第69話 幼女神誕生 ~えっ? 簿記ですか?~
カクヨムからの転載です。よろしくお願いいたします。
「ふわぁぁぁぁ~っ、眠い」
「おや、寝不足ですかな?」
「えっと、まあそんなカンジです」
何だよ、その問い質す様な目は、怖いんだよウォルター。
「一応、お耳に入れておきたい事があります」
「何かな?」
「昨夜、聖教会が何者かに襲撃されました。 警戒をレベルを引き上げる必要があるかと」
「その事なら問題は無い。 状況が悪化する事は無いと思う」
「《《そう言う事ですか》》。 では、こちらの書類を全て本日中にお願い致します」
「多くないか?」
「夜遊びを控えれば問題ないかと」
おい、お前、判ってて言っているだろ! てか証拠は残していないハズなんだが?
「何か言いたい事でもあるんじゃないか?」
「仕事が増えますので、火遊びはお控え下さい」
「判ったよ。 何の事だかサッパリだがな」
「全くです。 せめて虫の知らせくらいは欲しいものです。 タダでさえ通常業務すら滞っていると言うのに」
そんな事を言うウォルターの手からは、光る糸の様なモノがひらひらと。
ひぃぃぃぃ~っ! オコなの? 疑惑だけでオコなの? バラバラにされちゃうの?
「いやー、何だか無性に仕事をしたい気分だな。 よし、その書類を寄越せ、ウォルター」
「コチラをどうぞ。 無くなりましたら次をお持ち致しますので、思う存分、お励み下さい」
「おっ、おう」
しっかし、容赦の無い事だな。 何度も言う様だが、私が幼女であることを忘れているのではあるまいな。
ここは思考加速や並列思考のお出ましかな? えっ、能力の無駄遣い? 良いんだよ、最近妙に調子が良いし。
万能感って程ではないんだけど、人間の限界を突破しちゃってる感じがあるんだよね。 きっと転移の距離も伸びているだろうし、座標計算や計測も一瞬で済むんじゃないかと思うくらい。
転移を使った戦闘なら、近接戦闘も行えるレベルだと思うから、今なら黒竜相手でも圧倒できるんじゃないかな。 苦戦はしないと思う。
まあ兎にも角にも、今は仕事だ。 おっしゃぁ! フルバースト!
「おおぅ、見事な集中力ですな。 いつもこうだと助かるのですが」
「こことそこ、計算が間違っている。 それとこの書類では、昨年の税収予想よりも2割も少ない。 原因を調査させろ」
「再計算後に持参します。 そちらは担当者に調査させます。 指示書をお願い出来ますか?」
「今すぐ書く、暫く待っていろ。 それとこの治水計画、このままだと作業員が不足するぞ。 計画を練り直せ」
「素晴らしい! 素晴らしいですぞ、お嬢様!」
「世辞はよせ。 それよりもまた計算間違いだ。 文官は何をしている? 能力不足か?」
「文官は、前領主の縁故採用ですので、能力的に問題があるのかも知れませんな」
「そんな奴はクビにしろ。 後釜は身分を問わず、採用しろ。 商人の次男や三男でも構わん」
「はい、ではそのように」
「それと使途不明金と雑費が多すぎる。 着服している奴がいるかも知れん。 余力があれば調査しろ」
「一度、棚卸が必要ですな」
ふう、このペースなら、直ぐにでも片付きそうだな。 前世でこの能力が欲しかったよ。
しかしアレだな。 税金が途中で溶けすぎている。 あっ、そっか。 簿記のレベルが低いのか。
貸借対照表すら存在しないのだから、仕方がないのかも知れないが、やるか? 知識チート。
科学畑の私でも、貸借対照表と損益計算書くらいなら概念程度だけど、何とかなる気がするぞ。
商人なら貸し借りや売上、買掛、売掛、資本に資産くらいなら理解出来るだろうし説明だけで何とかなると思う。
でも物納はどうしよう? 一旦市場価格で算出するにしても、農作物は腐るモノだし、インフレやデフレはどうすれば良いんだ?
修繕が前提の世界では、減価償却も厳しいか? うん、無理の無い範囲で考えよう。
質が悪いとはいえ植物紙があって助かったな。 羊皮紙しかなかったら、即効で詰んでいたよ。 もしそうなら、パピルスの親戚でも探さないといけないところだったし。
竹は無いけど、何とかソロバンとか作れないかな? でもヨーローッパの木工職人って、そんなに技術力が高かったけ?
日本なら寄木細工くらいは作っていそうだけど、この世界では細工物よりも家具ってイメージなんだよなぁ。
無理か。 現代に残っている火縄銃ってヨーロッパ制よりも日本製の方が上質って言われているくらいだしな。
あまり期待するのは止めておこう。
ままならないモノだな。 知識チートなんて。 技術や知識の蓄積が無い状態では、無理ゲーなのかな。
「ウォルターは簿記を知っているか?」
「初めて聞く言葉ですな。 内容を伺っても?」
「簡単な事さ、金は途中で消えたりしないってだけの話だ」
「なる程」
「要はその金の流れを記載するのが簿記だ。 途中での中抜きを判別出来る様に帳簿を記載するのが肝だな」
「今でも受け取り証は書いておりますが?」
「送り側と受取側で書く様にするんだよ。 付き合わせれば、途中での着服が不可能になる」
「現実的ではありませんな。 それ程の数の文官を用意するのは不可能ですよ」
「文官以外は帳簿を書かないのか?」
「商人以外は、職人の親方が少し書く程度ですな」
「無理か」
「無理ですな」
おうふ、ドンブリ勘定を舐めていたよ。 自分だけで金が回るワケではないから、こっちだけ帳簿をつけても裏金とか作り放題だよな。
ああ、そうか。 だから徴税官が適当な値を決めて徴収するのか。 徴税官とかの着服天国じゃねえの?
ううぅ、世間が私に冷たい。 そういや昔のヨーロッパでは徴税をアウトソーシングしていて、徴税官がボロ儲けしていたんだっけか? 最終的にはやり過ぎて暴動になったとか。
じゃあ自前の徴税官を用意するか? そうなれば税収は上がるんだろうけど、そうなると徴税官の横暴とかに対する怒りが直接向かってくるからすごく面倒くさい。
そもそも徴税権を誰でも買えるワケではないから、コロコロ徴税官を代える事も出来ないワケだし。
詰んでいないか? この状況。
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カクヨム版(先行)
魔女転生 ~えっ? 敵は殺しますけど?~
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