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ZEROミッシングリンクⅧ【8】ZERO MISSING LINK 8  作者: タイニ
第六十二章 あなたの中の命 
9/88

8 ジェイもサダルも愛が分からない




これで話しが終わりかと思いきや、我慢できなくなったファイはまた顔を上げてしまう。


「自分たち夫婦を差し置いて何を言っているんですか…。言い逃げですか……。」


「…!?」

ビビるのは妄想チーム、

……だけでなく周囲のユラス人もビビる。議長に言っているのか。


「私がセッティングした全部をダメにして!!」

「まだそんな話をしているのか。ファルソン・ファイ、安心しろ。心配するより関係は悪くない。」

サダルが冷たく一瞥するが突っ掛かかる。

「よくもないってこと??心配じゃなくて苛立ってるんです!」

「努力しているだろ。」

「はっ?!何それ。謝罪団体や政治家のセリフだし!!」

「政治家でもあるが。」

「開き直らないで下さい。タイプでもない人と一緒になったんなら、議長もそれ相応の努力をしてください!」


少し離れたところでまだ会議室にいたララズが目をパチクリさせている。この世代は役職上距離が近い者以外は二人の過去の不仲を知らない。マイラも苦笑いだ。オリガン組の半分もここにいた。


「……議長にもタイプってあるんですか?」

そんな中、ラムダが真面目に純粋な顔で質問してしまう。

「無くはないな。前にも言わなかったか?」

「誰でもいいという感じでしたが?」

「まあ、今更誰でもいいが。」


ファイが怒って言う。

「チコさんじゃないんでしょ?」

「結婚とタイプは自分には関係ないからな。」

分かってはいるが、タイプはチコでないという事だろう。メイジス以外のユラス人が引きつっている。不仲を知らない若手もいるのにと。


「上司や牧師を人前で下げるようなことを言うな……」

普段世の中の悪口ばかり言っていても、セオは自分の上司や仕えている人間を守る系である……が、呟きすぎて誰の耳にも届いていない。




ファイはそこで雰囲気を変える。

「はい、議長!ではワークしましょう。奥様の魅力やいい所を10個挙げて下さい!」

「??!!」

さらにみんなビビる。

よく家庭講習ワークやチームビルディングなどですることだが、あからさまにイヤそうな顔をするサダルにファイは遠慮しない。

「はいはいっ!ここで示してください。私、家庭で立派な夫婦愛に恵まれなかったので見本を見せて下さい。私たちの師匠ご夫婦じゃないですか!」

この会場で、惚れ気でも見せれば婚活おばさんへの逆婚活も減るであろう。そもそも既婚者であるが。



アーツは興味津々、近くにいる一部ユラス人は青くなっているが、サダルは考えてから一気に言ってみる。


「…真面目、謙虚、熱心、地道、堅実、真摯、篤実、律儀、実直、寛容。」


「ひえ!」

しかし、ファイ的にはあり得ない。

「あ~っ!全部、類似語や同義語じゃないですか!!

おもしろくない!!おもしろいワードが1個もない!没、全部没!!」

「真面目と謙虚と熱心は全然違うだろ。」

「だから何だってんですか?どこにもトキメキく要素がないじゃないですか!議会円満、世界平和な話じゃなくて、夫婦のこじんまりした思いを聞かせて下さい!!そんなの博愛の範疇です!私に対しても言いまくっていいし、思っいまくっていいことです!」

「ファイは謙虚で堅実なのか?」

「天邪鬼ですか?そんな話はしてません!」


他国の議長に天邪鬼と言ってのける女子と……

「はい!それにチコさんは全然謙虚じゃありません!けっこう欲張りです!」

と、横から言ってしまうシグマ。遂に陽キャも加わってくる。


「そうですよ。それにチコさんはけっこうテキトウです。自分の好きなもの優先タイプです!」

「男性差別がハンパないです。俺らを16人部屋に押し込めようとしていた上に、女子はLDK風呂付床暖完備の個室にトイレやシャワーもあるヴィラっすよ?」

超初期のことをまだ覚えている心の狭い大房男子。あれは許せない。


なお現在は女性の人数もかなり増えたので、試用期間の間は男性と似たような環境である。ただ、腰を痛めないように女性の方の部屋は冬は暖かくしている。過酷な環境で腰痛を抱えたり不妊気味になる場合も多いからだ。

試用期間を越えた場合は希望でヴィラに移れるが、南海の他の移民の女性たちと混合になる。ベガス構築や自治体維持に関わっていれば男女共に家賃も要らない。



「じゃあ仕切り直して、奥様のために異性として聞きたい言葉を下さい。女性としてときめくワードが聞きたいんです!」

「………。」

サダルはまたファイを一瞥するも、一応答える。

「あまり女性という感じのタイプではないし、本人もそんなもの聞く気もないだろ。」


「はい?議長、それは議長の見解ですよね?

