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34話 義両親の来訪

 

「君がリズリー嬢か! ミリアムの呪いを解いてくれて本当にありがとう……!」

「リズリーちゃん……! 貴方には何てお礼を言えば良いのかしら……! 私たちの娘を助けてくれて本当に……本当にありがとう……!!」

「お二人共、頭を上げてください……!」

「頼むから落ち着いてくれ、リズリーが困るだろ」

「そうよそうよ! 二人して頭が地面に着くくらい頭を下げたらお姉様が怖がってしまいますわっ!」


 ──ダイニングルームにて。


 ミリアムから、両親が会いたがっていると聞かされたリズリーは、それを快諾した。ルカからは「二人が帰ったらまた話そう」と言われ、それにも同意を示す。


 どうやらルカがミリアムが目覚めたことを両親に当てて手紙に書いたらしく、ミリアムに会いに来たのはもちろんのこと、解呪に協力したリズリーにもお礼を言いに来たらしい。


 ルカから「両親に挨拶をしなくていいと言ってあったのに済まない」という謝罪を受けたリズリーは、上手く婚約者としての演技ができるか不安だったものの、頑張ります! と意気込んだ。流石にこのタイミグで名ばかりの婚約であることを伝える勇気はなかったから。


 そして、急いでダイニングルームに向かったリズリーだったが、緊張するまもなく想像以上に感謝されて、正直驚いたというのが本音だった。


「解呪したのはルカ様ですから……! 私は少しお手伝いしただけで……!」

「そんなことはない。リズリーが居なければ、あの呪いは直ぐには解けなかった」

「ルカ様……っ! ここは話を合わせてください……!」


 ルカとそんなやり取りをしていると「謙虚で良い子なのね……!」やら「ルカのやつ、何て素晴らしいお嬢さんを捕まえて」なんて言葉を掛けられ、リズリーは居たたまれず居心地が悪かった。


 それからリズリーは改めてルカの両親に挨拶をすると、彼の母親に「体調はいかがですか……?」と問いかけた。


「ミリアムの姿を見たらもうすっかり! それに、ルカの婚約者の子がこんなに可愛くて聡明だなんて……! うふふっ! リズリーちゃん、ルカ共々末永くよろしくお願いしますね」

「……え、えっと、は、はい。こちらこそ、よろしくお願いします……」


 名ばかりの婚約者なんですが……とは言える空気ではなく、リズリーはそれから暫くの間ルカの両親から褒め殺しにあったのだった。



 その数時間後、ルカたち家族と夕飯を囲むことになったリズリーは、彼らと様々なことを話した。


 ミリアムを見て元気になったとはいえ、まだ静養が必要な妻の体調を気遣って、この屋敷には一週間程度の滞在とすること。

 領地に戻る際には、ミリアムもつれて行くということ。


 呪いのことは公にできないため、ミリアムは病気を患って、田舎で両親と療養しているという話になっているらしく、そのためにしばらくは田舎で暮らすのだとか。そこで今の貴族間の動きの把握したり、病気の設定を煮詰めたり、改めて淑女としての教育を受けたりするらしい。

 それから折を見て、再び社交界に出るのだそうだ。


「リズリーお姉様、もう少ししたらお別れですが、それまで沢山お話しましょうね……!」

「ミリアムちゃん……! もちろんよ……!」

「ふふっ、それなら私も仲間に入れてくださいなっ!」

「うふふ! お母様もすっかりお姉様のことが好きになったのね! そうだわ! 明日は皆でお庭でお茶会をしましょう? 楽しみですわ〜」


 頬が落ちるような美味しい料理を楽しみながら、女たちは話に花を咲かせる。


 その一方で、ルカとその父は。


「ルカ、絶対あんなに良い子を手放すなよ。お前は少し無愛想だが心根は優しくて良い男だ。だから心配はいらんと思うが──」

「……さっきから何回も同じこと言うなよ」


 幸せの絶頂で酒が進むのか、酔っ払って何度も何度も同じことを言ってくる父に、ルカは若干鬱陶しそうだ。


 けれど、気を抜いて酒に酔う父も、幸せそうに団欒する母もここ数年見ていなかったルカは、幸せそうに頬を綻ばせた。


「……リズリー、ありがとう」

「え? ルカ様申し訳ありません、何か仰いましたか?」

「いや、何も」



 ◇◇◇



 ナイトドレスに着替えたリズリーは、先程までの楽しい雰囲気から一転して、困惑と動揺にキョロキョロと目を泳がせていた。


「ルカ様……今更ですが……申し訳ありません」

「……いや、問題ない」


 それは、ルカの両親が来訪してきた日の夜──晩餐の最後の最後に、ミリアムが投下した爆弾発言が発端だった。


『実はお兄様とリズリーお姉様ってね、とーってもラブラブなんですよ! 今日はお父様たちがいるから、別々の部屋で寝るのかしら?』 

『『……!?』』

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