1話.モブとして生まれて
短編で書かせて頂いたお話の、連載版になります。
嬉しい事に続きを読んでみたいという声を頂けたので、書いてみようかなと思い、連載版を投稿する事にしました。毎日とかは無理なので、不定期になるかと思いますが、よろしくお願い致します。
第一話は短編そのままで、二話からが新しいお話になります。
「〇、〇〇だぁぁぁっ!!」
「あんな化け物に勝てるわけがねぇ! に、逃げろぉぉっ!!」
皆さんはこんな台詞を聞いた事があるだろうか。
俺はとてもよくあります。
物語の演出で敵を強大に見せる時にモブが言う言葉。
「あ、あいつはっ! 〇〇で最高ランクを叩き出したっていうあの!」
主人公達を目立たせるために、説明してくれるモブ。
本当は強いけど目立ちたくないからモブでいるとかではない、本当のモブ。
顔の描き分けすらなく、生徒A、B、Cで表されるモブ。
それが俺だ。
この世界は、俺が前世で100回以上周回してやり込んだゲーム、『ブレイブファンタジー』という作品の中だ。
それに気づけたのは、主人公達の映るゲーム画面の背景、それがそのまんまだったからというのもあるが……一番はそう。
このゲームのヒロイン、西園寺 紅葉さんが西園寺グループ総帥、西園寺 剛毅さんと一緒に雑誌に映っていたからだ。
名前だけですぐに分かったが、その容姿もほとんど変わっていなかった。
熱血漢溢れる赤髪主人公に、正統派美女の緑髪ヒロイン。
クールな青髪ライバルに、ツンデレ金髪ツインテール幼馴染美少女をメインキャラに取り揃えた王道ストーリー。
主要キャラを全員揃えると信号機になるので掲示板とかで結構弄られてたりも……おっとこれは余計な情報だな。
勿論サブキャラクターも大変魅力的で、2周目からは仲間に出来たりエンディングを迎えれるようになる。
そのエンディングの種類は実に100種類以上。
全部見るためには共通パートをスキップしながらでも数百時間は最低でも掛かるという。
それでも俺はこのゲームが大好きで、全てのエンディングを見た。
特に最後の大団円エンディングは、全てのルートでの記憶が蘇り、最初から絆が最高値という共通パートすらも変わるのがもう……ってこの話は置いておこう。
この大陸には人間が主に住んでいるが、もう一つの大陸から魔族が進攻してきており、それに対抗する為の戦士育成学校がこのゲームの舞台となっている。
モブに生まれた俺こと榊 玲央は、あと十日で学園に入学する事になる。
このゲームが大好きだった俺とて、一モブの生活など知りようもないわけで。
それでも、家族が居る。
両親に二つ下の妹と、更に一つ下の弟が。
こんなモブの俺でもちゃんと生活があった。
幸い、普通の家庭だった。
両親は普通に働いているし、妹は優しいし、弟は俺より逞しい。
幸せで順風満帆な生活を送れている。
だけど、せっかくこの大好きな世界に転生できたのだから、大好きな登場キャラクター達を一目見たいと思うのは、仕方のない事だと思うんだ。
俺はこのゲームを全制覇するくらいやり込んだ。
だからこそ、どこでどのタイミングでイベントが起こるかを知り尽くしている。
『ブレイブストーリー』のwikiペディアと呼んでくれても構わないくらいには。
ならば、行くしかあるまい。
勿論大前提だが、主人公達の邪魔なんてしない。
役割を奪ったりなんてもっての外。
俺がするのはただ一つ。
モブであるが故に、やれる事。
そう、主人公ヨイショと敵ヨイショである。
え? って思う人もいるかもしれない。
だけど思い出してほしい。
必ず、必ずいるのだ。
主人公の紹介、敵の紹介を言葉でするモブが。
それを全て俺がやればいい。
同じモブなのだから、俺が全部言っても問題あるまいて!
完璧な理論が完成してしまった。
クックックッ……おっといかん、主人公達を間近で見られると思うとつい邪な笑いが。抑えねば。いざゆかん、主人公達が起こすイベントへ!
