82話.魔将ヴォルフガング復活
クレハさんからマカロンが受け取ったヴォルフガングの遺体。
いや、遺体だったもの。
魔法陣の上には、透き通るように青い、オーブのような物が浮かんでいた。
そしてそのオーブから、魔将ヴォルフガングの力と言うのだろうか、魔力のソレを感じる。
基本、魔力の波長は十人十色であり、同じ波長は存在しない為、一度感じた魔力の波長であれば違いが分かるのだ。
アレは恐らく、ヴォルフガングのコアとでも言う物だろうと察する。
「フ……一目で分かるか、玲央」
「!!」
「さて、お前達の集めてくれた素材を合成する。集え……!」
マカロンの両手から、神秘的な光が発せられる。
魔王というより、もはや女神のように見える。
その美しい光景をただ見ていると、素材が集まり人の形を取りだす。
「仕上げだ。混ざれ、その魂を適合させよ……!」
「くっ……!」
凄まじい光が起こり、目を開けていられなくなる。
「……ヴォルフガング卿よ。余が分かるか?」
「!! こ、これはっ! ニグルメウム様っ……!」
「うむ、記憶は定着したようだな」
「この肉体は、一体……俺は、死んだはずでは……」
人間の姿をしたヴォルフガングは、マカロンを見た後に俺を見て目を見開く。
「そうだ。俺はお前に敗れたのだったな、榊 玲央」
「え?」
「みなまで言うな。あの戦い、全てお前の掌の上だったのだろう? 敵ながら素晴らしい采配だった。武人として戦い、敗れはしたが……満足して逝った。同胞達には、悪い事をしたがな」
「ヴォルフガング、さん……」
「その事について、ヴォルフガング卿に話さねばならない事があるのだ」
「畏まりました。なんなりと」
マカロンの前に跪くヴォルフガングさん。
そうして、マカロンは自身に起こっていた事、そしてこの世界について話をした。
静かに聞いていたヴォルフガングさんは、カタカタと体を震わせる。
「ゆる、せぬ……! 敬愛する魔王様を……そして、我が同胞達の命を、なんだと思っているのだっ……!」
そして、凄まじい怒りを見せた。
……うん、これを見ただけで、俺はヴォルフガングさんを信用できる。
ゲームでも、まっすぐな武人で好印象の敵だったんだ。
そして、その強さも折り紙付き。
「鎮めよ、ヴォルフガング卿」
「ハッ! 申し訳ありませぬニグルメウム様」
マカロンの一言で、怒りをすぐに消し去った。
凄い精神力だと思う。
「それで、だ。卿にもう一度……いや、真に、余らの仲間になって貰いたい。勿論、無理強いはしない。卿は口が堅い故、このまま好きに生きる事にしようとも、余はそれを止めぬ」
「ありがたきお言葉、身に余る光栄でございますニグルメウム様。我が命、元よりニグルメウム様に捧げております。この命、好きにお使いください……!」
「うむ。ありがとうヴォルフガング卿」
良かった。話はまとまったようだ。
「それで、お主の新たな肉体は、卿には悪いが人間にさせて貰った。そのままではバレる可能性がある故な」
「そうでございましたか。深慮遠謀の事なれば、我に否はありませぬ。ただ……可能であれば、我が耳だけは……狼のモノに出来ないでしょうか?」
「ふむ……それくらいならば可能だが……玲央、大丈夫だと思うか?」
そこで俺に聞くのー!?
ああほら、なんかヴォルフガングさんが困った犬さんのようにクゥーンと鳴いてるような幻想が見えるんですけどぉ!?
「あ、あー。うん、そうだね。鼻や耳だけを獣化するなら、獣人族って事にしたら大丈夫なんじゃないかな?」
「成程な。では、種族は獣人族にして、名前も変えねばな」
「僭越ながらニグルメウム様、ニグルメウム様より賜りし名を変えるのは……」
「ヴォルフはどうだ?」
まんまですけどぉ!?
「ハッ! 我はヴォルフ! これよりニグルメウム様の忠実な部下として、働かせていただきます!」
受け入れるの速いんですけど!?
俺の心が突っ込みだらけになるのでやめてほしい!
「くふふ☆ ヴォーちゃんね☆」
「クレハ卿、ちゃんはやめてくれ……」
「えー☆ ヴォーちゃん可愛いじゃん☆」
「我はどちらかと言うと爪がカッコ良いの方が良いのだが……」
「もう爪ないじゃーん☆」
「ハゥア!?」
orzという形で床に倒れるヴォルフさん。
あの、俺の印象をコロコロ変えるのそろそろ止めて頂いても良いですか。
情緒がしんどいんですけど!
「分かった分かった。以前の爪と耳を残せば良いんだな?」
「ニグルメウム様!! ありがたき幸せっ!!」
もうマカロンが妥協してるのに笑うしかない。
「おぉ……! 我の耳、我の爪……!」
耳はもう狼というか、犬耳のように見えるけど……気にしちゃいけないかな。
爪は伸縮可能のようで、伸ばしたり縮めたりしている。
恐らく 肉体的強さは敵の時と変わらないのだろう。
むしろ、魔力は増大している気がする。
「玲央殿」
「!! ヴォルフ、さん」
「ハハッ! ヴォルフでよい」
「それじゃ、俺も玲央で」
「!! 分かった。玲央、これからよろしく頼む」
「うん、よろしくヴォルフ」
俺達に頼もしい味方が増えたのだった。
お読み頂きありがとうございますー。




