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ZEROミッシングリンクⅧ【8】ZERO MISSING LINK 8  作者: タイニ
第六十三章 あなたの夜明け
12/88

11 世界は告げる。次の世界を。


いつもいつも同じ話で申し訳ないです。


どの話も30回は見直していると思うのですが、誤字脱字だけでなく、やはり改めて見ると、書いた本人ですら「(´・ω・`)??」となる文章がたくさんあります。書き進めるために、過去話を読んでいるとどんどんおかしな部分が見付かり、前に勧めない…。


アップ後より、3日くらい経った後に読んだ方がまだいい状態になっていますが、趣味の小説なのでお許しください(´;ω;`)


改めて直し、最後にまたドーンと直すかもしれないので、読みにくい部分、申し訳ありません。修正を最後までせず、放置している部分もあります。こんな小説にも、時々でも訪問して下さる方に感謝です!






霊が騒めく夜。


天が味方をする、曇り空だ。

衛星は地上の星を眺めることができない。



軍用飛行機スペイシアや地上経由組が動く中、別機で移動するテニアはチコに挨拶をされた。

チコの後ろにはガイシャスが控えている。ガイシャスは現地までチコに同行し、ユラスでアセンブラに託す予定だ。

テニアに同行する東アジア軍も礼をすると、急いで間に入ってきた者たちがいた。


東アジア軍側でニューロスの動向を管理している佐藤長官だった。

「長官!」

「チコ夫人、出発前にテニア氏によろしいでしょうか。」

「…あ、はい。」

するとそこに、アンドロイド・カペラに連れられた女性が(せわ)しいユラス軍の間を抜けテニアの前に来た。


チコは思わず顔をしかめる。

「………」

半分顔を隠しているのと照明がうるさく光る夜のため、分かりにくいがシリウスだった。

「チコ、こんばんは。」

「……。」


そして佐藤長官もチコも越え、シリウスはテニアの前に立った。

「…?アンドロイド?」

「初めまして。テニア……、いえ。

『ボーディス・ジアライト・バベッジ』。」

シリウスは膝をついて敬礼をした。


「?!」

思わずテニアは周りを見回して、

「しー!しなくていい!しなくて!!黙っておいて!」

と言ってしまう。

「ただのギュグニー参考人だから!」


「…何しに来たんだ。もう出発だ。陣を荒らす様な事をするな。」

チコがシリウスに苛立つ。

「簡潔にしますので。」

「簡潔で収まらないほど目立っているがな。」

長身のカペラとシリウス。二人はアジアの軍服を着て髪もまとめているが、両軍にはない雰囲気が漂っていた。それに分かる人間には、カペラがアンドロイドだと分かる。



シリウスはストールで隠していた顔を少しだけ出した。

「……!」

見たことのある顔立ちとその笑顔に、少しだけテニアの胸が高鳴る。


「ずっとお会いしたいと思っていました。」

「え?なんで?」

テニアとしては、壊すぐらいしかヒューマノイドニューロスに関わることもなかったので困る。しかもこんな時に。


「ここにいると知って、もう今しかないと…。」

「…そう?また来るけど。鳩に挨拶もしてないし。」

「鳩?ファクトのこと?仲がいいんですか?」

シリウスが嬉しそうに笑う。


チコは、なんで出発前にこんな茶番を?と声もない。


「私によく訪ねてきた人がいるんです。」

「………」

「いつからかしら……。ドレスを着た亡霊で……長い髪の女性。」

「?!」

テニアは驚く。

ドレスの亡霊?『トレミー』か?


「私のラボまで。」

「?!」

シリウスは憂いた笑みを向けるが、テニアだけでなくチコと長官も固まった。


ラボ内は定期的に聖別の水を撒き祈りを捧げるし、多重の結界が張ってある。亡霊や雑霊は入ってこられないはずだ。それにトレミーは、研究関係者の中に辿ることのできる血縁関係はないであろう。ギュグニー国境以外での目撃報告もない。


