第87話 北方騒乱編 ~えっ? 弁当箱ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「弁当箱を作るぞー」
「おーなのー」
自分の部屋に移動して弁当箱の作成に取り掛かる。
えっ、鍛冶? ムリムリ。 道具が無いし、注文したら10万円は下らないと思うし。
だから錬金術を利用して、鉄板をコネコネ。 うん、何とか形だけはドカ弁っぽい物にって重っ。 余裕で1キロはあるんじゃないかな。
色も全体的に黒っぽいし、鉄鍋を無理矢理に弁当箱にした様な物体が2つ。
いやね、アルミとかで作れたら最高だったのだろうケド、ボーキサイトなんて入手出来ねーから。
見た目はアレだね。 なんだか重要な手紙とかが入っていそうな玉手箱。 コレジャナイ感がパネーわ。
出来れば竹とかを編み込んでバスケットっぽい物を作りたかったんだけど、そもそも竹林すら存在しないからね。 ナーロッパじゃねーのかよっ!
洋画で出てくるランチボックスって材料は何なんだろう? 蔦っぽい何かなのは判るけど、正確な物はねぇ。
それに日本では竹が優秀な抗菌素材である事もあって、竹製以外は見つからないんだよね。 元の素材なんて判らねーよ。
まあ良いか。 鉄製ならカビる事も無いだろうし、ワンチャン鉄分の補給にもなるかもだし。
下手すりゃ錆びまくりになりそうだけどね。
ステンレス? アルミよりも敷居の高い合金なんて、選べねーよ。
中身の無いズッシリとした弁当箱を持参して、再度、調理場へ突撃。 欠食児童のお出ましだぜ。
「おっちゃん、食いもんギブミープリース!」「そうなのー、ギブミープリーズなのー」
「お嬢様方、何をしてやがるんで?」
「おいしい物をくれないと、イタズラしちゃうぞー」「イタズラしちゃうのー」
「んじゃぁ、コレを」
ころん。
大きい弁当箱に、放り込まれた、青林檎がそれぞれ1つずつ。
うん、違うんだ、そうじゃない。 確かにココの青林檎は甘味も申し分ないし、オヤツには最適かも知れないが、そうじゃないんだ。
確かに300円以内に収まるかも知れないが、今食べたいワケじゃないんだ。 いや食べるけどさ。 しゃりしゃり。
「もっとなのー」
いやいや、違うからね。 ハトリさん。
「ちっ、仕方ねーな。 ほらよ」
ころん。ころん。
わーい、おかわりだぁ。 しゃりしゃり。
ふむ、林檎って意外とお腹に溜まるんだな。 知らなかったよ。
「それ以外は、夕食まで待って下せぇ」
「はーい」「判ったのー」
満足して私達は自分の部屋に戻る。
ん? 何か違くないか?
確かに私達は仕込みの邪魔だろうし、弁当の手配は、ウォルターに頼むべきだったのかも知れない。
しかし私は領主なんだぞ。 横暴で暴力的なワガママ領主なんだぞ。
林檎なんかで迎撃されている場合じゃないんだよっ!
とは言え、もう一度突撃したとしても、軽く迎撃される可能性もあるし、もう少し作戦を練るべきだろう。
行き倒れなんてどうだ。 それで調理室の前に転がって。 いや無しだな。 無視された時に、トラウマになりそうだ。
持病の癪とかは? いや、不自然だな。 なら死に別れた両親が好きだった幻の料理なんてのはどうだろう?
演技力に自信があるで無し、少し厳しいか。
ふむ、単純にひもじいアピールで何とかならないだろうか? ハトリと2人なら、破壊力倍増だしな。 それでいこう。
「ハトリよ、我々には食料を確保する使命がある」
「あるのー」
「そこで作戦なのだが、ハトリがお姉さん役、私は妹役でいこうと思う」
「ママが妹なのー?」
「そうだ、そして私達は1週間はロクな食べ物を口にしていない設定だ」
「さっき林檎食べたよー。 ママは物忘れが激しいのー」
「いや、忘れたワケではないのだが、更なる食料を入手するための設定なのだ」
「さっきのおじさんも、物忘れが激しいのー?」
「いや、相手を騙す演義と言うか何と言うか」
「騙すのはダメなのー」
「うん、騙すのはダメだね」
くっ、論破されてしまった。 いつのまにこんなにも論理的な思考が出来るようになったんだか。
いや、諦めるな、私。 諦めたら、ソコで試合終了じゃないか。
「ハトリは私が何か言ったら、「よしよし」って頭をナデナデしてくれたら、それで良いから。 もう一度挑戦しに行こう!」
「もー、ママはしょうがないなぁ。 よしよし」
「いや、そうじゃなくてね」
「判ってるのー、よしよし」
「だからね、ハトリ」
「心配無いよー、よしよし」
何故だ。 何処で間違ったと言うのだっ!
「よしよし」
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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