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ZEROミッシングリンクⅧ【8】ZERO MISSING LINK 8  作者: タイニ
第六十七章 光の交差 そして共鳴

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56 有事発令



その頃、緊急警報がアンタレス市全体に発動された。


デバイスからの警報だけでなく、公共のホログラムが現われ最初に『河漢艾葉』と示される。スラムであり以前テロもあったので、一般的に河漢への認識は元々立ち入り禁止区域だ。


河漢住民は新居住地に避難。ベガスは不要な外出禁止令。そしてアンタレス市全域にも、外出を控えるようにとの注意喚起が発動された。内容は『テロ活動の可能性あり。警戒が必要』で、実はアンタレス市だけでなく、アジア全域に発動されている。



少しお腹が空いたミザルは、運動も兼ねて近所の大きめのスーパーに来ていた。

その警報を知りカートを引きながら、帰ろうかなと考え計算を済ませて外に出た。


おっちらおっちらと大きなお腹を抱えてゆっくり歩く。

「ふー」

そして、店外に出て少ししたところで女性に声をかけられた。


「すみません。」

「…」

「すみません、妊婦の方。よろしいでしょうか。」

「……?」

ミザルは怪訝な顔でその人を見る。少し年配の女性だ。


「…何でしょうか。」

「あの、警報はしないで下さい。息子さんのことです。」

「っ?」

マンションの玄関から5分もない通り。警備も何も付けていなかったので警報しようとしていたことを見抜かれミザルは驚く。相手もミザルの行動を予測して、初めから息子の話を持ち出したのだ。


「…何?」

ミザルはこの人物がヒューマノイドだとすぐに見抜いた。温度サーチもすり抜けるが、霊視しなくとも表情や動きに人間にない滑らかすぎる違和感がある。ほんの微少に。

「息子さんを説得してほしいんです。」

「……」

突然人間らしからぬことも言い出す。


「そんなに警戒しないで下さい。命に関わることはしません。」

「だったら帰らせてちょうだい。お腹が重いの。」

「息子さんを預かっています。知ってます?今艾葉(がいよう)にいるんです。艾葉は臨戦状態。」

「?!」

一瞬動揺をするが顔には出さない。

「自分から河漢に来てくれるんですもの。

……本当にいい子なんですけど、シリウスに傾向するんです。」


自分から?


「……」

ミザルが一番懸念していたことだ。


「乗って下さい。」

吸われるように、サイドに用意された車両に乗っていくミザル。



お腹の子がグインと動く。いつもならそれが警告とも考えるのに、お兄ちゃんを追ってあげてと言っているように聞こえた。




***




その頃ファクトはまさにニューロスに対していた。


近くに潜んでいた民間人を見付け、ユラス軍人タフルクたちが対応している間に彼らと引き離され、なんとか自分で艾葉を切り抜けるとだけ伝える。

「くっ!」

途中までは逃げ切ったが、首を片腕で締められどこかに引きずられる。どうにか相手の腕を掴んで持ちこたえたが、一瞬酸欠になりそうでそれからが曖昧だ。




そして、響の元に最初に駆け付けたのは、先までファクトと共にいたリゲル。

「響さん、ガジェさん!」

「リゲル!」

倒れているガジェに近寄って様子を見る。もう一人横に東アジア軍人が倒れていた。アンドロイドマルビーが小型車を付け、二人をフラットにしてある後部に載せベルトで止める。


「狭いけど響さんも乗って。」

「……リゲル。私は行けない。」

「?」

「先サイコスに入った時、何人か蠢いている人たちが居た。艾葉だと思う。多分医者が必要だから。」

「は?響さんダメだよ。危なすぎる。」

「今ここにはほとんど軍医はいない。すごく近くに感じるから。」

都市中で近隣に病院も多いため、個々には応急以外に処置の出来る者はほとんどいない。

「でも、会えるかも分からないだろ?」

ナックスの伯父に会うだけであれだけ苦労したのだ。襲撃がある中、この入り組んだビルと地下の廃墟でどうやってこれ以上コンタクトを取るのだ。


少し言い合いになるが、リゲルが折れる。

「分かった。待って、許可を貰う。」

「ダメ!」

響はリゲルを止める。

「私は一応公安でもあるから役目を果たすだけです。もしものことがあっても、責任は問いませんし、私から報告します。」

部分的な雇われ公安だが。

「でも……」

もうすぐ新婚生活を始めるかもしれない人だ。こんな場所にはいさせられない。でも、これだけ近距離に医者がいるのは意味があることなのかもしれないとも思う。リゲルは答えを出せない。



そしてどういうことか、この人まで来てしまう。

「響ーーー!!」

「ムギ!なんで?危ないでしょ?!」


自分の体より大きいバイクをきれいに寄せて、メットを被ったまま降りて来る。

「危ないって、私もお手伝いさんだもん。」

「狙われてたらどうするんだ。」

普段あまり話さないリゲルも気が気でない。

「大丈夫、大丈夫。」

「何の根拠もないだろ!」

「向こうはアンドロイドが主体だから、無駄に攻撃はしてこないよ。ユラス軍の援護が来たから、多分余分な力も割けないだろうし。」

「簡易体もいるんだ!」

どこにこれだけのメカニックを集めていたのか分からないが、東アジア内である以上、数量に限界もあるだろう。正直、相手メカの性能もでこぼこだ。時々劇的に高性能のものもいるが、戦闘に慣れている者にならどうにか対応できるものが多い。