「おにい、玄関で笑うのやめた方が良いよ……」
「あ、はい。ごめんよ咲」
「どっか行くの?」
「うん。ちょっと買い物に」
嘘ではない。この近くのスーパーで、強盗が出るのだ。
それを主人公が捕まえる最初の軽いイベントだ。
ここで、主人公は学園に入る前にヒロインと出会うのだ。
「あ、ならアイスクリーム買ってきてもらってもいい?」
「良いぞー。バニラモナカか?」
「ん、それで」
「了解。拓の分もついでに買っとくか」
「お願い。私は晩御飯作っておくね」
「カレーが良いな」
「またそんな時間が掛かるの注文するし……まぁ簡単だから良いけど」
ぶつくさと言いながら台所へと向かう咲。
我が家は両親の帰りがいつも遅い為、俺と咲、そして拓の三人で家事を持ち回りしている。
絵にかいたような平凡な家だけど、それが良い。
特別な何かなんて必要ない。
そう、思ってたんだけどなぁ。
イベントが起こるスーパーの前に着いた。
確かここの16時頃とテキストには書いてあった。
地文というやつだ。
ただ、流石に強盗の姿までは映ってなかったからなぁ。
事件が起こる事は知ってても、誰が起こすかまでは分から……ん、んん?
なんだ、あのあからさまに怪しい服装してる奴は。
昔の泥棒コスというか……皆アレを見てなんとも思わないのか?
しかし、通行人にアレを気にするような人は見かけない。
俺がおかしいだけなのだろうか? 多文化共生的な?
いや、今のところ怪しいのはアイツだけなんだから、しっかり見ておこう。
そうして待つ事少し、これまたあからさまにお金持ってそうな人がスーパーから出てきた。
高級そうな服装でプードル散歩しながらである。
その人に、最初に見つけたあからさまに怪しい奴が近づく。
俺は一挙手一投足を見逃さないように見つめる。
そして、カバンに手をかけた瞬間に、叫ぶ!
「ご、強盗だぁぁぁっ! あの緑色の風呂敷を被った黒マスクをして黒いサングラスをかけた男が、ご婦人のカバンをひったくって逃げたぞぉぉぉっ!」
モブらしく状況説明を大声でしてやった。
ちょっと叫ぶのが早かったらしく、泥棒が最初あたふたしてたけど、ちゃんと逃げ出した。
それを追う二人の後ろ姿を見て、俺は安心してスーパーへと入っていくのだった。
やっぱカッコいいんだよなぁ、主人公達は。
--主人公・轟烈火視点--
母から頼まれた買い物をしに、近くのスーパーへ寄った時だった。
なにやら異質な魔力を感じて周りを警戒していると、
「ご、強盗だぁぁぁっ! あの黒マスクをして黒いサングラスをかけた男が、ご婦人のカバンをひったくって逃げたぞぉぉぉっ!」
声が聞こえた方向を見ると、先ほどまでは確かに居なかった男が姿を現し、女性のカバンをひったくっていた所だった。
あいつ、俺よりも早く気づけたのか!
すげぇ奴だっ! っと、それよりも強盗野郎を捕まえねぇとなっ!
俺は足に身体強化の魔法をかけ、飛び出す。
「観念しろおらぁっ!」「観念しなさいなっ!」
「ごふえぇっ!! な、なんでバレたんだ……この風呂敷に身を包んでいれば、俺の姿は見えないはずなのに……」
後ろから飛び蹴りをかましたと思ったら、俺の横にもう一人居た。
あの声を聞いて同時に飛び出したのだろう。
目を引く緑色の美しい長髪に、整った輪郭。
モデルかと言わんばかりのスタイルに、思わず口笛を鳴らしそうになった。
西園寺グループ跡取りの、西園寺紅葉か。
「やるな西園寺さん」
「ふふ、貴方こそ。噂はよく聞いているわ。東中の麒麟児と」
「やめてくれよ、西中の姫君」
「……」
「……」
「ははっ!」「ふふっ!」
互いに中学の話は知っているようだが、実際に話したのは今日が始めてだ。
少し話しただけで、油断ならない奴なのが分かる。
っと、今なそれよりも気になる奴が居たんだ!
