第95話 北方騒乱編 ~えっ? 火刑ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「ぎょぇぇぇ~っ!」「うぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃぁ~っ!」
「何か吐いたか? ウォルターよ」
「ええ、ベイナ様との答え合わせですので、造作も御座いません」
「ふむ」
マウンテンリバー領主と武器商人の拷問を傍観する幼女、ハイガンベイナ4歳です。
一応拷問して供述を得ているのは、単純に文書化するためだ。 まあ、細々とした事は、スキャンだけじゃあ判らないからね。
「来週には火刑にしたいのだが間に合いそうか?」
「ええ、知りたい事はほぼ得られていますから、問題ないかと」
「ならば引き続き頼んだぞ」
「お任せ下さいませ、ベイナ様」
おっさん達の悲鳴なんて誰得なんで、拷問部屋をさっさと後にする。 てか、存在したんだ。 拷問部屋。
処刑イベントはこの世界でも娯楽として存在しているらしく、領民のストレス発散の機会でもあるので、石投げイベントでも追加しようかと考えているのだ。
今回は明確な敵役が存在するので、口上なんかも作りやすい。
分かり易い敵を作って敵意を誘導するのは常套手段だが、それだけに効果も覿面だからね。
使い古された手段であろうとも、政治を安定させるには有効な手段だし、処刑イベントともなれば、攻撃衝動も発散させ易い。
圧倒的な武力によって抑圧する方法も無くはないが、その場合は反乱などが地下に潜ってしまうからね。
織田信長みたいに場当たり的な対応を行っていると、反乱の数も増えてしまうし、気がついたら本能寺なんて、冗談でも遠慮したい。
そりゃ一般的な反乱で、私やハトリが危機に陥るとは思えないケド、何より面倒くさいからね。 こう言ったチャンスは活かさないと。
それにこの手のパターンにはテンプレが存在するので、誘導方法がハッキリしているのもあるからね。
要は、「×××なのは、△△△のせいだ」って事にすれば良いだけだし。
例えば「食料品が高いのは盗賊の影響で入手が困難になったからだ」と言い、そして「盗賊を操っていたのはコイツ等だ」って事にすれば簡単に誘導できる。
その時、明確な「敵」として領主と武器商人を民衆に晒す。 投石に適した石ころなんかをサービスで配っておいたりして。
サクラに命じておいて罵詈雑言と共に投石でもやらせれば、タガが外れた民衆が、それに続くって算段だ。
そん事で民衆が投石するかと思うかも知れないが、過去に何度も人類が繰り返してきた歴史でもあり、実証済みの手堅い方法とも言える。
民衆は別に聖者でも何でもないからね。 ネットで簡単に炎上する様に、現実でも空気に流される者も多い。
罪悪感なんてモノは、空気にはなかなか逆らえないモノだよ。 イジメがあっても空気で傍観するのと大差は無いからね。
それともワザと煽ってやろうか? イキナリ「大衆は豚だ」とか言って。
チョビヒゲが見える? 目医者に行きなよ。
決め台詞はこうかな。 「だが石を投げる者は戦士であり、正しき勇者だ」とか言ったりして。
扇動者になるつもりはないケド、領主には必要なスキルだと思うんだよね。 この際に取得しておくかな。
とは言え、前領主が溜めた鬱憤のガス抜きなんて釈然としないモノはある。
こんな事をしたって、所詮は一時的な効果だし、社会構造を修正するとかしないと根本的な解決には至らないだろうし。
いくら社会構造が単純な世界とは言え、農奴は存在するし食料も十分とは言えないからね。
大体ヨーロッパの食料事情が安定したのって、ジャガイモが普及してからだったハズだし、小麦の安定的な生産だって、窒素肥料が出てきてからだろう?
いや、ノーフォーク農法なんてのもあったか。 でもアレって羊の毛織物生産とかやらなきゃダメじゃなかったか? いや、牛でも良いのか?
ノーフォーク農法ってのは、利益を多くするには向いてはいるが、土地の所有を禁止しないと不具合も多いし、最低でも農業と畜産を行っている連中を全員農奴に落とす必要がある気がする。
それに囲い込みって下手をすりゃあ、封建制度が危うくなるんだっけか。 ダメじゃん。
確かに伯爵なんて地位には未練は無いケド、だからと言って、社会構造を改革する程の労力は使いたくないだよな。
産業構造の変革なんて、10年単位で考えないと上手くいかない気がするし、やっぱり肥料か何かでも考えるかな。 骨粉肥料と腐葉土を合わせるとか。 あ、焼畑もアリかな。
食料の生産性を向上させるのは追々やるとしても、将来の事だし現状では意味が無いんだケド。
てな事で、処刑は慣行するよ。 有益な事には違いないんだし。 人情? 人権? 知らんがな。
犯罪者を拘留するだけでも費用が掛かるんだし、金をこんな事に使うなんてものねぇ。 自腹だし。
あと磔台の発注とか間に合うのだろうか? って、どこにするんだっけ? 助けてー、ウォルえもん!
単純に処刑するだけなのに、演説の原稿作成とか当日の人員配置とか、やる事が多すぎない? 小説とかだと「処刑する」の宣言だけで終わりなのに。
まあアレだね。 現実的には手間や費用が無視出来ないのは、フィクションあるある的な。
てな事で、先ずは計画書の作成から手をつけるかな。
「ウォルター、処刑の手続きやその他の手配も行いたい」
「具体的には何を?」
「計画書の作成から行いたい。 当日必要になる人員や式典の手配、費用の算出なども必要だな」
「補佐官を手配しておきます」
「磔台などの発注はどうすれば良い?」
「街の大工に依頼を出しておきましょう」
「火刑にするための薪も忘れるなよ」
「他には何が必要ですかな?」
「演説台、投石用の石、人垣を分ける縄などか」
「細かく検討した方が良さそうですな。 見落としがあるかも知れませんし」
「こういった事の経験者はいないのか?」
「前領主様は、市政には無関心な方でしたので」
「そうか…」
だろうなぁ。 色々資料を見た限りじゃぁ、雑だった印象だし。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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