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ZEROミッシングリンクⅧ【8】ZERO MISSING LINK 8  作者: タイニ
第六十二章 あなたの中の命 
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5 閉鎖世界の投降



フラジーアは振り向きもしないサダルに問う。

「あれはいいのか?」

「……。」

チコの事だろう。

「あんま遠慮しなくていいと思うぞ。言いたいことは言っておけ。」

周りとあまりにも距離が近過ぎる。


「こちらのことはエリスに任せている。」

サダルは目を合わせず言葉を返した。

「………」

話を詰めたいが、人が多いのでフラジーアも話を変えた。


「…こいつはどいつだ?オリガン(うち)にほしいんだが。」

何か資料を見せている。

「…彼は、ジーザイの方を希望している。」

「ウチに来るのは?」

「あっちのと……まだいないな。まだ河漢から戻ってきていないのもいる。」

「女性がほしいな。」

「女性はVEGAの方から3人送ることになっているだろ。全員保健衛生師だ。地域構築の基礎もある。」

「あんま真面目なのばかり来ると多分へたるからな。ちょっとバカでもバラエティーがある方がいい。」

「あのピンク頭か?彼は根は真面目だからな。オリガンに行ったらやられるぞ。」

「でも、南の方と気が合うと思うが。」

南海青年や藤湾、アーツの名簿を見ているのだろう。みんな前を向いて目を逸らしているのに、ラムダだけ二人を見て笑顔で会釈していた。



「こいつは?一般武道を教えられる奴がほしい。霊性もいいな。」

「…六連(むつら)…。アーツ職員でなく会社員だ。持っていくとサラサに恨まれる。」


フラジーアが来てから机に顔を伏せていたのに、その苗字に反応してしまう幼馴染。

「は??何の権限があって、そんな話してんの?!!」

拗らせやすい地味女(じみじょ)と結婚したばかりな上に、便利なタラゼドを連れて行かれたら自分の生活が困る。


「…………」

叫んだファイを同時を見てしまう、サダルとフラジーア。


「…あ…。」

しまったと、ファイはまた伏せた。サダルだけでなく並んでいる面々の(つら)がヤバい。サダルにフラジーアに、ファイは名前まで知らないがメイジスなど顔だけ知る面々。この面子でアンタレス侵略をしてしまいそうだ。絶対に関わりたくない。ファイが威張っていられるのはベガス内だけであるし、本人もそれをよく知っている。


「ファルソン・ファイ。」

「…………」

サダルが呼ぶが顔を上げない。

「ファイが行くか?オリガンじゃなくても、いろいろあるぞ。」

今回一番人が多いのはオリガンとサウスリューシア、ゴンジャラス西だが、代表者数人しか来ていない僻地の任務先もあるのだ。

「……」

しかし無視である。


仕方ないのでサダルから話し始める。

「『…背が高過ぎない。顔はカッコいいよりかわいい系。相手の趣味&自由行動を許す。遠征&旅行させてくれる、とにかく寛容。ありのままの自分を受け入れてくれる。怒らない、怒鳴らない。清潔だが相手の不精には寛大。週に数回ご飯を作ってくれ、外食もする。』」

「?」

「?!」

サダルがいきなり何かを読み上げるので、妄想チームがぴくぴく反応している。


「容姿の期待に添えられるかは分からないが、紹介するぞ。」

「はあああ??」

ファイはガバっと顔を上げ、サダルを睨んだ。

「ユラス人ならいくらでも紹介できる。」

「お断りさせていただきます!」


「ファイ、いい話だよ。婚活おじさんにも婚活おばさんにも無視されているから、議長が動いてくださるんですね!」

ユラス議長が仲介をしてくれるなど、ユラス人でも一般ではなかなかない。

「ラムダ、何言ってんの??私は結婚願望はありません!!恋人も要りません!!妄想だけで十分です!!なんの復讐ですか!!!第一、響さんの好みよりずっとささやかでしょ?!」