「……いない、わね」
「いねぇ、な。……西園寺さんも、もしかして同じ奴を探してんのか?」
「轟君が探している方が、最初に叫んだ方であるなら、肯定するわ」
「なら同じだ。すげぇよな、俺は最初から警戒してたんだぜ? なのに俺より早く見つけて、後を俺に任せた」
「ええ、同意するわ。私もこの辺りを偶々通ったのだけれど……異質な魔力を感じて、警戒していたの。その私より早く、異常を察知するなんて……並大抵の者ではないわ」
「走るときにチラッと見たんだけどよ、あれは南中の制服だった。もし高校がヴァルハラに行くなら、そこで会えるかもしんねぇな」
「南中の……。東中の轟君に百目鬼さん、北中の氷河君と名を聞くけれど……確か南中では名前を聞いた人が居なかったわね。もしかして、意図的に実力を隠しているのかしら……?」
「かもしんねぇ。へへっ、ヴァルハラに行く楽しみが増えたぜ!」
「ふふ、そうね。っと、御爺様から連絡だわ。それじゃ、また会いましょう轟君」
「おう。西園寺さんが良けりゃ、俺の事は烈火と呼んでくれ!」
「では、そうさせてもらいましょう。私の名は、まだ呼ばせないけれどね?」
そう言って西園寺さんは去って行った。
良い女だな、そう思った。
でもそれ以上に……あの男が気になる。
今度会った時は、俺から話に行ってみるか!
--主人公・轟烈火視点・了--
実際のゲームでは、強盗にバッグを盗まれて叫んだご婦人の言葉の後にその付近に居たモブが叫んだ為、主人公達はモブを気にしなかった。
しかし今回、モブはご婦人が叫ぶ前に状況説明をしてしまった事により、本編がほんの少し変わり始めている事に玲央は気付いていない。
--モブ・榊 玲央視点--
無事家に帰ってきた俺は、アイスクリームを冷凍庫にしまって部屋に戻る。
ああ、後ろ姿だったけど、見た。
主人公である轟烈火と、西園寺紅葉……生はやっぱり違う。
あのままずっと見ていたら、俺のチキンハートは暴発してしまっただろう。
時間が経った今ですら、俺は興奮が収まらないというのに。
このゲームは学園での紹介の前に、各主人公達のイベントがある。
だからこそ、その全イベントをコンプするつもりの俺は、明日もイベント場に直行するつもりだ。
明日は午前中に小さな女の子が誘拐されそうになるのを、主人公のライバルである氷河 美樹也が助けるのだ。
その名の通り氷を操る氷河は、誘拐犯を氷漬けにする。
モブはその姿を見て、『流石は北中の氷王、氷河 美樹也だっ……!』と言って、ヨイショするのだ。
まぁ実際に凄いので、俺はヨイショだとは思わないけど。
なので事件当日に、俺はゲームのモブよりも詳しく説明してしまった。
「流石は北中の氷王とまで呼ばれるようになった、氷河 美樹也! 相手の命を奪わないように局所を凍らせて無効化するコントロールは見事という外ない!」
「「「おお~!!」」」
他の方達も感心の声が上がる。
うんうん、やっぱり凄さは伝わってこそだよね!
難しすぎる事は一般の人には分からないし伝わらない。
それを分かりやすく伝える事で、本人の凄さをアピールするのだ!
それがモブの役割なのだっ!
「おい」
「……え? あ、はいっ!?」
そんな事を考えていた間に、今のヒーローに声を掛けられた。
待って待って心臓が煩い!
「……よく分かったな。お前の目には全身の氷だけでなく、他の部分の温度差も見えているのだろう。お前の名は?」
「さ、榊 玲央です」
「榊、玲央か。その名、覚えておこう」
そう言って、物語のヒーローそのままに去って行く。
その後姿を見ている俺は、さながらヒーローに恋する乙女のように顔を真っ赤にして……ってなんでじゃーい!
一人でノリ突っ込みするところだったわ!
なんでだ、モブらしくモブ通りにヨイショしてただけなのに、名前を憶えられてしまったぞ!? 超うれしいんだが?