「彼女は時々指輪をはめていました。はずれそうなほど大きな指輪……。」

「………」

指輪?大きな……



「ギュグニーに入る人たちに伝えて下さい。」

シリウスは底の無いような瞳をテニアに向ける。


「彼女が『そこは今はもう、私の国だから……、赦してください』と。

ずっと前から私に…。」

「私の国?」

どういう意味なのか。



ギュグニーのことではあろう。アンドロイドが言うので、長官も意図を理解しようと身を引き締める。

私の国?支配するという意味か、自国という意味か。


「私ではなく……亡霊の言葉です。」

「………。」


シリウスがテニアに親愛を求めるように手を差し出した。アンドロイドとはいえ、東アジアが連れてきた訪問客だ。テニアがそっと手を出す。


すると合わさった手に見えない衝撃を感じ、たくさんのフラッシュバックが流れる。

「?!」




冷たい孤独な地下。

無造作にまき散らされたものだけれど、有機的な土や砂があっただけでもいいと思える崩れた部屋。


男の気分で銃を向けられ、壁に身を寄せる女子供たち。


何人も天に送った診療所のベッド。




祈っても祈っても届かない祈り。




力のない女が、守ってもらわないければ明日も生きられないかもしれない子供たちが、

それでもギリギリのバトンで死地を駆け抜けていく。


どうやったらあの艱難を潜り抜けられたのか。




でも、


必死につないできたのだ。




同じ故郷から、同じ避難民の中から、同じ施設から、同じ親の元から、

右に入った子もいれば、左に行ってしまった子もいる。


北に走り切った子もいれば、南に紛れた子もいる。

西にうずくまってしまった子も、東に駆け抜けた子も………



初めはみんな、必死で誰かがつながなければ、今日も生きていけない小さな子供だったのだ。




「テニアさん、()()にラボに影響できる力があったわけではありません。でも、ただ……ただ被験体の子供たちを眺めていました。」

テニアはラボのことまではよく分からないが、おそらくニューロスの対象者たちのことであろう。

「彼女自身はこのままでいいと思っていますが、今のままだと亡霊のままです。

私は霊性を持つ人間ではないので、生霊なのか亡霊なのかは分かりませんが………。」

「…………」

テニアは、何もかもが曖昧なシリウスにどう答えていいのか分からない。


膨大な情報の中で、情報処理で生きているシリウスの、ひどく曖昧な言葉。



「私はアジア圏を出られません。……気を付けて行ってきてくださいね……。」

「ああ、ありがとう。」


シリウスは最後まで笑顔のまま小さく礼をすると、テニアの前から下がってチコと長官に顔を向けた。

「もういいのか?」

「はい、チコの身の安全も願っています。」

それを聴いて、チコは仕方なくふうっとため息をつく。

「分かった。アンタレスは任せる。」

チコがそう答えてくれただけで、シリウスは嬉しそうに笑った。



「チコ様、出発よろしいでしょうか。」

「ああ。」

ユラス軍が話しかけてきたのでこの場は終わる。



「じゃっ!」

軍人ではないせいか、ここでも軽いテニア。手で敬礼をしてオミクロン陣営に行くスペイシアに乗り込む。


佐藤長官も出発するまで見送って、チコの方を向いた。

「はあ、解析ではドレスの亡霊なんて一度も出なかったはずなんだがな………。国境の話だけではないのか?」

「SR社がごまかしてるとか?」

「チコ夫人は感じたことは?」

「……さあ、SR社でそういう違和感を感じたことはなかったんですが……」

二人は、スペイシアが見えなくなるまで見目で見送るシリウスに目を向けた。


「シリウス……」

佐藤長官が声を掛ける。

「亡霊とは?今まで報告がなかったが?ギュグニー南西国境の話ではないのか?『トレミー』の。」



「……さあ、データに残らない話ですので、私も明確なことは言えません。」


曇りの空を見ながら、月夜でも眺めるようにシリウスは言った。




***




「なあ、これ絶対、ベガス以外のいろいろ動いてるよな?」

寮の屋上で、久々にたむろしているアーツメンバーが空を眺める。


「そうだな。」

家族のいる家に帰る前に、しばし残って一緒にいたベイドも空を見上げて言った。


「アンタレスとかいう規模じゃないだろ?アンタレスでこんなに軍が動くとか、この中で戦争でもする気か?絶対にそれ以外だろ。」

筋トレしかしていなかったと思える試用期間を経たアーツ。なぜか彼らはやたら変な感知能力を高め、今ここで普通でないことが起こっていると判断した。

派手ではないが、まだイベント最中なのに数台軍用機がベガスを出発している。一部情報ではアンタレス郊外や付近以外でも様々な軍が動き出しているらしい。

「ベガス、カモフラージュに使われてんじゃね?」


「……まあ、カモフラージュってのもあるかもしれないけど、ベガス(ここ)がサインなんだよ。」

タウが空を見上げる。

「サイン?」

「そう、ベガス自体がサイン。始まりの。」

タウの答えに皆首をかしげる。タウは泊まりで河漢に駐在するので、この後は移動だ。



と、そこに河漢に戻る前のイオニアもやって来て、自分が飲んでいた炭酸水のペットボトルを置いた。

「おっ、お疲れ。」

イオニアは答えずにそのまま地べたに座り空を向いた。


そして、空を向いたまま言う。


「ベガスが完成しただろ?もうこれからは自動で進んで行く。

そして、世の中もそれを知った。だから次に行けるんだ。」



「次に?」



世の中が変わっていく兆しを世間に知らせ、


セイガ大陸最後の砦、ギュグニー開放後の、受け皿の典型ができたという事だ。




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