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七 シエナ国の荒廃化

 どうやら、冒険者ギルドや商業ギルドを通り過ぎて、ここからは庶民の住むところだった。


 ところが突然街並みが途切れたかと思うほど荒んでいた。


「これはっ……」


 スラム街など見たことなかったので分らないけれど壁や屋根は崩れ落ち、酷い有り様だった。


「ああ、アゼリア嬢は見たことなかったか、これが今のシエナ国の現状だ。裕福なのは貴族と豪商のみだ」


「それにしても酷すぎます。こんな、普通の庶民は……」


「もはやいない。居るのは飢えた民衆だけだ」


「そんな……」


 だったら、そう、前の世界で習った革命とか起きるのでは?


「レイノルド様っ……」


 私がそう言ってレイノルド様を見遣った。


「分かってる」


 とだけ返ってきた。その表情は苦渋に満ちていた。


「それにここはまだましな方だ……。それに王都周辺は古の結界が張られている。王国に悪意を持つものは入ることはできない。だから他国のような検問所もろくにない。まあ、そのためこうして逃げ出すことも簡単にできる」


 そう言うとレイノルド様は目を閉じた。


「そんな。入都できないなんて……」


 私はただ流れ行く外の町並みを眺めていた。


 段々と荒廃は酷くなる。


 屋根も無くなり、壁も崩れ、外で座り込んでいる人達が瓦礫の隙間から見えた。


 思わず立ち上がりそうになった。


「アゼリア嬢! 危険だ。座りなさい。外から君の姿が見えて、この馬車は質素にしているが、暴徒と化した民衆を刺激するとどうなるか分らない」


「で、でも、レイノルド様……」


 この国がここまで酷いなんて……。


 そりゃ私に今、何ができると言われても、何もできないけれど、じっとしていられない。


「君が今まで何もしていないのに、今の君に何ができる?」


 冷たい声と厳しい視線だった。ストンと私は座り直した。


「そうですけど、知ってしまった以上……」


 震える声でレイノルド様に訴えた。


「今はまだ俺だって何もできやしない。だが確実に奴らは自分の首を締めている。民の居ない国など、いずれは……。だからアゼリア嬢は気に病むことはない」


「レイノルド様……」


 真摯な視線を受けて私は恥ずかしく思い俯いてしまった。


 高位貴族としての恩恵を受けて、今まで何も知らなかったのだ。


 それは確かに言われた通りだった。


 今は更に何にもないただの小娘。


 加護や魔法はあるけどまだ使い方は分らない。


 更に無一文だし。

お読みいただきありがとうございました。

ぜひ、いいね、評価、ブックマークをお願いいたします。



どうやら厨ニ病を発症したようです。

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