響の好みは竜騎士の上にホテルで極上の贅沢させてくれる騎士団長である。白馬黒馬の王子、ペガサスを越えて今や竜に乗っている。


「響の好みまでは知らないが……わざわざ私に結婚相手を選んでほしいと他国からも人が来るのに贅沢だな。」

族長に選んでもらった結婚相手はユラス人にとって神の代身の言葉でもあった。

「ユラス人のような信仰心はございませんのでっ。」

「フラジーア、リストにファイをあげておくか?」

「……正直いらないが、連れて行ってもいいぞ。」

「相手も現地で紹介しよう。」

「いやーーーー!!!ぜえええったい行かない!!そもそも相手が嫌がります!」

「安心しろ。族長命令は絶対で受け取る人間もいる。しぶしぶでもな。ファイの好きなきれいなタイプを紹介してやる。遠征が好きなんだろ?」

「遠征違いです!それに美形よりアンタレスを愛してるの!!!他国で結婚するくらいなら、アンタレスで孤独死しても独身を貫きます!!だいたい男の言うきれいめって怪しんだけど?」

相手のために危険を共にする選択などない、たとえ目の前に理想の異性が現われようとロマンスより安全を優先する、自分がかわいいファイであった。



話しが聴こえない周囲は、なぜあんな子供が議長や中将と張り合っているのかと謎であった。


「もしかしてユラス兵と結婚なのか?ファイは?」

「議長の周りなら超玉の輿じゃね?」

ついでに政権争いと小競り合いの、死が隣り合わせの激むず人生が待っていそうだが。

「バーカ。議長は国の末端まで指示出せんだよ。ファイは辺境に送り込んでもらえばいい。近くにいたら議長も嫌だろう。」

「クルバト書記、ファイ情報の更新お願いします。」

「やめてー!書かないで!!書いたら現実化しそう!!」

「うるせーな…。」

隣にいるジェイに嫌がられていた。




そこに、河漢で遅れたアーツ組が入ってくる。


「イオニアー!こっち座って!」

シグマたちの近くにいるリーブラが手を振るが、手だけ振り返してイオニアは会場後方の空いた席に行ってしまった。

「えー?何?イオニアつれない!おいでよ~。」

「こんな機会に俺らとダベる必要ねーだろ。仕事のために人脈作ったり、状況聞きに行ってんだよ。」

リーツゥオが教えてくれるが、リーブラは切ない。

「なんでこんな世界チームが集合してる日まで俺らとつるまないといけないんだ。」



そして、その後にタラゼドとファクト、河漢組の元マファアのおっさんやイユーニたちも来た。

ファクトがチコに気が付いて手を振ると、チコも手を振った。もれなくリーブラも手を振り返してくれる。


そして(つづみ)やサルガス、ユラス兵のガイシャスたちも来て、カーフも入ってきた。

「おお!カーフ!!」

まだカーフに1つも白星を取れないファクトが、今度勝負しろの意も込めて手を振りまくるが無視である。

「カーフの奴、何かと俺を頼るくせにこんな時は無視とか!」

「お前、カーフに頼られる要素あんの?」

みな疑問しかない。




外で外賓をもてなしているエリスの代わりに、クレスが祈りの後に簡単に挨拶をして新規で来た大陸派遣組を紹介した。各代表者が立って礼をしている。


「あのフラジーアって人、チコさんのことチコ呼ばわりしてたんだよ?何様のつもりなんだろうね?」

「少なくともファイよりは内情に詳しい人だし多分等級も高いよ。オリガンはユラス軍編成のまま派遣されてるし、昔のチコさんの上官とかじゃね?」

「は?だったら何なの?ここはユラスじゃないし、平和構築団体としては同等ですっ。平和、同等、平等!!」

どこまでも強気なファイである。


ただし正確にはアーツができる前にベガスで研修を受けて世界に派遣されたチームたちなので、彼らから見ればアンタレス市民から成るアーツが新参で後輩ある。

「彼は軍人じゃないよ。ユラスやアジアは退役軍人が平和構築に関わったり、再就職するからね。退役して軍とVEGAと現地政府や軍の間に入ってるって。元中将らしいけど。」

「天下り?」

「天下りと言えるほど甘い現場じゃないらしい。」

下手をしたら、上部の言うことを聞いていればいい軍人よりも頭のいる仕事だ。

「………」

なぜそんな恐ろしい人たちの間にいるのだと、妄想チームは再度自分たちにツッコみたい。



ゼオナスが外部に対応しているため、サルガスが自分たちアーツを簡単に紹介し、ガイシャスに場を返した。




「既に報告は行っているだろう。今回の警備はアンタレス郊外にまで広げてある。


全員覚悟はしていると思うがこの期間公安、東アジア軍も共に全面禁酒令を出している。いつでも動ける準備をしておくように。」

このイベントと、その後一週間。裏方に入れる人間は全員禁酒である。各種オペレーター、運転、メカニック管理、人間の誘導、全てにおいてすぐに動けるように指示が出ている。



