第9話 魔女演舞~えっ? 模擬戦ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「へっ、へっ、へっ。 ベイナぁ、模擬戦しようぜぇ?」
「模擬ちぇんですか?」
「ああ、くんずほぐれつぐちゃぐちゃねちょちょしようぜぇ~」
「ひっ」
魔女様の顔が酷い。 どれくらい酷いかと言うと、地上波ではモザイク案件になるくらい酷い。
Gに遭遇した時よりも悍ましく、服の下を直接這いずり回られた忌避感に比肩する位だ。
「舐めちゃうぞぉ~、hshs」
「ひぇぇぇぇぇ~っ!」
爬虫類よりも長い舌を器用に振り回し、空気中の臭いを…って、舌の先が割れてない?
人間を完全に辞めてるよね。
「複合とう甲術ちき展開、機動!」
「ほう、これが話しにあった複合装甲術式か。 だがこれからどうするつもりだ? 何ならこの魔法障壁を力づくで解除して、直接身体に訊いてやろうか?」
確かに、この状況ではジリ貧だ。
相手は魔法のスペシャリスト、この余裕が単なるハッタリとも思えない。
やるか。
こちらのアドバンテージは、ニッコリ動画やつべ動画で得た軍事知識と理論物理学、そしてアカシック先生だ。
正直言って、アカシック先生から聞いた空間魔法や死霊魔法なんて使われた日には、どうやって逃げるかってレベルだし。
まあ、近代兵器で呪いが防げるワケないもんね。
だったら、相手が慣れる前に一気に畳み掛けるしかない。 まあ、うっかり殺してしまったたらゴメンなさいって事で。
「ちゃーモリック術ちき展開、起動!」
眼前いっぱいに広がる白い閃光。 参考にしたのはサーモリック爆弾。
周囲一帯に広がる、水素と酸素の混合気に引火した結果だ。
一般的な魔術爆発と違い、魔力障壁では防げない爆発。 まあ、超高温で発生する水蒸気爆発の一種だ。
空気中の水分などを電気分解で分離し、放電魔法で一気に点火する。
それは一般的な爆発とは違い、距離の2乗に反比例しない粉じん爆発に近い。
引火点は存在するが爆心地は存在せず、しかも魔力防壁では防げない純粋な物理現象と一時的に起こる酸素不足。
激しく魔力を消耗したが、科学技術の知識に乏しい魔女様には厳しい攻撃だろう。
「今のは少し、焦ったな。 まさか呼吸が出来なくなるとは思わなかったぞ」
「どう…ちて?」
「単純な転移魔法と…生命維持装置だったか? アレを参考にした」
転移魔法って、ほぼ伝説の魔法だろ? アレを使ったのかよ。
しかも戦車のくだりで話した複合装甲への理解とか、対生物化学兵器用の生命維持装置を魔術で再現とか、チート過ぎんだろ?
四菱重工の社員さんに謝れ!
いや、コレが『魔の森の魔女』か。
単なる変態かと思って侮っていたわ。
だがどうする? 純粋な魔術勝負では戦いにすらならない。
身体強化も使えるが、所詮は3才児。 話しにならない。
あとは科学知識をベースにした魔術だけだ。
まだ未完成だけど…、アレで行くか。 どうせ生半可な魔術では、かすり傷にすらならないだろうし。
「電磁かちょく術ちき展開、砲弾とう填、起動!」
砲弾はタングステンが用意出来なかった関係上鋼だが、正真正銘のレールガンだ。
錬金術を併用しても、材料の関係上、一発しか作れなかったが、紛う事なき徹甲弾。
少なくともドラゴンの鱗程度なら、楽々と貫通する威力がある。
さあ、死にさらせぇぇぇぇぇぇーっ!!
「積層傾斜装甲術式、起動」
「へっ?」
楽々と弾かれる徹甲弾。
それが放物線を描きながら、彼方へと去っていく。
はっ、はははっ。 あかん。 手も足も出ーへん。
何だろね、この無力感。
ああ。 魔力切れか。
ついでに気力も無くなった。
実はさ、アカシックレコードのアクセス権と、竜の因子を貰った時、異世界無双を考えたんだよね。
毎日、魔力を増やす訓練をしたり、近代兵器を魔術で再現する事に躍起になったり。
しかも手応えまで感じていたんだ。
魔女と言えど、所詮は未開の住人だって。
ミリオタ女子としての誇りもあった。
院生から研究員にもなって、ちょっと一般的な男子をバカにしてた部分もある。
女友達とは話が合わず、ネット掲示板の住人にもなった。
でもね。
本職ってすげーわ。 いやマジで。
ちょっとマッドな雰囲気、いや、同族の雰囲気を感じて、少し話し過ぎた部分もあると自覚している。
それをすぐさま再現するとか、異世界チート無双とか絶対無理だろ。
ははっ、笑えてくる。
あ~、眠い。
逃げる事すら、絶対無理だな。
だが最後に、満足気な魔女様の顔を見れたから良しとしよう。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
https://kakuyomu.jp/works/16816927862939210704
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