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ZEROミッシングリンクⅧ【8】ZERO MISSING LINK 8  作者: タイニ
第六十四章 今開く、世界に掛けられた鍵

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24 また来た



『シグマ、事務局に戻って来い。』

南海から連絡を受けて、5時に河漢から事務局に戻ってきたシグマたちは唖然とする。現場には集まれるアーツメンバーがみんな来ていた。



「は?俺らが?なんで?」

ゼオナスから話を聞いて飛び上がる勢いである。


東アジアの最東方、連合直轄都市フォーマルハウト。いわゆる首都からの派遣員たちの面倒を第1弾シグマ、ベイド、ウヌク、タチアナを中心に、第2弾シャウラ、ミューティア、ライブラなどを補佐にして、明日いくつかのグループに分かれて案内しろというのだ。その事前事後会議もアーツ初期メンバーが総括で入る。



「フォーマルハウト?」

「え?何大から来ます?」

「大学は関係ない。社会人もいいるし、高卒の有志たちもいる。」

有志という時点でやめてほしい。

「あっちの企業やNPOやNGOなどで、社会貢献の一定の研修は済んでいるし、実践もしている。」


え?そんな人たち自分ら教えなくてもよくない?下手したら俺らよりプロじゃない?行くなら藤湾大行ってくれない?と思う皆さん。

遠隔で他地域から聞いているメンバーも驚いている。なぜこの最終日前にそんな話をするのだ。


ミューティアが名簿をめくりながら、リストを確認していく。

「東方大、孫親大、ハウトハル大…」

大学の先生はみんな教授だと思っていたレベルの底辺大房でも知っている有名大が並ぶ。東方大はアンタレスでいう東アジア大だ。

「ひえっ」

事務局に来ていたソア、ソラたちもビビる。東方、孫親大に至っては、ここにはいないがリーブラでも名前ぐらい知っている大学だ。



「企業は…ミッカイ、シェルローズメカニックFH…ボニッシュ東方、ディザット東方、坂木種子、奏多(かなた)製鉄…」

「ボニッシュにディザット??!」

自動車超大手だ。

「ちょと待った!車とかニューロスとかここに拠点がある会社までなぜ?」

「向こうに本社がある会社は来てみたいと…」

「なぜ?」

SR社など勝手にしてほしい。SR社ニューロス関連の本社はここだ。しかもインフラシステムの基盤はベガスもSR社にお願いしている。ある意味自分たちの本拠地ではないか。


「支社でいいし。」

こっちが支社なら、支社で来て社内共有すればいいのにと思う。

「坂木種子って名の如く種子会社ですよね…。なぜ?」

調べてみると、世界大手だ。

時長(ときなが)に後で行くそうです。」

「なるほど。」

時長はアーツの地方支部があり、農業関係だ。



「それに社会貢献部はどこの会社にもあるからな。」

大きければ大きいほど社会貢献の規模も大きい。自分たちの社会貢献以外に、一般団体支援をしている場合が多い。


だが、これまで移民部門をここまで形にした部署はほとんどなかった。奉仕、ボランティア、事業支援という形で援助はしても、各一個人への『教育』という形で受益者が底上げされていくシステムは確立されていなかった。正確には、理想があってもここまで形にできなかったのだ。とくに文化衝突の多い、移民関係は。


「……」

分かっている。分かってはいるが、なぜそんな人たちの相手をするのだ。いつもいやだと言っているのになぜここに連れてくる。


アーツもそろそろ学べばいいのに学ばない。来る者は来るのだ。



第1弾は初期、カーフたちに会って目玉が飛び出て、ライブラたちが来た時ですら心臓に穴が開きそうで………

………石籠(いづら)で頭のいい大卒もアホだったと少し持ち直し………


「先輩方、なんで俺を見て安心した顔してんですか?」

石籠が少し不満気に見る。

「いや何も。」


東方大やハルトハル大にタイマンを張れるのはせめてそのレベルだ。大房ではない。



この時代、東アジア内に地域対立はあまりない。それでもなぜか競争心が湧き上がる皆さん…と言いたいが、アンタレス内では威張っていても、見知らぬフォーマルハウトの強豪と対したいわけではない。よく知っているアンタレス市内だからこそ、善きも悪きも知っているからこそ、ベガス内でもあーだこーだ言いながらやっていけるのである。

優秀な第4弾トリマン辺りをぶつけてはだめか。アンタレストップ医大の現役学生だ。アンタレストップとは、世界トップでもある。



「すみません。俺、四支誠(よんしせい)があるし、そういうの藤湾に任せてくれませんか?せめて筆頭リーダーは第2弾のライブラやミューティアたちにしてください。」

挙手したウヌクが当てられもしないのに勝手に話しだすが、サラサがサラッと答える。

「向こうから初期アーツベガスを見たいと言ってきまして。どのみち数日滞在する人たちはあとで藤湾にも行きます。」

「は?」


もう、「は?」しかない。

異例の最速で連合国認定団体になったが、細かく指定されるほど有名ではないはずだ。所詮大房。移民たちが有名大レベルの大学創立を果たした藤湾の話題と、市民がNGOを立ち上げたでは難易度も世の中の注目度も全然違う。アンタレス以外で話題になっているのかも怪しい。首都は同じ東アジアでも2千キロ以上離れているのだ。西アジアの蛍惑の方がまだ近い。


受付仕事を早々切り上げて、リギルと事務局に戻ってきたファクトに注目が集まった。

「え?なんすか?」

「……ファクトだろ?」

「え?僕は慎ましやかな大学生ですよ?」

ファクトに有名大と張り合いたい気概はない。第4弾で超大物たちを引いてしまったので、大学界隈で有名人が揃っているとウワサが広まったのか。藤湾側でも東アジア大工学部を放棄しようとした者までいるのだ。