そう、今回のイベントは東アジアの要請により、かなり広範囲でのユラス軍加わる警戒態勢がとられていた。西アジア全体の都市までその範囲を広げ、国境付近も固めているのだ。


一部の関係者しか知らないが、大陸や国レベルではギュグニーの国境付近まで陣が敷かれている。


ユラス側も厳重警備が敷かれ、西アジアのテレスコピィもワズンが動員に責任を持っていた。カストルはギュグニー北に周り、ワズンと共に交替勤務していた一人、ジプートが護衛の中心に入っている。




現在最大の動向は実はアンタレスにおいても、ベガスのイベントではない。


連合国に投降してきたギュグニーがなんと三勢力にも上ったのだ。




正式には国としては2国だがその中の分離勢力と隠密に動いていた反政治勢力が、タイナオスにおいてカストルや連合国と交渉を重ね、親族の身の安全の保証と引き換えに自分達の持っているギュグニーでの勢力の引導を渡す。


既にギュグニーは自分たちだけで国を回せるエネルギーがなくなっていた。

サダルを捕虜にしたまではよかったが、サダルはタイナオスでもうまく立ち回っていた。サダルはどこまでも懐疑的タイプに見え、一族への虐殺を怨み、同族嫌悪し世界に対立的でタイナオス勢力に媚びるのかと思っていた。

また半不自由の捕虜として政治に関わらず、ただ黙々と医療面の躍進に尽力しているように見えた。その時の働きにより、長年疫病や熱病に苦しんでいたタイナオスの生活が大幅に改善する。そこで、サダルは先進地域に縁のある二世三世たちを取り込んでいた。その範囲は政治家や軍事部の子女たちにも及ぶ。


6年の間に、タイナオスそのものの思想や政治体制自体をひっくり返すほどの人的吸引力を持っていたのだ。彼らの大きな誤算はそこにもあったのだ。数千年も戦争をしてきたナオス族の頂点が、戦争を収める方向に黙々と舵取りをしているなど思いもしなかった。


そんな方法を知っているとも思わなかったのだ。

戦争と共に生きたユラスは、戦争でしか、戦争の歴史を動かせない民族だと。



けれど、既に世界は全てがネットにおいて繋がっている。

誰もが何色にでもなれる。



後は、そのどこに繋がるかだ。


破壊か、分裂か、文化的解決か。




サダルは知っていた。

天は全てを見ていると。


今、世の常に乗っている大衆には反発されるだろう。彼らが生まれてから甘んじている世界をひっくり返すのだから。


自分たちは、数百年、千年後の人間に評価される位置にいるのだ。




赤化していたタイナオスやティティナータの経路を断ち、ギュグニー南経由の軍事支援も北メンカル一本に絞る。つまり、そこを封じれば南は閉鎖される。ユラスは島も保有し、近隣国と合同で海兵隊と首相管轄の空軍が海側も現在囲っている。

北方国や西先進地域からの同族の支援も、内政が分裂し過ぎてギュグニー国内で取り合いになっていた。ギュグニーは、ニューロス技術の導入で得られるはずだった莫大な富も信望も逃したことによって未来の発展に完全に絶望していた。


後は、自暴自棄になった残留勢力の自己破滅だけだ。

それに付き合うか、そこから逃れるか。


もう数十年も限界を感じていた者たちが、遂に時代に終止符を打つ決意をしたのだ。



その道は既に連合国家によって準備されている。


どこに引導を引き渡すかが世界の分かれ目であったが、ギュグニー三政権は保身のためのいくつかの仲介を立てて、連合国家群を選んだ。





戦争小説だったら、そこをドラマにするでしょ!という部分を全部端折って、こんなに長々書いているのにギュグニー開放を小説一話の後半だけに収めて解決ですみません~。


全然この物語の主軸でない部分で、既にギュグニーは解決に向かっています。

こちらも書いたらもう一舞台、主要キャラも増えて別幕が必要になってしまう上に、情勢や政権の話をしてもおもしろく書けないと思うのでこのまま終わらせます。すみません!既存の登場人物個々人の方に焦点を向けていきます!


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