56話.隣国の英雄②
「いやー! 助かったよ榊! お陰で時間がかなり余った!」
「そうね……私達だけだったら、まだ半分も回れてなかったわね。榊君に会えたのはついてたわね」
「俺の不運も偶には役に立つってこったな!」
「たまたまでしょ、調子に乗るんじゃないわよヘイム」
「へいへい、厳しいなアスカは」
「ヘイムの不運にいつもいつもいつもいつも付き合わされてる私には言う権利があるでしょ」
「すんません……」
この二人はとても仲が良いな。
腹を割って話せるというか、言いたい事を言い合える仲というか。
「二人は同じ学校に通ってるんだよね?」
「ああ、そうだぜ! 北の隣国『エリュシオン』にある『フォールクヴァング』に通ってる。つってもまだ二年だけどな!」
「私も同じくよ。『ヴァルハラ』が魔族達との最前線の位置にあるけれど、それは『フォールクヴァング』や『グリームヘイム』も同じ。お互いに守る位置が違うから会う事は難しいけれど……こうして出会えて嬉しいわ」
二人は二年生だったのか。という事は先輩か。
「そうですね。俺も同じ立場の人間として、先輩達に会えて嬉しいです」
「お? って事は新入生か。でもよ、気にしなくて良いぜ? さっきまでの話し方で良いさ」
「そうね。社会に出れば、一年も二年も誤差みたいなものでしょ。敬意を持たれるのは悪くないけれど、それは年齢ではなく、実力で持たれたいわ」
「……そっか。二人は凄く気持ちの良い性格をしてるね。俺はそういうの好きだよ」
「「!!」」
学校という小さな世界では、一年の差で先輩後輩になるけれど……社会に出れば、後から自分より年上の人が入社してくるなんてザラにある。
若い人の方が仕事が出来る人だって当然いるわけで、年功序列はもう古い考え方なのかもしれない。
それでも、やっぱり俺は年上の方には敬意を持ってしまうけれどね。
それ相応の経験をしてきているからだ。
「なんつーか、榊はよ、こう、ストレートだよな」
「?」
「おべっかで言ってるわけじゃないのも、なんとなく伝わってくるのよね。榊君って意外とプレイボーイだったりするのかしら?」
「プレ……!? 無い無い! それは無いよ!?」
「ははは! だよな、そんな気はするぜ!」
「ふふ! ごめんなさい、そうね」
二人とも気持ちの良い笑顔を見せてくれる。
他の学園の人達だけど、こんな人達が守ってくれているのなら、安心だな。
そんな会話をしている時だった。
丁度、結界を破り侵入してくる魔族を見つけた。
「中々強力な結界だが、俺様には通じねぇな」
「まぁうん、強い魔族程通さない結界だからね。弱いと通れるよ?」
「なにぃ!?」
「はは! 言うじゃねぇか榊!」
「ホントね。人間様の領域に、勝手に入ってきてんじゃないわよ?」
ヘイムさんは手にナックルガードを身に着けていて、アスカさんはレイピアだろうか。
細い剣を構える。
「たかが人間ごときが生意気な……! この俺様の前で、泣き喚けぇっ……!」
魔族がこちらへと突っ込んでくるが、
「甘ぇよっ!」
「ガッ!?」
「こっちへ飛ばしなさいヘイムッ!」
「はいよっ! おらよっ!」
「ゴフッ!?」
「死ねぇっ!」
「ガァァァァッ!? ばか、な……!」
またも鮮やかな連携である。
ヘイムさんの強烈なアッパーを喰らって脳震盪を起こしたであろう魔族は、そのまま蹴りが直撃してアスカさんの方へと飛ばされる。
飛んできた魔族をアスカさんは綺麗に微塵切りにし、消滅させた。
恐ろしく強い。手を貸す暇も無かった。
「いっちょあがりってな。しかし、住民達は手慣れてんだな」
「本当ね。流石に最前線にある都市って事かしら」
まぁ、うん。こんな事この辺りではしょっちゅう、とは言わないけれど、起こるので。
皆対応も慣れたものである。
後は、ヴァルハラの制服を俺が着ていたのも影響しているだろう。
なんとかしてくれる、そういう意識が住民の皆にはあるのだ。
それくらい、『ヴァルハラ』には国民の皆の期待が高く、関心が寄せられているんだ。
今回、俺なんにもしてないけどね。
「さて、別れる前にラーメンでも食いに行こうぜ! 奢るからよ!」
「良いわね。それぐらいは奢らせて頂戴榊君」
「気にしなくても良いのに」
「はは! 俺が食いたいんだよ榊!」
「そうそう、私も食べたいのよ。場所は地元の榊君が美味しい所教えて頂戴ね?」
「あはは。了解、それじゃごちそうになります」
「おう!」
「ええ」
こうして、偶然出会った英雄の二人と仲良くなれた休日の一日になった。
ちなみにラーメンはとても美味しかったです。
とんこつ味噌ラーメン、好きなんです。
お読み頂きありがとうございます。
今後この二人や他の学園が玲央達にどう関わってくるかは、学年対抗戦編の後になるかと思いますが、お楽しみにしていただければ嬉しいです。