ただ、ここでのファクトのベガスでの噂はどこまでも『勉強しないファクト君』である。せっかく最近は勉強も頑張っているのに。


「心星博士の息子だろ?組織が小規模なうちに会って、友達になっておこうって魂胆じゃね?」

「俺と友達になっても、なんも得しないよ?息子ですら時々しか両親に会えないのに。」

「っ!」

そんな心星くんと食事どころか、引きこもり部屋でダベる仲になってしまって、横でリギルは引いてしまう。リアルでは誰にも注目されたくない。


「名前が一人歩きしている…。」

実体を知られたら困る。

「まあ、心星くんと仲良くなって、実際ポラリス博士と夕食食ってる奴もいるしな。」



「……お前ら、純粋に仕事が評価されているからと思えないのか?」

ゼオナスとしては、規模が小さい内なら創設メンバーと対で学べると思っているのではないかと考える。これから何百人も来たら、もう草の根の時代は見る事ができないであろう。けれど、遠方から来る彼らは優秀だからこそ、初期の動機や歩みに関心があるのだ。それが自身に根を張る重要なことだと知っているから。

ただ、探ればちょっとボロも出てくる。がっかりしないでほしい。


「普通に考えて、格闘術習えるからじゃない?軍から。」

「そうだよなー。」

折角ゼオナスが自己評価を高めているのに、格闘術に全てを落とし込める脳筋アーツ第1弾。



ウヌクとしては予定を変えたくない。

「そもそも外部との企画は、今回のイベント後に藤湾大と話し合いながら進めていく物でしたよね?」

そうなのだ。企画はしているのだ。ただしこの全てが終わった後に選抜組で。


ウヌクはできるだけ今の期間は四支誠にいたい。連絡が付かないシェダルが四支誠に来たら……という思いもあった。

「そもそもなぜこの期間に?こないだからチコさんたちもいないじゃないですか。」

アーツとしても、何かが動いている時期だと知っている。警備がアンタレス中に分散しているのだ。いや、もっと広い範囲で。



「それがね……」

サラサがため息がちに話しだした。

「元々来年以降、組織ごとに順次来る予定だったでしょ。昨日はサダル氏の礼拝があってたくさん人が来て、その時すでにフォーマルハウトや他の都市からも人がたくさん入っていて……。」

大手は有給も思いのままである。今ホテルはアンタレスだけでなく、近隣県も埋まっている。

「それで今度組織で来る人たちが整備され尽くす前に、個人で見たいからって……。」


個人で来たんかい!こっちが整備してから来年来てくれ!!と思う一同。


「それでさらにね……」

またため息を付く。

「…あまりに個人で来る人が多過ぎて、企業からも連絡が来て……ならもう、窓口作って多少まとめてしまおうって話になって…。」

次回団体で事務処理してから来てくれ!!とみな思う。企業が連絡をくれるほど、複数人が有休をとったのか。誰が会社にリークしたのか。みな抜け駆けしたかったのか。


アンタレス市内の組織だけでも大変なのに、何の侵略だ。しかも、今まで大して交流もないのに。……いや、一部は以前のフォーラムで会っているかもしれない。



「チコさんは何て言ってるんですか?連絡してください。」

「一応連絡はしたのですが、思いっきり『すれば?』と言っていました。そもそもチコさんの許可はいりません。」

「なんて身勝手な!」

「いないからってテキトウな!」

「責任の所在はどこにあるんですか!」

「むしろ、組織で動いた方が何かの時保険がおりますので。」

ベガスの規定に登録していれば、イベント期間内に起こった事故など誰でも保険が効くが、研修などの形にした方が保険の範囲が広い。

「ただし、河漢の見学はなしにしましょう。エリス総長にも確認はしています。」

大勢が河漢に行くと警備の動きも変わる。


サラサも急な話なので少し表情は硬い。受け入れた以上責任は発生するからだ。一応、各事務局長であるゼオナスやサルガス、イオニアなどと話はしてある。


「もともと会社などで、きちんとした組織教育を受けているから変なこともしないだろうって。」

「それは確定情報ですか?」

トップ大学やトップ高校卒のアーツメンバーですら揉めたのだ。キファとか…石籠(いづら)とかキファとか……

「俺の名前、2回出さないでくれます?」

誰のつぶやきだったのか、キファがちょと怒る。


「情報を出したら希望者が合計……流動するとは思うけど300人くらい……かな。一旦今日の夜、全体でオリエンテーションと…、2、3人に現場の話をしてもらうのはどう?」

「なんで300人も……」

300人も来てしまったからまとめるのである。営業とかも混ざっていそうだ。


「事前学習はしてきてもらうことを条件にしているから。」

アンタレスや近隣都市、既に申請している人々には、イベント参加において事前にベガスでの規則や概要を学んでくることを通達している。学習歴確認をし、規約に住民番号付きの同意がないと承認有りの建物や部屋など入れないのだ。この事務局周辺もそうである。



「まあ、皆さん。こう考えましょう…。」

サラサはダンっと机を叩いた。


「……皆さん、無駄働きはイヤですよね?」

「いやに決まっています!!」

「仕事中にさらに仕事ってどうにかしてるっしょ?」

「東アジアトップの奴らが、現場に許可も取らず!!非常識だろ?」

少人数だったら問題がなかったのに、なぜみんな同時に同じことを考えるのだ。話を合わせた訳でもあるまい。


「……取り込みましょう!!」

サラサは力強く握った拳を締める。


「取り込む?」




●カーフたちに会って目玉が飛び出てた時

『ZEROミッシングリンクⅠ』46 高校生より落ち着きがない

https://ncode.syosetu.com/n2119hx/117/


ウヌクは第3弾ですが、なぜか第1弾扱いをされています。

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