それとも、数十年かけて河漢に準備してきたのか。その上に、世界中に散らした簡易アンドロイド、モーゼス・ライト。




彼らの最終目的は、戦闘で国を占領することでも滅ぼすことではない。


世の中の大多数の賛同を得ることでもない。もう聖典を読み取る意思も読む気も無くした人類は敵ではない。モーゼスを受け入れてしまったのだから、そんな手間はいらない。


ギュグニーの河漢に潜んだ勢力の目的は、自由な世界かもしれない。



全てが許される自由。




でも、アンドロイドたちは舞う。


誰にも、博士たちにさえ知られないように………。



彼女たちの目的は、

聖典の最初の実を先に摘んでしまうことだ。






「それでムギ、何しに来たの?」

「『前村工機』を見に来たの。」

「は?」

もうリゲル、訳が分からない。なぜムギがこんな時に。そしてなぜ『前村工機』を知っているのだ。まあ、ムギだからだろうが。


「……リゲル。『前村工機』分かるよね。」

ムギが大人の顔になる。

「……」

堪えられないリゲルにムギは続ける。

「これは東アジアと話し合っていることだから。

今、地上に上がれないメンバーや住民が複数人いる。幾つか大きな階段を爆破などで閉じられてて、とくに地下3階層より下にいる人間は上がって来れない。」


地下3階と言っても建物ごとに階層の基準が違いはっきりしたものではないが、方眼や地図上でおおよその位置関係を見る時、東アジアではフォーマルハウトの都庁を基準として地下の建物の深さやおおよその階層を定めている。アンタレスはそれを考慮し、都庁の地下吹き抜け階を、地下3階と定めていた。そして地上より一層分が厚い。

まだ上がっていなければ、3階層より下にいるだろう。テミンたちは3階層の商店街の下層、祖母居住地から、さらに下に落ちている。


「だから、通行可能な地下道から、艾葉旧商店街に誘導して一気に出る計画。」

「……」


艾葉商店街は『前村工機』が見付かった一帯で、地下2階からの巨大な吹き抜けもある。取り敢えずそこまで出て、上空に向かえばいい。前村工機やワラビー事件、ジョーイなど何かといわくつきの地域周辺だが、テミンたちが渡ってきたような無数の地下道を抜ける手艾葉から出るには、怪我人や老人が多過ぎた。

危険もあるがそれ故にこの辺りなら軍が駐在していたので、軍用機の離着陸もしやすい。


響は荒らされた周りの瓦礫からから医療バックを探り背負って動き出す。

「ムギ、そこまで私を乗せて。」



「リゲル、お兄さん。ガジェをよろしく。」

お兄さんと呼ばれたマルビーは、ムギのバイクに乗り込む女性二人に敬礼をした。




***




「こんにちは。ラス・ラティックス君」

「……」


二重に拉致されたラスは、どこかも分からない室内でもう一台のおそらく……女性アンドロイドと対峙させられていた。


「??」

ラスはどういうことだと思う。

ここにもモーゼスがいる。先のユラス軍人を相手にしていたモーゼスとは違うのか。


ただ、髪は薄い緋色を帯びており、それが変態なのかモーゼスの別個体なのか、全く違う機種なのかは分からない。そもそもアンドロイドは、データが本体なのか、機体が本体なのかも考えてみれば曖昧だ。ただの画面だけのPCでも1台の車でも、モーゼスが入っていればモーゼスなのか。


そして顔を上げた。

「……もしかして、試作か同系種?」

シリウス以上を作り上げようとし、試行錯誤を繰り返した本機体の試作機か。それとも完成品の未到達品か。正規の模造品か。新機種自体かもしれない。


量産型以外、アンドロイドはボディーに関しては職人作業と同じだ。

技師一人の技量と感覚が全ての違いを生む。


巧妙につくられた緋色はゆっくりと話す。

「ここにはね、そんなゴミを集めて有効に利用した全てが詰まってる。ギュグニーでは手に入らない部品も集まるからね。アンタレスのジャンク品はギュグニーの工場製よりものがいいし。

ギュグニーの解体品を持って来てここで理想的に繋ぐの。」

「……」

信じられないことを言っている。そんなことを自分に話してもいいのか。しかもどういうことだ。いくらある程度オートで機械自体を作れる時代だとしても、有能な人間がいなければそこらの整備屋やジャンク屋と同じである。河漢に集まる先進国家アンタレスのジャンク品と、たとえ完成品でなくとも高度技術を用意を集めたシリウスに似せた派生品。そんなものを釣り合わせるのは、高度技師が必要だ。



しかしここまで来たら、もう冷静になって聞いてしまう。何のために連れてこられたのか。

「なんで俺にそんな事…。なぜ自分をここに?」




またすごい間違いを見付けのたので報告しておきます。

ある意味すごく微々たることで、ある意味すごくでかいことなのですが、これまで「射撃場」を「射的場」と書いていました(滅)

祭でしょうか。


なぜか、射的場と言う言葉は、的に当てる全ての総称で射撃にも使えると勘違いしておりました。ボーガンや他の投擲の練習場も入っているのでその流れでそう書いたのか…。一般的には遊戯をさすそうです。詳しい方が冷めそうですみません…。見付けた3か所だけ直しました…(´;ω;`)


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