夫婦でお互い差異はあるし、レベル上げしなきゃいけないんでしょ?自分は例外とか、どんだけ一般的な言い訳ですか?こういうワークは、そうであっても相手のいいところを見付けるんです!もう少し小説でも読んで、愛とトキメキの語録を蓄えて下さい!周囲をときめかして下さい!」

妄想チーム一同はファイは俺たちを巻き込んで死ぬ気なのかと思うが、今更席を立つのも目立ちそうで身動きができない。


「私が言いましょうか?トキメキ100ワードくらい言えますけど?復唱してください。」

「いや、いい。」

ファイのたわごとなど聞きたくない。


ローやシグマも今度はチコを庇う。

「サダル議長、大房のオバちゃんは女ですよ?」

「婚活オバさんもおばさんという以上は女性です!」

「大房のオバちゃんでも甘いこと言うとすぐにおまけくれますよ。」

商店街の話である。

「旦那以外に揺れる昼ドラ主人公に文句を言いつつも、大房のオバちゃんは甘い言葉をくれるステキな男性が好きなんです!油断禁物です!」

「口説き方がアルミ板を指で貫通でも、師匠は女性です!」

「不器用なんで、旦那さんがよく見ててあげて下さい!」

ナンパ男も庇ってくれる。女性として魅力的かどうかは分からなくとも女性である。


ユラス人にはモテるはずなのに、なぜかアーツには大房のオバちゃん認識されているし、何の説得をさせられているのか、オリガン組はよく分からない。




妄想チームは思う。

「………議長も俺らと同じ…」


初めに男性型戦闘可能ニューロスを担いで登場したことと、『傾国防止マニュアル』を魂に染み込ませ過ぎたせいか、チコには全く嗜好が向かないアーツ男子一同。ユラス上層と結婚しても政権のドス黒さに包まれ、あっという間に抹殺されそうで、恋愛対象の視界にも入らない。


そんなチコに求婚までしてしまうユラス人が理解できなかったのだが、ユラス人代表の議長も同じ思いなのかと、ちょっと親近感が出て安心もしてしまった。前も妄想チームに話しかけてくれたし、けっこう共通点がある?とも思ってしまう。もしかして議長も実は陰キャとか?俺らのこと好き?みたいな。


この後また上層部は会議を詰めるので、明日の午前までしかいないサダルをはじめとするユラス人はやっと移動していった。




ヘタレなので、軍服の人たちが退場するまで身動きが取れなかったメンバーたち。


ジェイはフーと、息を吐いてやっと落ち着くが、話した内容がいたたまれず少し蒼白である。今、周囲にいるみんなはどう思っているのか。何か聞かれても答えられない。

4、50分くらい話していたように感じたが、実際は15分もないほどであった。



そして、こんな緊張する思いさえしてジェイたちは待っていたのに、やっと現れたゼオナスの話は「お前らがナンパしていると聞いていたが、そういうことはするな」という内容であったので、みんなまた大ブーイングであった。




***




ベガス駐屯にいるチコはこの後、このまま北ユラスに陣を敷きギュグニーに向かう。


今回、ギュグニーの件の総監には別の陸軍大将が置かれ、北中央ユラスの主にカプルコルニー領とギュグ二ーに近いオミクロン軍がアジア軍と連携して動いていく。チコは指揮官ではないが、この仕事に答えられる相応の動きができるし、霊性の位置において重要な立場にいた。


この話はアーツには総事務局長ゼオナスとベガス事務局長サルガス、河漢のイオニア、現在の女性総リーダーのミューティアにしか伝えていない。理由まではまだ話していないが、今後アーツの仕事が増えることは伝えてあるし、もちろんこの件は解禁までは国家規模の機密だ。


ベガスにいるユラス軍人も全員が知るわけではない。


そして、実の父テニアも参考人として加わる。


彼は古きギュグニーを知っていたし、ギュグニーの一時を支配したバベッジの家族であった。その父も兄シーも死亡は確定しており、亡命した者と内部通告者から現在内政の話は確認している。ただ、状況が非常に混乱して情報も多岐にわたるため、現地確認になることもある。



「………」

テニアは東アジアに支給された交信機の使い方を確認しながら、部下と共に来たチコに頭を下げた。




●チコの女子びいき

『ZEROミッシングリンクⅠ』23 聞いてたのと違う

https://ncode.syosetu.com/n1641he/24

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