いやそうじゃないだろ!
うぅむ……まぁ話の流れは変わらないだろうし、モブらしくヨイショは続けていこう。
モブCくらいだったのが、よく出てくるモブAくらいに昇格したかもしれない程度に思っておくか。
そうして次のイベント。
主人公の幼馴染で、主人公に惚れてるけどそれを悟られないように頑張る健気な金髪ツインテールこと、百目鬼 美鈴が活躍する。
最初にも言ったが、この世界は魔族との交戦状態にある。
当然、魔族が入り込み悪さをする事が多いというか、そんなイベントが大半を占める。
そんな中の一つで、デパートを魔族達が襲う。
狙いはデパートに秘密裏に密輸された宝石。
市場価値で数千億もするらしい。
今回、その宝石を魔族が取ろうとするのを、百目鬼が防ぐというシナリオだ。
モブは何をするのかというと、百目鬼が油断した時に、攻撃を受けそうになるのをモブが代わりに受けるのだ。
なんという主人公ムーブ。
それ轟がやれよと掲示板でも多くの突っ込みを獲得した名シーンならぬ迷シーンである。
「くっ、魔力がっ……しまっ!?」
「百目鬼さんっ! 危ないっ!」
「!? あ、貴方……! この、消えろぉぉぉっ!」
周りに居た魔族達が一撃で消える。
自分を庇った男へと駆け寄る美鈴であったが、その男はもうこと切れていた。
「っ……。名前も知らない貴方だけど、私を守ろうとしてくれた気持ちは忘れない。この恩は、私が魔族を倒す事によって返させてもらうからっ! はぁぁぁぁっ!!」
そう言って残りの魔族に突っ込んでいく百目鬼の姿は、見ている者の心を掴んで離さなかった。
うん、この通りに行動すると、俺死んじゃうわけだから。
ちゃんと対策をしていきますとも。
この世界はゲームの世界。
なら、ゲーム時代にあったアイテムもそのままあるだろうと、Amuronをチェック。
定価1000円で売ってた、やっすい!
迷わず購入したこのアイテムは、身代わりの木偶人形。
五寸釘に使われるような玩具だとこの世界では認識されている為、この価格。
これをそのまま使うなんてとんでもないっ!!
実はこれ、二つでセットの代物。
一つを家に置いておく事で、持ち運んでいる間に命を奪われるダメージを受けても、木偶人形が身代わりになってくれる優れものなのだ。
ゲーム時代では倉庫にしまっておいて、持ち物でも持っておくってのはセオリーだった。
ゲームでは死んでも生き返るけど、この世界がリアルである以上、そうはならないだろうから。
実際、主人公グループで死者蘇生の魔法を使える人は居ないし。
Amuronは注文したら各家庭に支給されている箱内に即届くので、安心安全。
間に運送業者を挟まないので、値段もお手軽なのが売りだ。ただし、大きな家電とかは買えないけれど。
というわけで、服の中に木偶人形を仕舞って、いざ現場へ。
予定調和というか、魔族が襲いかかっている。
俺は来るのを知っていた事もあって、宝石のある場所に一番近い階層で待っていた。
現場が混乱している隙をついて、宝石のある階にたどり着いた。
そこでは百目鬼が一生懸命魔族達を撃退していた。
周りにいる人達もいくらかは戦えるようで、皆奮戦している。
俺に戦う力なんてないので、固唾を飲んで見守っているだけなのが歯がゆい。
そして、ついにきた。
俺はすぐに走り出す。
周りの魔族達も、俺には気付いていなかったのが幸いした。
「くっ、魔力がっ……しまっ!?」
「百目鬼さんっ! 危ないっ! ぐはぁっ!?」
「!? あ、貴方……! この、消えろぉぉぉっ!」
超いてぇ……なんだこれ、死ぬかと思った。
背中なので見えないが、血がべっとりと流れてくる。
これが、ゲームとの違いか。
やられた部分が熱を伴って、ズキズキと痛む。
だけど……ちゃんとモブらしく、百目鬼を救う事が出来た。
後は、死んだふりっと。
