ツインテールこと、百目鬼(どうめき) 美鈴(みすず)はB組。


 百目鬼は主人公と同じクラスじゃない事に腹を立てるけど、それなら自分から行けば良いと主人公のクラスに休憩時間がくる毎に来るのだ。

 周りからはその態度も含めてバレバレなのだが、主人公だけは鈍感というか、もう王道だけど気付かない。

 でもそこが良い。この主人公、見た目とその性格の良さもあってモテるのだが、男にも人気があるのはその性格故。

 誰にでも気さくで、距離感が無い。

 人によっては腹が立つかもしれない。けど底抜けに明るい轟は、その警戒心すらも解かせて仲良くなってしまうのだ。

 長短一体とでも言おうか。何度でも言おう、そこが良い、推せる。


 ライバルである氷河とは喧嘩もするんだけど、お互いがお互いの強さを認めていて、背中を預けあう展開が多い。

 世の女性陣は、二人で背中合わせに立って剣を構えるイラストつきシーンで歓声を上げたそうな。

 まぁ俺も、リアルでうおぉぉぉぉ!! とか言っちゃったけど。


 西園寺ルートに行くと、百目鬼は潔く身を引いてしまう。

 勝ち目がないから、じゃない。

 轟が好きになったのなら、と身を引くのだ。

 西園寺ルートなのに、百目鬼の好感度がユーザーは上がってしまう謎のルートなんだけど、しっかりと西園寺も闇を抱えていたせいで泣かせてくる。

 彼女が頑なに名前を呼ばせないのには、意味があったのだ。

 それは物語後半で西園寺のルートだけで明かされる。

 彼女の魂は魔王と繋がっている事もあって、涙無しには語れない。


 もう主人公勢はどのルートもいろんな意味で熱くて、泣かせてきて、誰でも推せるんだよ!

 というかゲームをやっている時は轟視点がほぼだったから、主人公が推しに追加された感じだろうか。

 俺は自分を主人公に投影して物語を楽しむ派ではなかったので、主人公自身が推しの一人だ。


 っと、つい熱く語ってしまったけれど、クラスが俺はE組だった。

 モブだから仕方ないね。

 一年はAからFまでの6クラスある。

 これからクラス対抗戦とか、個人戦とか色々とイベントもあるんだけど、サブキャラクターも強いキャラクターが大勢居る為、主人公勢の居るクラスが楽勝とはならないのが味噌だね。

 ちなみに、A組が一番強いからA組とかそんな事はない。

 完全にランダムで振り分けられている。建前上は。


 俺が居るEクラスにも、最強のサブキャラクターとまで言われた剣聖、リーシャ・エーデルハイトをはじめ、ユーザー使用率の高いキャラクターが幾人か居るのを確認した。

 出席番号6番の俺は一番後ろのドアの傍である。

 サ行って大体これくらいの場所になるよね。


 まぁそういうわけで、俺は主人公達とは離れたし、これからはモブとして陰ながら見守り、モブモブしていこう、と心に再確認していたところだったんだけど。


「マジかよ、美鈴の言ってた身を挺して庇った奴が玲央だったのか! かぁー! やっぱすげぇよ玲央! 中々できる事じゃねぇ!」

「本当にね。感謝してるんだから玲央!」

「フ……俺の魔力の流れすら見極められる玲央だからな、当然だ」

「あら、氷河君も玲央さんの事は高く評価しているんですね?」

「っ! ま、まぁ一応はな」

「おお! 美樹也が照れてんぞ!?」

「本当だ! めっずらしぃ!?」

「煩いぞお前達!!」


 休憩時間が来る度に、俺の席に集まってくるのなんで?

 こんなの予想外なんですけどぉ!?

 俺の心臓の音が耳に聞こえてきてまったく話に集中できない。

 ドクンドクンドクンって静かな部屋ですら普段聞こえないのに、やけに大きく聞こえるのなんでぇ。


「ん? 玲央、顔赤いよ? 大丈夫?」

「んひっ!?」


 突然、百目鬼がおでこに手を当ててきたので変な声が出てしまった、乙女か俺はっ!


「うわあっつ! 滅茶苦茶熱いよ玲央!? 大丈夫!?」

「もしもし私です。至急救急車を出しなさい」

「おいマジかよ!? 美樹也、氷出せるか!?」

「任せろ。『ライトアイス』玲央、これを額に当てろ!」

「あ、ありがとう、うぉっ、ひやっとするっ! それと西園寺さん救急車は待って! 大丈夫だからっ!」

「そ、そうですか? でも一度診てもらった方が……私のお抱えですので、腕は確かですよ?」

「だ、大丈夫です、本当に!」

「そこまで仰るのでしたら……」


 いや皆なんでこんなにモブの俺に優しいの?

 おかしくない?

 俺前世でどんな徳を積んだの?


「幸せ過ぎて倒れそう……」

「何言ってんだ玲央?」

「フ……」

「あはは! 玲央変な顔になってるよ!」

「やはり医者に……」

「ちょぉっと待って! 本当に医者は勘弁してくださいっ……!」


 幸せ過ぎてモブである事を忘れそうになるけど、忘れちゃいけない。

 この学校は対魔族学校であり、戦いの学校で……

 一モブである俺に、主人公達と一緒に戦える力なんてない事を自覚して行動しないと。

いいね、ブックマーク、評価、感想全てが創作の力になりますので、良ければお願いします。


2025年8月4日追記

※名前の変更

リーシャ・バレンタイン→リーシャ・エーデルハイト

詳しくは活動報告へ書かせて頂きましたので、気になる方はそちらでお願い致します。

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― 新着の感想 ―
>これからはモブとして草葉の陰からモブモブしていこう、  ◇ ◇ ◇ 『草葉の陰から』は『死後も〜』の意味では?
主人公ズのブーストアップが止まってくれないw どこまで続くこの騒ぎw
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