第75話 幼女神誕生 ~えっ? 試し斬りですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「とぉーなのー」
「すげぇ」
「わぉ♡」
とても可愛らしい掛け声なのだが、その剣筋はちっとも可愛くなかった。
きっと滝でも何でも切り裂く事が出来るのだろう。
「で、何とかなりそう?」
「んー、もう少しで何か掴める気がするのー」
「もう少しやってみる? それとも実戦で試す?」
「実戦で試すのー」
「了解」
ハトリの剣術は、きっと正当なモノでは無いのだろう。 勿論それは決して弱いと言うワケではない。
有り余る身体能力と、数多の異能が組み合わさった剛剣だ。
それだけに慣れるのに時間が掛かるのだろう。 実戦での調整に不安が無いワケではないのだが、ハトリが遅れをとるとは思えないからね。
とは言え問題が無いワケでもない。
前回は簡単に盗賊を見つけられていたのだが、今回私は自力で移動しないといけないし、何よりアイリだっているのだ。
希望としては飛んで移動したいのだが、はてさてアイリをどうしたものか。 走らせるか?
「アイリ、お前ってば体力には自身があるんだよな?」
「まあ、それなりにはあるぜ」
「ハトリ、アイリの胴体に糸を巻きつけてくれ。 飛んで引っ張ろうと思う」
「判ったのー」
「待て待て待て! 何を言っているんだ?」
「何も心配する事は無いと思うぞ。 一生懸命、全力で走れば、引き摺られる事も無いのだからな」
「できたのー」
「んじゃぁ、空のお散歩に出発進行! 因みにアイリは走って追いかけるようにな」
「だから待てって!」
「GO」
「うぎゃぁぁぁぁぁ~っ!」
うん、やれば出来るじゃないか。 ちゃんと糸で引っ張っている関係上、迷う事もないだろうし、完璧だな。
あっ、転んだ。 どんくさい奴だな。
なんだか凄い引き摺られかたをしている気がしないでもないが、新入りを甘えさせるワケにはいかないからね。
えっ、鬼畜? いやだなぁ、愛だよ、愛。
だってほら、私達ってばアイリを除けば、皆してスーパー野菜人じゃん。
一般ピーポーのままじゃぁ、これから苦労しそうだからね。 今の内から体力は身に付けてもらわないと。
それに走るのが得意な山犬なんだから、案外なんとかなるんじゃないかとも思っているんだ。
別に人型のハトリと、2人っきりで空のお散歩がしたかったとかじゃないんだよ。 まあ、犬にはリードを付けてお散歩させるなんて、地球でも常識だったワケだし。
だからと言って、目的を忘れたりする事も無いからね。 私は魔力探査で周囲を索敵しているし、ハトリだって匂いで探っているのだろうし。
「見つかった?」
「んー、アイリの血の臭いが強すぎて、よく判らないのー」
「ん? 血の臭い?」
ハトリにそう言われてしまっては仕方がない。 アイリの方に目を向けると、ソコには手足の関節が曲がってはいけない方向を向いて引き摺られている肉塊があった。
ふむ、流石に犬を捨てるのは良心が痛むし、休憩でもさせるか。
2人で着地して、状態を確かめる。 うん、ピクピクしてるな。
「ヒール」
「うわぁぁぁぁぁ~ん! 死ぬかと思ったぁ~っ!」
「ファイト♪」
「ファイトじゃねぇよっ! 殺す気かっ!」
「こう見えても、ペットは最後まで面倒を見るタイプです」
「その最後に遭遇しそうになったんだよっ!」
「ペット呼ばわりは問題ないんだ」
「死にそうになっていたからなっ! そこまで気が回んねぇよっ!」
元気じゃん。 何処が死にそうなんだか。 まあ、温かい目でみるとしよう。
「蔑む様な目でみるんじゃねぇよっ!」
「違うぞ。 死にそうなフリまでして気を引こうとしている所が愛らしくて」
「フリじゃねぇよっ!」
「焼き玉ねぎ食べる?」
「なんで玉ねぎなんだよ。 中毒になったらどうするんだよっ!」
「大丈夫だ。 私もハトリもヒールを使える」
「その前に食わせるなよっ!」
「好き嫌いしてると大きくなれないぞ」
「そういう問題じゃぁねぇよっ!」
ふむ、中々キレのあるツッコミだな。 将来が楽しみだぞ。
「じゃあ、元気になったみたいだし、そろそろ出発するか」
「待ってくれよっ! 何とか抱えて飛んでもらえないか?」
「仕方がないな。 ハトリ、そっちを持ってもらえないか?」
「良いよー、ここかなー?」
「なぁ、ハトリさんよぉ。 何処を掴もうとしていらっしゃるんで?」
「んー、首の後ろー?」
「いやいやいや、猫じゃないんで、千切れちゃうんですよ」
「じゃぁココー」
「いやいやいや、足なんて持たれたら逆さ吊りになっちまうよ。 てかテメエも足を掴もうとすんじゃねぇよっ!」
ほんと、注文の多い奴だな。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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