「はぁっはぁっ。貴方、だいじょ……っ……。名前も知らない貴方だけど、私を守ろうとしてくれた気持ちは忘れない。この恩は、私が魔族を倒す事によって返させてもらうからっ! はぁぁぁぁっ!!」
俺は今、感動で胸がいっぱいです。
百目鬼が、憧れの人が、俺の為に怒ってくれている。
それは俺でなくても、怒ってくれたのだろうけど。
それでも今は、俺の為に怒ってくれたんだ。
この気持ちを胸に秘めたまま、俺はそっとその場を離れる。
後は、任せておいて大丈夫だろう。
「ふぅ……終わったわね。そうだ、あの人を弔ってあげないと。私を命がけで守ってくれたんだから。……生きててくれたら、仲良くなれただろうに……って、あれ? 確か、ここ、だったわよね? もしかして、生きてる……?」
家に帰った俺は、咲と拓に詰めよられる事になった。
「おにぃ!? なんで血まみれなの!? どうしてこんな事になってんの!?」
「兄貴っ! 教えろよ兄貴、兄貴をこうした奴の名前を! 俺が兄貴の味わった痛みを数倍にして返してきてやっからよぉっ……!!」
「お、落ち着け咲、拓。これには深い事情があってだな。とりあえず、ポーション頂戴?」
「もぅ、落ち着けるかばかおにぃ!!」
「俺が取ってくるから、じっとしてろよ兄貴!」
ああ、こうなる事を予測してなかった俺の落ち度だな。
まぁポーションで傷口は大体治るだろうし。
とはいえしばらくは安静にしないとか。
入学前に起こるイベントは百目鬼のが最後だったのが不幸中の幸いか。
そうして入学式。
今日は午前だけで終わる日だけど、入学式はゲーム本編開始なのだ!
各キャラクターの紹介が沢山のモブにとってはメインイベントとも言えよう!
というわけで、俺は誰よりも早く校門へと行き、皆の目に見えないところを探して待機する。
ああ、ここがゲーム本編の舞台。
感動で胸がいっぱいだ。
胸がどきどきするのを抑えられない。
そうして待つ事少し、俺のようなモブ達がたくさん登校してきたあたりで、歓声が起こる。
なんと、四人が偶然一緒に登校してきたのだっ!
これは予想外である。
本編は本来、一人一人登校してくる。
それに対して、モブが説明していくのだ。
俺はそれをしようと待ち構えていたのに、出鼻を挫かれてしまった形だ。
「お、見っけた!」
「「「!!」」」
え? 歓声が起きた話題の四人が、一斉に俺の方を向いた。
何事!?
「やはりお前もこの学校だったか、榊、玲央」
「貴方、探したんだからね! 私の命を救ってくれたのに、黙って居なくなるなんて!」
「なんだよ美樹也、知り合いだったのかよ!? あ、俺は轟 烈火! 少し前の泥棒覚えてるよな? あん時にさ、ただものじゃねぇと思ったんだよな!」
「ふふ、皆一気に詰め寄っては可哀そうよ。あ、私は西園寺 紅葉と申します。良ければ、貴方から自己紹介を頂いても?」
「え、あ、俺は榊 玲央っていいます、けど……」
え、何、何が起こってるの?
俺のチキンハートの容量が限界突破してるんですが!?
「玲央か! よろしくな! 俺の事は烈火で良いぜ!」
「む、ならば俺も美樹也で良い。俺も玲央と呼ばせて貰うからな」
「玲央って言うのね! 私は百目鬼 美鈴よ! 特別に美鈴って呼ぶ事を許してあげる!」
「玲央君ですね。私の事は、今は西園寺と。まずは皆さん、入学式へと参りましょう」
「お、そうだな! 行こうぜ皆!」
そうして轟、氷河、西園寺、百目鬼の四人が揃って体育館へと足を向ける。
俺の大好きな主人公グループが、揃って今、目の前にいる。
こんな幸福があるだろうか、いやない。
「おいどうした玲央? 早く行こうぜ!」
立ち止まっていた俺を、皆が後ろを向いて立ち止まって見ていた。
「い、今行くよ!」
モブの俺が主人公グループに入ってしまった件について。
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